第零話 開戦(3)
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登場人物:
九番:主人公。クソガキッズ
一番:自虐青年
二番:ギャル
三番:天然ロリ
四番:関西弁のおっさん
五番:眼鏡が無いと落ち着かない人
六番:ひ弱な女性。ひよよさん
七番:狂犬姉貴
八番:感じのいい男性(笑)
自称神様:自分を神だと思い込んでいる一般男性
あらすじ:知らないところにいたかと思うと神様を名乗る人間から殺し合いして生き残れって言われて自分が死んでるって気がついて殺し合いのルールが分かってきた。
/*やっと導入終了です。自分が思っている以上に長くなってしまった。もっと短くまとめるつもりだったんです。ほんとです。
あと章を追加した関係上、順番が前後しました。申し訳ないです。*/
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まとめるとこんな感じだろうか。僕は頭の中で整理をつけ、そして気がつく。どうにも戦う前提で話しが進んでいるが、その前提条件がおかしいのだ。僕は口を開く。
「でも、それに乗る必要は無いよな?」
義務も無ければ責務でも無い。これは神の意向であって僕らに付き従う義理は無い筈だ。
僕の方を目を細めて凝視する。言いも知れぬ威圧感を、圧迫感を感じた。目を離すことができない。金縛りに遭ったみたいに動けなかった。
裏のありそうな笑みを浮かべて神は告げる。
「ええ、これに強制はありません。ただ断るというならこのまま地獄に落ちて頂きますが……貴方方それ相応の咎人ですので……心当たりはあるでしょう?これはある意味で救済措置なんですよ。このままいけば生前の罪によって常人には耐えがたい罰という名の苦痛が待っています。それから逃れる為のチャンスを与えて上げてるんですよ。どうです?慈悲深いでしょ?」
恩を売りつけるかのように自称神様は言う。
咎人……罪を犯した者。この集まった人間は罪を犯した者達の集団なんだろうか。そう言われると全員が怪しく見えてきてしまう。僕の罪に──心当たりはある。死に際の行動。ただどうしてその行動をとったのか動機が分からないでいた。
各々に思い当たる節があるのか表情は硬くなる。七番の女はチッと舌打ちをする。
神は忘れていたと言わんばかりに人差し指を立てる。
「ああ、あとついでに地獄がどんなとこか一度見せておきます」
「は?」
視覚よりも嗅覚よりも、何よりも刺激を通達するのは触覚。痛みだった。それも全身だ。脳に訴えて止まなかった。目に何かが入って来て思わず目を強く瞑る。手で拭うと冷たく水滴だった。次の瞬間には、また目に痛みが走る。目だけじゃ無かった。顔全体を覆うかのように次々と飛来してくる。顔だけじゃ無い体全体に覆い尽くさんと次から次へと。
視界を確保できるように手で両目を覆う様にして壁をつくりながら、目を細めて状況を確認して漸く気がつく。僕は白銀の世界に放り出されていた。
豪雪、猛吹雪だった。先ほどから全身に打ち当たるのは雪。自然災害に対してなすすべは無く、体温は急速に低下していく。視界はおろか呼吸すら満足に確保できない。行き過ぎた寒さが痛みとして襲ってきていた。全身を針のむしろで刺されたかのような痛みが絶え間なく全身を覆っていた。僕はまともに立つことさえできずに転がり、丸くなる。口から漏れ出す息は白く可視化するが、吹雪にさらされ霧散していく。呼吸は浅く、歯がガチガチと鳴り、体は震える。頭が働かない。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死
気がつくと僕は先ほどの白い空間にいて同じように椅子に座っていた。先ほどの痛みは無く、寒さも感じない。あれが地獄。一瞬にして恐怖が心を支配していた。僕らが行き着く先があの光景なのか。周りを見るとそれぞれで地獄を体験をしてきたのか顔が青ざめている。
「さて今のうちに各々の顔を覚えておくのがよろしいかと思いますよ。現世に帰った際に分からなくなってしまうでしょうから……よっと」
何事も無かったように話し始めた神が指を鳴らすと同時に、巨大な門が出現していた。音もなく、まるで元からそこにあったかのように。どうやら門は全部で九つあり、それぞれの背後に一つずつ門が配置されていた。
「参加される方は自分の後ろの門へとご移動願います。不参加を表明される場合は此方に残っていただけたらそのように判断いたします。あ、拘束は解きましたよ」
「…………」
空間が静まりかえる。耳鳴りがする。ここで決めるのだ。生き返りを求めるか、あの地獄に向かうのかを。
「ハッ何にしたってテメェら全員ぶっ殺せばいいんだろ?まぁ楽勝だろ」
飛び跳ねるように立ち上がると、七番は一目散に自身の門へと向かっていった。
「平均年齢は見たところかなり若そうですね。女子供おじさん相手なら僕でもそれなりに勝率はあるかも知れませんね。まぁ彼女にしてもやりようはいくらでもあるでしょう」
円卓に付いている者をそれぞれ一通り見渡して五番の男はそう結論づけ、歩み出す。
