Stage 2.He that falls today may rise tomorrow
「・・・ねぇ、水沼・・・。」
「はい?」
「なんで、おばさんも一緒にいるわけ?」
次の日。
テレビスタジオにて。
メイクも衣装もびしっと決めたトワの横にセンスのない洋服を着た伍代の姿があった。
「なんでって、それは密着取材だからに決まってるでしょ。特別許可はもらってます。」
伍代は大和がくれた資料と一緒に封入されていたパスを見せた。
それを見てトワの機嫌は悪くなる一方である。
「あぁあぁあぁあぁもぅ、さいっあく!!こんなのと歩いてたらトワの価値が下がっちゃうじゃん!!」
「あのね、だから調子に乗ってものを言いすぎ。トップアイドルだかなんだか知らないけど私は特別扱いなんかしないからね、一切。」
「最低っ!最低っ!最低っ!!三流のくせにっ!!!」
「あっ!ちょっと、フツー年上に向かってそんな繊細な部分言う?」
二人の朝っぱらからの大声のやり取りを見て水沼は大きくため息をついた。トワも伍代もこの先どうなるのかと思っているのだろうが、本当にそう思っているのはこっちだと、頭を抱える。
そんな折、言い合いに疲れた伍代が急に持っていたカメラを構えだした。
「あー、もうなんでもいいから、とりあえず一枚撮らせて!!」
するとそれを聞いたトワが大声を出して静止した。
「すとぉぉぉぉっぷ!!!」
「な、何よ!!」
「カメラはダメ!!撮らないでっ!!」
「はぁ!?どういうこと!?」
いきなりのトワの意味不明な発言に五代はうろたえる。
「勝手に撮影なんて許さないからね。トワはトワが認めた人しか撮影許さないんだから!こんな失礼なおばさんに撮ってほしくないもん!!」
そう言ってトワは顔を背ける。伍代はというとトワの答えに益々うろたえた。
「貴女・・・馬鹿なの!?何言ってるのよ!」
「ほら、また失礼なこと言う!!」
「いや、どう考えても私の方が正しいでしょ!仕事でしょ?貴女、仕事ちゃんとしなさいよ。」
「いーーーーや!ぜぇぇぇっったい嫌!!トワが嫌って言ったら嫌なの!!」
「な・・・ちょ、幼稚園児?・・・水沼さんもなんとか言ってくださいよ。」
そう言って伍代は水沼に助けを求めたが水沼は首を横に振った。
「・・・今はなんとも・・・。」
「ちょっとまって・・・私のカメラ界復帰への道は・・・。」
呆然とする伍代を横に言いたいことだけ言ってすっきりしたトワはのんきな顔で、
「スタジオ入りしてくるね~。後よろしく。」
と言ってさっさと行ってしまった。
取り残された伍代を哀れんだのか、水沼はそっと耳打ちした。
「トワは見ての通り気まぐれですから・・・今はああ言っていますが、きっかけさえあれば撮ってくれるかと。」
「きっかけってなによ、きっかけって!!」
「・・・トワの喜びそうなこと。ですかね。」
「それって何?」
「それは知りません。」
「どうすればいいのよ、私は。」
「それも知りません。では私も仕事があるので・・・また後で。」
そう言うと水沼も伍代を残して行ってしまった。
一人残された伍代は途方にくれた。
「行っちゃたし・・・本当にどうするのよ・・・。」
「はぁぁぁぁ。」
自動販売機などが並ぶスタジオの一角に伍代はコーヒー片手にうなだれていた。
あれからトワの喜びそうなことを考えたが何一つ思い浮かばない。
「こーなったら、奥の手だ。神様仏様大和様!!」
そう言って伍代は携帯を出して大和の番号を鳴らした。
何コールか鳴って留守電に切り替わりかけた時やっと大和は電話に出た。
