第3話 私は欲張り! 夢は全部叶えるよ

「ところでさ、助産師はどうするの?」

「もちろんそっちも叶えるよ」


「両立出来るの?」

「絶対両立させてみせる」

「もし出来たら史上初なんじゃないの?」


「残念。助産師でAV女優は他にもいたの。それもかなり売れっ子のね。だから私がそうなれたら2人目かな」

「へー。知らなかった」


 私は勉強には自信がある。ここの所色々あり過ぎて、ほとんど受験勉強は出来なかったにもかかわらず、地元の大学の看護学部に現役で合格したのだ。


「助産師にはね、女子プロボクサーで世界チャンピオンになった人がいるんだ。私も負けてられないからね」

「そんなすごい人がいるんだ。なんか楓なら、AV女優との両立だってやれるような気がする」

「もちろんよ」


「わかった。俺応援するよ。これが実現したら楓はそれこそ『性の神様』だよな」


「いいじゃんそれ。絶対なるから。なってみせるよ」

「がんばれよ。そしたら俺、本気で君の夢を応援するよ。だって無敵のガールフレンドじゃん。俺も鼻が高いよ」

「バーカ」


 私はそれでもなお、元彼のタカヒロの事が忘れられなかった。吹っ切りたくて、思い出の場所である牧之原公園に智也と一緒に行った。夜景が綺麗な事で有名な超絶景の公園だ。


「本当は夜に来たかったけど。ここは私の思い出の場所なの。ここでファーストキスしたんだ」


「その相手の人って……タカヒロだよね?」


 私は黙って智也の言葉に耳を傾けた。


「妹の千早ちゃんから、タカヒロの事聞かされてた。ごめん今まで言わずに黙ってて。でも聞いて欲しい。もう彼はいないんだ。これからは俺の事を見て欲しい。俺が絶対君にタカヒロの事を忘れさせてやるから」


 タカヒロは、私を暴走車からかばって命を落としたのだ。やはり智也知ってたのか。


「彼が君の命の恩人だという事も聞いた。でも俺だっていざと言う時には必ず君の事を命がけで守る。約束する」

 

「ケンカも出来なそうなのに?」

「どんな事してでも追い払うよ」


 いつものかわいらしい智也じゃない。真剣そのものだ。

「彼が君の理想の男だって事も聞いた。俺が理想からは程遠い事は良く分かってる。でも俺にしか出来ない事だって沢山あるから」


(そんな事ないよ智也。あなたは私のタイプなんだから)


「君が寂しくて一人で眠れない時に腕枕をしてあげられる。ぬくもりが欲しい寒い日にはハグしてあげられる。愛の言葉が聞きたかったらいくらでも伝えてあげられる。熱いキスだって……それから……」


「もういいよ。智也。あなたの本気は良く分かった」


 私はクスっと笑って智也の目を見ながら言った。

「その気持ち、すごく嬉しいな。あなたに賭けてみたくなった。これからもよろしくね」


(智也は私の夢を全力で応援してくれるって言った。タカヒロだってそこまで言ってくれるか分からない。そろそろ前を向いて進んで行こう)


 私はただじっと、智也に寄り添っていた。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 次の第4話は、智也と楓が結婚。いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!

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