言われてみて気がついた。年齢層は10代から50代くらいだろうか。自分自身もこのグループの中では軍を抜いて若いだろうが、一番若いのは三番の女の子だろうか。何も考えて居なさそうな言動からそう感じるだけかも知れない。一番年上なのは5番の人間だろうか。死んだ人間と言うくらいだから、この中に老人がいないのが気がかりだった。
「おっさんってもしかしてわしのこと?酷いわぁ、えらく舐められたもんやでまったく。まぁわしも簡単にやれられるつもりはないけどなぁ。ほな、またな」
と四番は五番に言われた事に対して傷ついた様な顔をしていたが、次の瞬間には平気な顔でひらひらと手を振りながら歩き出していた。
「ああ何にしても現世に戻れるという事はつまり……またあの方に会える機会が得られるのですね。殺し合いは嫌いですが……これも試練と考えれば苦にもなりません」
意外にも弱気な6番が参加するとは。立ち上がるとお辞儀をして自分の門へと向かう。
「ねぇー、私こっちに行くの?」
三番が顎を机の上にのせたまま腕ごと後ろに向けてそう尋ねると、
「はいそうです……?」
自称神は何で質問されたのか分からないと言った様子で不思議そうに答える。
「んー」
そう言って三番の子は歩いて行く。果たして自分が巻き込まれている状況を理解できているのだろうか。言われたことに従っている感がある。
だが、他人の心配をしている暇は無い。自身の今後を左右するのだから。
「ま、しんどい罰はごめんだし、参加したらチャンスがあるわけでしょ?参加しどくじゃん」
八番は円卓に付いている残りのものに向かって投げかけるように告げると席を外す。
「はぁ最悪だな。死んでも運が悪いとか……流石俺」
ため息をつき、自虐的な笑みを浮かべながら一番は自身の門へと向かっていく。
先ほどの番号の大きさの強さを言っているのだろうか。プライズとペナルティを付与すると言っていたが、そもそもの異能の強さなんて知らないからどれほど強化され、どれほど弱体化されるかなんて知りようが無い様に思えた。それも異能の説明の時にでもされるのだろうか。
「正直胡散臭すぎ……けどま、乗らないわけにはいかないっしょ」
二番も軽やかにステップをして行ってしまう。
胡散臭い。確かに彼女の言うとおりだ。自分を神だと名乗る目の前の存在を完全に信用できるかと言われれば容易にはできない。だがこれを断れば行き着く先は地獄。加えて先ほどから引き起こす超常現象。それを鑑みるに人間より上位の存在であることは間違いない。
「それで九番、残るは貴方だけですが……参加されるのですか?」
「っっ……ああ」
吐露するように答えて足に力を入れる。足は動いた。だが、先ほどの地獄のせいか、寒さがまだ体を襲っているように思える。体の震えが止まらない。動こうとするも寒さで思うように動かない。這って進むしか無いかと考えていると、突如として体を襲っていた寒さが消える。全身が違和感なく、今まで通りに動く。何だったのかと疑問を浮かべながらも自分の門へと向かっていく。
皆ぞれぞれに思惑はあるのだろう。地獄を見せられて背中を押されたものもいたのかも知れない。だが、生き返ることができると言う条件が出された時点で全員の目つきが変わった。息を呑むのが分かった。空気がひりついた。そう、全員色々とまくし立ててはいたが、答えはその時点で決まっていたのだろう。地獄を見せたのは自称神様なりの一押しだったのだろうが、それは杞憂に思える。少なくとも僕の答えはその時点で、と言うよりも死に際の記憶を思い出した時点で──決まっていた。
「そちらの門の先に咎人の候補者が待っております。各々方門の先へとお進みくださいな」
門の大きさは三メートル近くある。門の上部には板状の何かが付いており、幾行かの文が記載されていたが何が書かれているの分からない。文字が読めない。少なくとも日本語ではない事は分かった。
「では、開門!!────せいぜい生き返りを賭けて生き残る無様な姿を期待します」
神が高らかに宣言すると、門はギギギと重々しい音を立てながら開き始める。目の前にもう一つの世界が広がる。そ子にどんな光景が広がっていようともう後戻りはできない。と言うより後戻りするつもりも無い。ただ一つ、生き返るために。
そうして誰も居なくなった白い空間。椅子や円卓、門も消え去り、まるで空中に浮かんでいるかのように神を自称する者だけが取り残されていた。神は大きくため息をつくと何も無いところにしゃがみ込む。
「はぁ、まこんなもんでいいでしょうかね。案外簡単にできるもんなんですねぇ、神様って。まぁ元々そうなんですけど……さてとこれから色々と準備しないとなぁ……面倒くさいこと任せるよな。あーーー休み欲しい。有給の実装はよ」
どこまでも白い部屋の中に自身を神と名乗る存在の愚痴は誰に届くはずも無く、やがて神の存在も白色に消えゆく。残されたのはどこまでも続いているように見える白い空間だけ。
初めての開合はこうして幕を閉じた。
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