「何?今日休みだから寝てたのに。」
電話越しの大和は寝起きの声で言う。昨日あんな無茶苦茶のこと押し付けたくせに無責任な人だと思いながらも伍代は助けを求める。
「大和先輩、助けてくださいよ。どうやったら、アイドルって落とせます?」
「はぁ・・・?なんなの急に?てか・・・はっ!まさか!伍代、本当にトワちゃんを犯す気じゃ・・・!」
「だから、なんで私をみんな強姦魔にしたがるわけ!?」
「じゃあ何によ。」
「実は・・・。」
伍代は今までのことを大和に話した。大和はそれを聞いて電話越しにため息をついた。
「そうきたか~。」
「大和先輩・・・あの我が儘アイドルどうにかしてくださいよ。」
「いや、私に言われても・・・。しかし珍しいよね、トワちゃんがそんなにつっかかるなんて、伍代なんかしたの?」
「してないですよ!私が聞きたいですよ!!・・・いや、まぁ、そりゃ・・・人並みに文句は言いましたけど。」
「・・・まぁいいや。とにかくなんとかしなさいよ。」
「だからそれを聞いてるんですよ!私はどうすればいいんですか。」
「とりあえず、ご機嫌取れ!私の記憶ではトワちゃんは年上が好きなはず、まぁそこはクリアだ。あとは・・・好きなもの言っていくからメモって!」
そう大和に言われ伍代は慌ててメモを取った。
ひとしきりトワのプロフィールを聞いて電話を切ったあと、伍代はまたもや頭を抱える。
「あー、何やってんのよ私は・・・。グラビアアイドルから離れたと思ったら今度はアイドルの追っかけ・・・?」
しかし、これもなにも夢のため。一筋のカメラ生命の希望の光をつかむために伍代は気を取り直した。
「もーーーー!!どうにでもなれ!!私はやる!やるしかないんだ!!」
自分に喝を入れ直し伍代は腕時計を見る。トワが収録を終えるまではまだ時間がある。
「よし!行くか!!」
そんな伍代が電車を乗り継ぎ向かった先はというと、ドーナツ屋であった。
「げっ、なにこれ、平日なのになんでこんなに並んでるのよ・・・。」
表通りから少しそれた場所にある小さなドーナツ屋であったがそこには折り返しができるほどの行列ができていた。
「ねこねこドーナツ。結構人気店なんだけどさー。これトワちゃんの大好物。」
大和の言葉を思い出す。
トワの大好物だというこのドーナツ屋。雑誌やテレビでも紹介される人気店で、またトワも愛用ということが人気に拍車をかけ連日行列を作っていた。一時間待ちなんてざらである。伍代はげんなりしながらもその行列に自らも並ぶ。
「なんで、35歳女が一人、映え系のドーナツなのよ。」
伍代の言う通り、列にいるのはカップルや若い女性ばかり。完全にアウェイである。しかしここで諦めるわけにはいかないのだ。伍代は恥ずかしさをこらえ並んだ。
結局その後、伍代は50分近く恥ずかしさに耐え並んでようやくお目当てのドーナツが買えた。
「わー、ねこねこドーナツ!どーしたの?これ?だれかの差し入れ?」
トワの楽屋。収録を終えたトワがドーナツを目の前にしてはしゃぐ。
それを見た伍代は、今だと前に出てきた。
「私、私、私でーす。」
しかしトワは伍代とわかると瞬時に嫌な顔をした。
「げ、おばさん!?なんのつもり?」
「いや、収録で疲れたトワに食べて元気出して欲しくって~。」
「・・・なんか怪しい。・・・でも、食べる。」
「どーぞどーぞ。」
訝しい顔をしながらも、トワはドーナツに手を伸ばす。
「あのー、この瞬間写真に収めてもいいですか~?」
何気なく五代が聞くと、
「それはダメ。」
と、トワに即答された。
この~くーそーがーきーっ!!
