4☆話「セイ、イケメンボディで現れる」
医務室の扉が開いてユディアルともう一人の男が入ってきた。
ユディアルと同じ高長身だがそこまで筋肉質ではなく、スラリと長い足。
髪は長めの前髪のセンターパート。
金髪だがどこか薄い緑色が混ざっていて不思議な輝きを放っている。
瞳は宝石のように輝く緑だ。
彫りの深い端正な顔立ちで睫毛も長く女性的でもあり美しい。
この世界にも伝わる天の使いか妖精王のようだ。
「どうだい、調子は?」
ユディアルに言われて、金髪の男に見とれてしまったヴァンがハッとなる。
「あ、あの……大丈夫です」
「脳も心配なしよ~ん」
「それは良かったです」
金髪の男が優しく微笑む。ヴァンは気付いた、その声は、と。
「はい、私は先程あなたと一緒にいた者です。此処を管理している、セイと言います」
「セイさん……あ、あのお二人共本当にありがとうございました!!
すみません、御礼が遅くなって」
立ち上がったセイをエリオが優しく座らせる。
「ヴァン君、御礼など必要ありませんよ。ゆっくり休んでください。
お腹は空いていませんか? 今スープとパンを用意してもらっています」
「あ……ありがとうございます」
エリオがヴァンの事情を簡単に伝えた。
セイもユディアルも少し驚いた顔をする。
「じゃあ、元の出身は?」
「ここから北の山奥で父と兄と暮らしていたんです。
でも兄は外の世界へ行きたいと数年前に出て行き、父も病気で一年前に亡くなって……」
「一人では山での生活は大変ですね」
「はい、なので降りて村での生活を試みたのですが……俺の珍しい容姿を見て狙われる事が多くて……H63? 自警団にも助けを求めたら」
「Hの63か……あいつらは自警団を名乗ってるただのゴロツキだ」
ユディアルが顔を歪める。
「そうなんです、逆に襲われそうになって……まさか俺、そんな仕打ちを受けるなんて……めちゃくちゃ怖くて、着の身着のままでこっちの方に逃げてきたんです」
「それは大変でしたね……」
「ヴァンは、キレイな顔してるもんなぁ」
ユディアルの言葉に、ヴァンは目を丸くする。
「そ、そんな! この髪と目だと、奴隷として高く売れるみたいな事言ってました!」
「こんなに可愛い顔してるんだもの、あいつらから見れば格好の餌だわ」
「いや、俺あの」
「んふ、かわゆい」
赤くなった頬をエリオに突かれた。
「な、なのでずっとフードかぶって集落でも過ごしてたんです……それなのにどこでバレたのか昨日の盗賊団が集落にやってきて……」
「なるほど……」
セイがじっと、ヴァンを見つめ目が合った。
ヴァンはあまりの綺麗な瞳に吸い込まれそうで、心臓が音を立てるのを感じる。
「メッシュにオッドアイですね……」
「は、はい」
「素質もあるかもしれないぜ、俺と同じように」
「素質……?」
確かにヴァン自身もメッシュの入った髪にオッドアイがユディアルと同じだと思っていたのだ。
しかし、この姿の意味など父親から聞いた事はなかった。
「ヴァン君、どうでしょう。あなたさえ良ければ、ここで団員として住み込みで働きませんか?」
「えっ?」
丁度、先程のツナギを来た少年が食事を持って医務室に入ってきた。
「あなたの情報は、きっと悪い連中に共有されていることでしょう。今回もあなたを狙った犯行だった。此処にいれば身の安全は保証できます」
「え! この人、新しく入るの!? やったー! 俺タカ! よろしくな!!」
「おう! やったな!」
「ユディアル、タカ、まだヴァン君のご意思を確認していませんよ」
「俺、畑仕事と掃除と少しの料理しかできませんが……」
剣術もほとんど出来ず。
機械など触った事もない。
山を降りて自分の情けなさを知った。
「えぇ、何も難しいことはありません。あなたの保護を最優先に、できる仕事を探してもらいます。休日ももちろんありますし部屋も用意します。食事も毎食支給致します。なかなか使う機会はありませんが給与も少し」
「給与?」
「金だよ」
ユディアルに言われて驚く。
当然のようにセイは話したが、全て驚きの高待遇だ。
「ここの飯、すっごく美味いよ!」
確かにタカの持っているお盆のスープからは良い香りが漂っている。
しばらく、まともな食事をしていなかったのでヴァンのお腹はぐうぐうと鳴った。
「そんなにして頂いて……いいんでしょうか俺……」
「いいに決まってるじゃん! やった! やっと俺にも弟分ができる~!」
少年はヴァンよりかなり年下に見えるが、『弟分! 弟分!』と嬉しそうに飛び跳ねている。
「集団生活にはなりますが、どうでしょう?」
「……お願いします!! どうか此処に置いてください!!」
ヴァンは深く深く腰を折って頭を下げた。すぐにセイが頭を上げさせ『ようこそ』と微笑んだ。
「決まりだな!」「やったー!」「これで安心ね」
騒ぐユディアルとタカをたしなめながら、エリオも笑う。
「ここのセキュリティは私が管理しています。今日は安心して休んでください」
「はい……」
「明日、この施設や自警団の事なんかも説明するよ」
「まずは、これ食ってゆっくり休めよな! ヴァン!」
「はい、ありがとうございます!」
こうしてSA-4自警団に、ヴァンが加わった。
温かいスープはとても美味しく、皆の笑顔の暖かさがヴァンの心をやっと和ませた。
医務室のベッドは柔らかく温かい、いつぶりだろうか。
安堵とともにヴァンはあっという間に眠りについた。
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