13☆話「ヴァン!初めての戦い!」
『接続完了』
セイとの接続が完了した――。
五感が研ぎ澄まされている感覚。
先程よりも一層……気配を感じる!!
ここから見える廃墟の五階、崩れかけた外階段に何かいるように思えた。
「……セイさん、遠くを狙える……武器はありますか?」
『えぇ、準備します』
セイの武器を自分が使うなど、そんな事を考えるとは自分でも驚きだった。
『私がサポートします。敵から目視しにくい特別なショートライフルを使いましょう』
ヴァンはヘルメットを外し、団服のフードをかぶった。
光を最小限に抑え、バイクのハンドルの間からライフルが現れる。
それは不思議な感覚だった。
ただライフルを持っただけで、後ろからセイに支えられているような感覚。
耳元でも聞こえるが、心に声が響いているような感覚。
一体感がある。
『なるほど、二時の方向五階の外階段ですね』
「は、はい」
『安心してください。貴方の眼球の動き、視線を感じただけで心に干渉をしているわけではありません』
その言葉は嘘ではないのだろうが、心を覗かれていたとしても不快には思えない。
むしろ心も支えられているように、いつも感じられない自信すら感じる。
「俺は不安は何もありません」
ヴァンは、目標には背を向け探す素振りをする。
『このライフルは特別な飛距離があり弾も特殊なものを用意します。うまく飛ばせば命中するでしょう』
敵の位置までは300メートルはある。
ライフル上級者でなければ届かない距離だろう。
『正確な位置は私が修正します』
相手も攻撃の機会を伺っているのかもしれない。
ヴァンはセイに守られるかのように、呼吸を整えた。
バイクの影から相手に気付かれないように、後ろ膝を地面につけ、前膝に肘をつけてライフルを構え狙いを定める。
心臓の音がうるさく耳に響く。
『大丈夫、ヴァン君ならできますよ』
そう言われると、落ち着く……この感触。
「はい……!」
深く深呼吸して、また狙いを定める。
風が止まり影が、見えた――!!
『今です!』
一気にライフルの引き金を引く。
弾ける銃声。
「わぁっ」
予想以上の衝撃に、ヴァンの身体は後ろに転びそうになった。
しかし、魔機の二匹目も落雷で破壊し終えたユディアルに支えられる。
「よくやった!」
ユディアルは叫ぶと、ヴァンをその場に置いて一人バイクに飛び乗り飛び出した。
撃止めたのか、廃墟の階段から何か影が落ちていく。
それを逃すまいと、ユディアルはバイクから飛び降り廃墟に走る!
「逃がすか!」
セイを通じてなのか、ユディアルの声が聞こえた。
「ああ!? セイさん敵が!」
しかし、敵が落ちた廃墟付近から一台のホロ車が飛び出してくる。
敵の仲間だ!!
「ユディアルさん!!」
『ユディアルの援護を……!』
「はい!」
援護でヴァンは、何発か懸命に銃を放つ。
ホロ車には、撃ち落とした人物が乗り込んだようだ。
銃撃戦が始まるかと思われたが、ホロ車はそのまま走り去った。
「はぁ……はぁ……っ」
後に残された、ユディアルとヴァン、そしてセイ。
敵が去った安堵から、ヴァンは足が震えだしがっくりと座り込む。
すぐにユディアルが駆けつけ、ヴァンを抱き上げてバイクの横に座らせられた。
水と食料の間に入れてあった、毛布をかけられる。
「大丈夫か」
「は、はい……ユディアルさん、お怪我は」
「ヴァンが守ってくれたから、俺は大丈夫。ありがとう。ミックスだったんだな、やっぱり」
「俺が……」
「援護射撃、ありがとうな」
震える手を、ユディアルが握る。
『ヴァン君、ありがとうございます』
セイの声も耳に響く。優しく包まれる声。
「お、お役に立てて……よかった……」
ホッとして、涙が滲んできてしまう。
セイの緑色の淡い光が暖かく、ヴァンを包んだ。
「血の痕はあったが、致命傷ではなさそうだ」
『あの車だけでは、どこの者か特定は厳しいですね』
「しかし奴らは何者だ……魔機を操る魔術師だと……」
「味方ではなさそうですね。とりあえずは警ら部に連絡を入れておきます。見回りもかねてヴァン君の集落に急ぎましょう」
「はい」
「後ろ乗れるか?」
「はい」
「しっかり掴まってろ」
ユディアルの背中の温かさは、自分が生きている事もユディアルが無事な事も実感させてくれる命の温かさだとヴァンは思った。
生きている、その事に感謝しながらヴァンはユディアルの背中を抱き締めた。
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