「ん?何?」
「いえ、何も。」
落ち着け、伍代、まだチャンスはある。
伍代はトワに背を向けてそう自分に言い聞かせた。
しかし、その後大和の言われた言葉を思い出して、好きなものをあげてみたり、喜びそうな言葉を言ってみたりしては見たが、トワは一向になびくこともなく、二人はマンションに帰ってきた。
そしてトワはさっさと自分の部屋に入ってしまい伍代は手のだしようもなくなってしまった。
夜からまた収録があるから出かけるというがそれまでに五代は何とかしたかった。
最後の手段で伍代は早めの夕飯を作ってみる。
メニューはトワの好きなハンバーグである。
「ハンバーグってマジでガキかあいつは・・・。」
文句を言いながらトワの部屋をノックする。
「トワー、ご飯―。」
「えー、いらなーい。夜から歌うから~。」
「そう言わずに、ちょっとだけ。食べないと倒れるよー。トワの好きなハンバーグだよー。」
「・・・もー、ちょっとだけね。」
・・・単純馬鹿。
そう思いながら部屋から出てきたトワに五代は笑顔で迎える。
「わー、ハンバーグ!」
伍代がじっと見ていることに気がついたトワは慌ててむすっとする。
「ちょ、ちょっとだけだからね!」
「はいはい。で、撮らしてくんない?」
「何を?」
「何をって写真に決まってるでしょ。」
「ダーメ!」
最後の手段も完全にスルーされて伍代はうなだれる。
「なにをすれば撮らしてくれるのよ。」
「あー、今日なんか変だと思ったら、そのためにトワのご機嫌とってたの?まさか。」
「そうよ!それの他に何かあるの。」
「むっかー!なにそれ、そんなに撮りたいわけ!?」
トワにそう言われ伍代は心に溜まっていたものが一気に溢れ出す。
「当たり前!!」
伍代はトワに駆け寄ってトワの両肩を掴んだ。
「わわっ!!」
「お願い!貴女にとっては軽い仕事かもしれないけれど、私にとっては最後といってもいいチャンスなのよこれは!!真剣なの!!私、写真が好きなのよ。やめたくない。貴女ともこの先うまくやっていきたい!だから、ねぇ!!撮らせてよ!!」
伍代は真剣な目でますっぐトワを見つめる。トワはそんな目で見られて柄にもなく、顔を赤らめた。
「そ・・・そ・・・そんなの、知らないっ!!おばさんの気持ちなんて知らないしっ!!」
トワは自分の照れ顔を隠すように伍代の手を大きく振り払った。そして前を見ずに走り出した。
「あ、馬鹿!危ない!!」
トワの走り出した目の前には彼女が以前住んでいたところから取り寄せた大量の荷物のダンボール箱があり、上の方は軽いらしくトワがぶつかるとバランスを崩して落ちてきた。
「ぎゃ!!」
トワは尻餅を付き転ぶ。
下敷きになる。
そう思って目をつぶったが、一向にダンボールにぶつかった感じがしない。
恐る恐るトワが目を開けてみると、伍代がトワを押し倒す形で覆って庇ってくれていた。
「痛たた。大丈夫?トワ。」
「あ・・・う、うん・・・。」
「アイドルなんだから気をつけてよ・・・。」
「あ・・・。」
と、その時だった。
一番上にかろうじてバランスを保って乗っていたダンボール箱がぐらついて伍代の頭めがけて落ちてきた。
「うわっ!!」
その衝撃で伍代の手が滑ってしまう。
「え!?ん・・・んんっ!!」
滑った結果、伍代の唇はトワの唇と重なり合わせてしまった。
トワは目を見開く。
伍代は慌てて顔を引き離した。
「ご、ごめん!!わ、わわざとじゃないのよ!!その、事故よ!!事故!!」
しかしトワは聞く耳を持たない。
「馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!返してぇぇ!!トワの貞操と純情を返してぇぇぇっ!!」
トワはポカポカ五代を殴りながら大声でわめき散らす。
こちらに非がある分余計手のつけようがない。どうしようと困っていると、後ろからトワが台本でぽかりと頭を叩かれた。
「五月蝿いですよ。貞操も純情もたいしてないくせに大声出さない。」
水沼である。どたばたしているうちに時間になったのでトワを迎えに来たようだ。
「あ、ひどい!水沼!!」
「ホントのことでしょう。私がどれだけのスキャンダルもみ消したと思ってるんです。」
「スキャンダルって大げさだなー、ちょっと遊んだだけ。」
二人のやりとりを唖然と見ている伍代を水沼は睨みつけた。
「貴女も貴女です。うちのアイドルに勝手に手を出さないでください。」
「な、手なんか出してない!あれは・・・!!」
そう言いかけたが水沼はそれを無視してトワに早く出かけるよう促した。
「さぁ、トワそんなことはどうでもいいから、早く行きますよ。遅れてしまいます。」
「あ、じゃ私も行く!」
そう言って伍代も出かけようとした時、トワに静止された。
「ダメ!来ないで!!同じ車に乗んないで!来るなら電車で、一人で来てよね!!」
「な、なんだよ、それ!?」
「同じ空気吸いたくなーい!行こ、水沼。」
そう言うとトワは水沼を引き連れてさっさと出て行ってしまった。
「あ、ちょっと待ってよ!!トワ?トワーーー!?」
そうして伍代はまた一人取り残されてしまった。
「・・・良かったのですか?おいてきて。」
移動中の車内にて水沼にトワは聞かれた。
トワは自分のネイルを見ながらぶすっとして答える。
「いいの。ちょっとは反省するべき。トワの唇を・・・奪ったんだからっ!!それくらい!!」
ホント、最低!最低!!最低!!!真剣に言うからちょっとどきっとしたなんて!!あんなのにちょっとでもそんな感情抱くなんて損した!!
