6☆話「メンズ集合!会議室での自己紹介」

 

 昼食の弁当を食べた後、また長い廊下を歩く。

 広い会議室、長テーブルが並べられてヴァンはユディアルとタカに挟まれ椅子に座る。

 金属でできた椅子には初めて座るし、こんな真四角で広い部屋自体初めてだ。

  前に立っているセイの後ろには大きな板があって、そこには字が映り、絵が出たりたまに写真がくるくると動いたりして驚く。


「すごい……あれは黒板みたいなものですか?」


「そうだ、黒板は知ってるか。学校か?」


「父が昔教師をやっていたので、家でも黒板で勉強を……でも本当に学業は初歩で終わっていると思います」


「じゃあ、俺と一緒に勉強しようぜ! 勉強でも後輩だな!」


 タカが嬉しそうに話す。この会議室は子供達の学び場でもあったらしい。

 昨日見たピンク髪の少年も来て、タカの隣に座る。


「ヴァン、こいつはイリアス。研究部に所属してる」


「どうせ、後で自己紹介あるだろう。勝手に俺を紹介すんなよ」


「す、すみません。勝手に聞いちゃって……」


「別に……あんたが謝ることないけど」


「こいつ、この派手なピンクの髪のせいで性格ちょっとひねくれてるとこあるけどイイやつだから」


「調子にのんなっ!」


「いで!」


「イリアスやめろ」


 イリアスがタカの頭を殴り、ユディアルが一喝する。


 ピンク色の髪は地毛だったのかと驚くが、自分も金髪に青のメッシュだ。

 山を降りて散々な目にあったのでイリアスも苦労してきたのかもしれない、と勝手に思ったら怒られるかな……などとヴァンは考える。


 それと同時にまたワイワイと男達が入ってきた。

 作業服を着ている者、白衣を着ている者、エプロンをしている者、さまざまだ。


「お、やったぁ女の子!? と思ったら野郎か~~」


「また男ばっかり……でも、綺麗な顔してんな」


「でも男だ……」


「あたしがいるでしょ~あんた達」


 今日のエリオは青い羽根のようなドデカいイヤリングをして青のタイトワンピースだ。胸板が厚い。

 突然のウインクと投げキッスに、皆がうげぇとエリオを見る。

 全員が座ったところで、セイが挨拶をした。


「今日から新しい団員がこのSA-4自警団に入団してくれました。ヴァン君、自己紹介をお願いします」


「は、はい!」


 事前に言われていたので、考えてはいたが緊張で全て飛んでしまう。

 カクカクと前に出て、一礼した。


「お……ぼ、僕はヴァン……ヴァンと言います。き、北の山の中に住んでいましたが、父が亡くなり降りてきました……でも、色々あって……あの……」


 皆の集まる視線に混乱してしまい、話せなくなってしまった。

 すかさずセイが、ヴァンの肩に優しく手を置いた。


「彼はH63自警団にも保護を求めたところ逆に監禁されそうになり、かろうじて逃げ延びました。しかし彼の情報は裏ルートに流され、彼を狙う盗賊も増えている状況です」


「あのゴロツキ野郎めが!!」

「自警団の恥晒しだぜ!!」


 H63自警団への非難を皆が叫んだ。


「よって、このSA-4自警団が彼を保護し、団員になってもらうように私がスカウトしました。皆さんも是非、彼がこの自警団に慣れるように協力してください」


「よ、よろしくお願いします!!」


 ヴァンが頭を下げると、ユディアルが拍手をして皆もそれに続いた。


「ここでは総勢四十二名が暮らしています。近くの集落から通ってくださる方もいます」

「残念ながら全員男だー!」


 ヤジが飛び、皆が笑うがエリオがプリプリと怒り出す。

 ワイワイと皆仲良く楽しそうだ。

 セイも特に注意もせずに微笑んだ。


「此処では、ユディアルのように一帯を見回り、皆を守る警ら部。

 私のメンテナンスや機械の整備をしてくれる機械部。

 武器開発や薬などの研究をする研究部。

 怪我人や病気の治療をする保健部。

 美味しい食事を作ってくれる炊事部。

 農作物の収穫や家畜の世話をする生活部などに分かれています」


「はい……」


 皆がニコニコとヴァンがどこを希望するか眺めている。


「焦らなくても良いのですが、どこかの部で仕事をしていただくので、どこに所属したいのか考えておいてください」


「それはもちろん警らだろ!」


 ユディアルが大きな声で言う。


「ばっか! こんな可愛いヴァンに、警らなんかさせるっていうの!? 保健部に決まってるじゃないの!」


 とエリオ。


「俺の弟分なんだから、機械だよ!!」


 叫んだのはタカだ。 


「炊事も新しい風吹かせろよー!」


「生活部だって人手が足りないんじゃ!!」


 ガヤガヤと皆が言う。

 新人ヴァンの争奪戦だ。


「はい、質問です。その人ってユディアルと同じミックス・通信者コミュニケーターなんですか?」


「えっ?」


 イリアスが手を挙げて、通る声で言ったので皆が一斉に静まる。

 ヴァンにとっては初めて聞く言葉だった。





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