26☆話「敵アジト潜入!戦闘開始!」
ユディアルの問いかけに対しての一発の銃撃。
ビシィ! とユディアルの魔術結界が弾いた。
「調子にのってんじゃねぇぞ! この機械の犬めらが!!」
H63自警団・団長のホブロイだ。
見ただけでわかる醜悪さは、此処数年で酷くなった。
昔はまともに自警団をやっていた時期もあったとセイは言っていたが、信じられない。
「さらった人達を傷つけるんじゃねえぞ!! 今日がお前の終わりの日だホブロイ!!」
ホブロイの拡声器を使った声の後ろに、移動されられているのか泣き喚く女性の声がかすかに聞こえた。
やはり――襲った集落の人達を監禁している事が確信に変わる!
「ホブロイ!! 人質を傷つけたら許さんぞ!!」
「調子に乗るなユディアル! お前らの首が明日から此処の玄関を飾るだろうがよ!!」
ゆら……とユディアルの怒気のオーラが揺れたのが見えた気がした。
安い挑発に煽られたのではない、人を絶望に陥れる悪への怒り――!!
「いくぞぉおおおおお!!」
ユディアルが刀を構え、太陽に向かって吠えた。
SA-4自警団の皆も一斉に吠える。
『ユディアルには四割、ヴァン君には六割でサポートします』
「三・七でいい! バイクはエリオの元へ戻せ! 行くぞ!」
「はい!」
『了解』
ドォン!! とユディアルの怒りの雷がバリケードを破壊した。
しかし、H63自警団の中からは誰一人出てこない。
このぐちゃぐちゃのアジトの中におびき寄す作戦のようだ。
「必ず二人一組で行動しろ! ……ヴァン、怯えるな俺とセイが守る」
「はい! 必ず俺も役に立ちます!」
『ヴァン君無理をせずに、私達が一緒ですよ』
まずはユディアルとヴァンが突破口を開く!!
闘いが始まった……!!
ユディアルとヴァンに続く警らはアーサーとイリアスを含めた十五人。
少数精鋭隊だ。
此のアジトから逃げ出していく数のほうが多いだろうと、外の待機は二十人いる。
中に囚われた人がいる以上、うかつに火を放ったりなどはできない。
『入り口を抜けた先に、銃火器反応あります』
「望むところだ!!」
こういったアジトは、入り口が狭く作られている。
一気に敵の侵入を許さないためだ。
トンネルのような入り口を出れば、広い中庭だ。
囲むように元々のコンクリートの廃墟が連なっている。
ユディアルとヴァンを二階の窓から銃弾が襲うが、ユディアルの魔術結界が二人を包み守った。
「ま、魔術師……! ユディアルだぁ!!」
「魔術師くらいで怯えるやつは、さっさと投降しろ!!」
「投降したやつは背中から撃ち殺せ!!」
ホブロイの声が響く。
廃墟を加工した建物には木の屋根やトタンの建物が連なり、階段や廊下が無理やり伸び、迷宮のようになっている。
これに加え地下も屋上もあるだろう。
さっきまで光り輝いていた太陽を急に雲が隠した。
銃の弾も貴重なものだ。銃撃も長くは続かなかった。
後ろから続くアーサー達も、一気に建物に侵入することに成功するのが見える。
「ヴァン! まずは人質を探すぞ!」
「はい!」
「アーサー!」
「おう!」
「イリアス!」
「わかってる!」
アーサーとイリアス。二人にも発電機場所の制圧など、それぞれ任務がある。
「死ぬなよ!!」
「当然」
「当たり前だ」
当然だと言わんばかり叫び、それぞれのペアと廊下を走り消えていった。
『ヴァン君敵気配! 右!』
「! はい!」
「うおおおお! し、死ねぇこの野郎!」
突然出てきたへっぴり腰の男の剣を、ヴァンはなんなくかわす。
即座に柄と握る手の間に、剣先を滑り込ませて相手の剣を弾いた。
「わぁ! ひぃい!!」
すぐに相手の手を後ろに回し拘束し、足を蹴飛ばし座り込ませる。
「あぎゃ!」
「すみませんっ我慢してくださいっ!」
相手の剣は遠隔操作機カナリヤで真っ二つに焼き切り落とし、使用不可にした。
「いいぞ! ヴァン!」
「はい!」
そうは言ってもユディアルの方がもう何十人も襲いかかってくる敵を、峰打ちで気絶させている。
たまにユディアルが知っている幹部などは、少々の罰として傷を負わせているようだった。
今はユディアルが左手で、一人の幹部の首を壁に押さえつけている。
「おい! 捕まえた人達はどこに隠している……??」
「し……知らねぇなぁ……」
「お前は俺が甘ちゃんだと……思ってるわけないよなぁ? 今までお前がなぶってきた人達の分だけつま先から切り刻んでやろうか……?」
「ひぅ」
「楽には殺さねぇぞ……」
ゆらりと怒気でユディアルのオッドアイが揺れる。
「い、言えねぇ……言えばどっちにしろ……殺されるんだ」
『ユディアル、やめておきなさい』
「セイ……」
『人の流れから見てもっと山側の建物でしょう、もしくは鉱山のトンネルか地下道』
「ユディアルさん! 行きましょう!」
「あぁ、そうだな。じゃお前はねんねしとけな!」
ユディアルが思い切り殴りつけ、男は卒倒した。
二人はすぐに山側の建物へ、廊下を走り向かう。
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