そんなことを思いながらトワはますますふくれて両手の爪を立てた。
運転しながらそれを横目でちらりと見た水沼が言う。
「珍しいですね。トワがそんなにつっかかるなんて。いつもならそういう類は無視するのに。もしかして好きなんですか?」
「なっ!!!ぎゃっ!!」
いきなりのことを言われ思わず立ち上がってトワは頭を車の天井に思いっきりぶつけてしまった。
「ほら、そういう行動も。普段からお馬鹿なのに行動が余計お馬鹿になってます。」
「馬鹿って何!?大体、好きって何!?どうしてそうなるわけ!?」
「いえ、今までにないタイプでしたから、伍代さん。好きになったのかなと。」
「違う!!断じて違います!!見てたらっ!イライラするだけ!!それだけっ!!」
「イライラねぇ・・・。」
そういうのがトワの場合良くない傾向なんだけど。
そう思いながらも水沼は何も言わないことにした。
「あー、もぅ、ホント最悪・・・。」
「あ、そうだ、トワ。」
「え?今度は何?」
「今日の共演者に因幡ひとみがいますよ。」
「え!?ウソっ!?」
因幡ひとみとは一世代前のトップアイドルで今も根強いファンが多くいる女性アイドルである。今は歌の世界は一線を退き女優業を主としている。
トワは彼女に憧れており、デビュー前はずっと彼女の歌を聴いていてCDも全て持っていた。
そんな彼女と共演できると知りトワは舞い上がったが、同時に困惑もしてきた。
「どうしよう。挨拶とか行ったほうがいいのかな。あー、でも迷惑かな。あー、どうしよう。水沼ぁ!!」
「そこはトワに任せますよ。」
「そんな・・・どうしよう。」
「どうしよう。私・・・。」
トワが悩んでいるほぼ同じ頃、伍代も悩んでいた。
トワにおいていかれ、とりあえず電車でテレビ局に来てみたものの打開策は何もない。
うろうろしていると、向こうで同じようにうろうろしているトワの姿が見えた。
その一歩後ろで水沼が腰に手を当てて突っ立っている。
「何してんの、水沼さん。」
「伍代さん、来ていたのですか。」
「来るに決まってるでしょ。で、トワは何、楽屋前でうろついてるわけ?」
「因幡ひとみってご存知ですか?」
「えぇ、知ってる。あの大御所アイドルでしょ?」
「その方と今日共演するんですが・・・彼女はトワの憧れの人でしてね。挨拶したいらしいんですけど。トワの性分でしょ?あの通りです。」
そう言って目線を檻の中の小動物のようにうろつくトワにやった。
「はぁ?そんなことで悩でるの。あの子。」
「それがトワなんです。」
「ったく、もう!」
そう言うと伍代はトワに近づいていくと彼女の手をぐいっと引っ張った。
「え、おばさん?」
「行くわよ。」
「え。え。え。どこに!?」
「どこって、因幡さんとこだよ。」
「えぇっ!?いいよっ!!離してよ!!」
嫌がるトワを伍代は離そうとせずにぐいぐい因幡の楽屋まで引っ張っていく。
「よくない!!ほらっ!!好きだったら諦めない!!因幡さーん!!」
伍代は因幡の楽屋まで行くと部屋をノックした。
「はーい。誰?」
部屋の向こうから声が聞こえた。
「八雲トワでーす。挨拶に来ましたー。」
しれっと言う伍代にトワは焦って手を離そうとするが、伍代は離そうとはしない。
「どうぞ。」
「失礼しまーす。」
伍代は無理やりトワを楽屋に押し込んだ。
