25☆話「H63自警団強制解散実行!」
H63自警団が解散を無視しただけではなく、集落を襲い女子供をさらった。
それを確信したSA-4自警団は、H63自警団の強制解散を実行する決断を即日にする。
人質の保護が最優先であると、考えたからだ。
非戦闘員と本部を守る団員以外は、計画に参加することになった。
そのため二日後の朝、SA-4自警団内部は緊張に満ちていた。
「んっと~包帯に、抗生剤……縫合テープ……」
エリオも大きなバス型の救護車で怪我人が出た場合に備え、タカのいる機械部も車や武器の最終確認で忙しい。
セイの部屋で、最後の打ち合わせが行われてる。
攻撃力重視の少数精鋭で突入するため、アーサーとイリアスも参加する。
「やはり私もボディで出た方がいいのでは?」
ユディアルにセイが言う。
「セイ、何度も言わせるな、それは絶対に駄目だと今までも何度も言ってるだろう」
「しかし……」
「お前のボディだって壊れれば、もう復元不可なんだ。お前の直接の言葉に救われてるやつは沢山いる。壊れて終わりの存在じゃない。お前は唯一無二だ。セイ、俺達を信じろよ」
「信じていないわけではありません……ですが初出動でこの規模の闘いにヴァン君を参加させるのは、不安もあるんです」
セイに視線を向けられたヴァンは、今までと違う強い瞳でセイを見た。
「セイさん、頼りないかもしれませんが俺も精一杯頑張ります」
「頼りないなど思っていません、心配なのです」
「大丈夫です! 俺達、繋がってます! 信じてください!」
数日で、か弱い少年が強い瞳をするようになった。
その瞳を見てセイも頷く。
「……そうですね、全力でサポート致します」
「少しの間にたくましくなったな、ヴァン」
「ありがとうございます!」
本部のトンネルを出た地上で、H63自警団に向かう団員達にセイが言葉をかける。
「皆様、今回の戦いを止められず巻き込んでしまうことを許してください。皆様は唯一無二の存在です。誰も替えのきかない大切な命です。誰一人怪我をすることなく戻ってきてください、どうか……必ず」
誰一人、巻き込まれたなどと思ってはいない。
だが、そういうセイを皆が好いている。
ヴァンにも今、すごくそれがよくわかる。
「戻っての宴会を楽しみにしようぜ!! 行くぞ! 俺達の強さを見せつけてやるぜ!!」
「「「「おおおおおおおおおおおおお!!」」」」
ユディアルが鼓舞すると、男達が皆声を挙げた。
「おい、ヴァン」
「イリアスさん」
「前は……悪かったな」
目は合わせず、それだけ言われた。
「えっ」
あの日の恫喝。ヴァンにとっては気を引き締める言葉にもなっていた。自惚れず、努力する事ができた。
「死ぬなよ」
「イリアスさんも!」
イリアスはまっすぐヴァンを向いて頷いた。
◇◇◇
H63自警団には強制解散での突入も、昨日に伝えてあった。
逃げ出したい者は逃げ出せるようにの配慮だが、そんな事をすれば逆に団内で粛清される可能性もあるのか逃げ出した団員はいなかった。
セイのバイクに乗り、走るユディアルとヴァン。
目の前にH63自警団のアジトが見えてくる。
「やっぱりすごいなぁ……」
「きたねーアジトだ」
『いつどこか崩れてもおかしくない建造物です』
目の前のH63自警団のアジトは元々が山の炭鉱跡地の廃墟だった。
それを改造し、継ぎ足し継ぎ足し……トタンや木材で繋ぎ合わせていったもので、中は迷路のようになっているという噂だ。
「お前もよくこんなとこに、助けを求めたよ」
「……無知って怖いですね」
『ヴァン君に対しての仕打ちもしっかりと制裁したいですね。そして囚われた人達の保護を最優先です』
この建物のなかでは、囚われた人が収容された部屋があるという噂がある。
ヴァンも襲われた時『あの部屋に押し込め』という会話を覚えている。
「しかし俺達に敵うわけはないとわかるはずなのに……武装してやがる」
アジト前には、バリケードが作られ有刺鉄線や尖った棒などが向けられている。
その中央には緑に塗られた人形が串刺しにされて、さらされていた。
SA-4自警団への暴言もペンキで書かれている。
エリオの救護車は、もう少し離れた岩陰に待機している。
ユディアルの乗るセイのバイクに続いてバイクの部隊が、その後ろをジープも続き停車した。
半分の部隊はアジトが隣接する山の上に待機だ。
ユディアルが大声を張り上げた。
拡声機能でもあるのか更に大きくなった声がアジトに向かって放たれる。
「H63自警団ー!! お前らに伝えた解散の日がきた!! さらった人達をすぐに解放しろ!! 即時解散し、この建物を解体することを手伝うのであれば攻撃はしない! だがここで抵抗するのであれば――!!」
ひゅうとユディアルが息を吸う音が聞こえた。
「お前ら全員叩きのめして、地獄のザバッダ刑務所送りだ!!」
ザバッダ刑務所、此処より遥か北の島にある唯一の刑務所だ。
刑務所を保持するのはかなり困難なのだが、あまりにも酷い輩達の処置として今も存在している。
『ユディアル……』
「脅しだよ、脅し」
小声でセイの咎めるような声が聞こえた。
今回の作戦会議ではそこまでの処置はまだ考えられていなかったからだ。
しばしの沈黙……のあと、一発の銃声が響いた。
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