楽屋の中には、メイクを終えくつろぐ因幡の姿があった。
その姿を見て緊張したのかトワは何も言えない。そんなトワを見て伍代はかわりにべらべらと喋る。
「うちのトワが因幡さんの大ファンなんですよー。もーデビュー前からずっと因幡さんの歌聴いてて、憧れの的でいっつも因幡さんみたいになりたいって言っててー。今日共演するって聞いてもうテンション上がりまくりで、ねっ、トワ?」
トワは無言で何度もうなづく。
それを聞いた因幡はニコニコ笑って言った。
「えー、トワちゃんみたいなトップアイドルがそんなこと言ってくれるなんて嬉しいな。私もまだまだいけるかな~って思っちゃうじゃん。」
「あ、サインいただけると嬉しいんですけど。」
調子に乗ってズケズケと言う伍代にトワは思わず蹴りを入れた。
「な、失礼じゃん!!」
「いいじゃない。好きなんでしょ?滅多にないよ。こういうチャンスは。」
「馬鹿!そういう問題じゃないの!!」
そんな二人のやり取りを見て因幡は笑った。
「ははは。いいよ。サインくらい。私の方が欲しいくらいよ。」
因幡はそういうと快くサインを書いてくれた。
「トワちゃんは歌も上手いしほんとすごいよね。私も応援してるよ。今日共演するの楽しみにしてる。」
「は、はい!ありがとうございます!!」
トワはサイン色紙を抱きしめながら頭を下げた。
「よかったね。」
楽屋をあとにして、伍代はトワに言った。
「・・・喉渇いた。」
「ん?」
「喉渇いた!!ジュース買ってきて!!早く!!」
「な・・・!?」
「早く!!」
「わかったわよ!!ったく、人使い荒い子。」
伍代はそう言うと渋々ジュースを買いに行った。
伍代が行ってしまったあとその後ろ姿をトワはぼうっと見つめた。そしてもらったサイン色紙を見る。するとそんな姿に見かねた水沼がトワに近寄ってきた。
「惚れましたか?」
「なっ!!な、なんでそうなるの!?」
「貴女、強引な人好きでしょう。」
「惚れてないもん。好きじゃないもん。」
「・・・そうですか。でもお礼くらい言ったほうがいいんじゃないですか。嫌な奴だと思われちゃいますよ。伍代さんに。」
「えぇっ?えぇっ!えぇっ・・・。」
「トワー買ってきたよー。」
水沼と話し込んでいると伍代が向こうから帰ってきた。
それを見てトワはうーっとうなってジュースを奪い取ると、そっぽを向いて口を開いた。
「いいよ、撮っても。」
「は?」
「だから、撮ってもいいって言ってんの、写真!!」
「へ?本当に!?ていうか、私なんかしたの!?何、急に!?」
「うるさいなぁ、もう!!トワ収録あるからもう行くからねっ!!」
そう言うとトワは下を向いたまま早歩きで行ってしまった。
「水沼さん、何か私した?」
「さぁ?」
水沼はわざと知らないふりをする。
「あ、ちょっと待って!トワ、トワー!?」
釈然としないまま伍代は慌ててトワを追いかけた。
そんな二人を見て水沼は頭を抱える。
「天然二人ですか・・・。はぁ。まったくもってよろしくない傾向だ。」
とりあえず伍代は一歩前進、水沼は一歩後退・・・したようであるが、これからどうなるかはトワのご機嫌しだいである。
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