第4話 セックスは嫌いでも、子供は欲しい
私と智也は、その後結婚した。子供が欲しかったが、なんといってもセックスレスカップルである。さて、どうしたものか。
そんなある日、私は運命の出会いをする事となった。私と智也みたいなセックスレスカップルの人だ。原口翔と早紀夫婦である。
一体どこかと言えば「料理教室」だった。
私とそのセックスレスカップルの早紀は、精力のつく食べ物を相手に食べさせるという、食生活の改善で夜の生活を変えようと考えた。
似た境遇の二人は、すぐに意気投合した。
「ねぇ早紀さん、どんな食べ物を食べさせたら精力つくのかなあ」
「よく言われてるのがスッポンだけど、ちょっと料理しにくいよね」
「確かにね。
「いいんじゃない。調理し易いしね」
「こんなのどうかな? スパゲッティボンゴレってあるじゃん、あのアサリの代わりに牡蠣を入れるの」
「ナイスアイデア! あとはニンニクをマシマシにすればすごいの出来そう」
「それでいこう!」
「あとは食前にピスタチオと、オクラ入りのとろろを出せば完璧ね!」
「私達天才だよね!」
◇◇◇◇◇◇
早紀は、その日の晩ご飯で、早速「牡蠣入りボンゴレ・ニンニク増し」を作って出した。
「お~いいじゃんこれ。アサリよりも合うんじゃない?」
「でしょでしょ。これからは定期的にこれ食べよ。そしたらきっとセックス出来るようになるよ」
「そうだね。やっぱり子供欲しいし」
だが、結局それだけでは夜の生活を改善するには至らなかった。
やはり、重症の遅漏である翔は、早紀の中で達する事が出来ないのだ。
「困ったね。どうしようか?」
「そうだ、見せっこしてかなり高まってから入れればいいんだ」
「それいいかも」
翔と早紀は達する寸前で一つになった。
ついに、早紀の奥深くに、翔と早紀の希望が放たれたのだ。
しかし、これが上手くいったのは1回だけで、残念ながら妊娠する事は出来なかったのである。
その後は、入れる前に出てしまったり、なかなか上手い具合に早紀の奥深くまで翔の子種が達しなかったのだ。
そこで、場合によっては不妊治療もやむなしと判断し、早紀のかかりつけ医である鷺沼医師に相談した。
早紀は妊娠するのが難しい程、身体が衰弱していた。
鷺沼医師は不妊治療に明るい産婦人科の医師なのだ。
鷺沼医師は、翔と早紀に「シリンジ法」と呼ばれる方法を伝え、やってみてはどうかとすすめた。
シリンジ法とは、家庭内で男性がオナニーして採取した精子を、シリンジと呼ばれる針のない注射器のような器具を使って、女性が自ら腟内に注入する方法だ。
自宅でできる負担の少ない
妊娠するためには、排卵日の3日前から1日後までに毎日セックスしなければならない。しかし、忙しい現代人はなかなかそこまでの時間を確保するのが難しい。そこで、シリンジ法を使ってセックスしたのと同じ効果を求める。
シリンジ法は、まず事前に体を清潔にする必要がある。膣に注入するため菌が心配だからである。
次に男性がマスターベーションして、シャーレ等に射精を行う。
翔と早紀は、見せっこで精液を採取した。
その後、精液をシリンジで吸い上げる。精液は出してすぐはヌルヌルして吸い上げにくいため、しばらく放置してサラサラになるのを待つ。
最後に、シリンジをゆっくり膣内に挿入し精液を注入すれば良い。
「翔、恥ずかしいからあっち向いてて」
「ねぇ早紀、こんな時に不謹慎なんだけど、入れる所見せて」
「え~もう! やだ! 本当エッチなんだから~」
「ゴメンね。でも見たい」
「遊びじゃないんだからね!」
「お願いっ」
「しょうがないな~」
早紀は、翔の目の前でシリンジを中に……
「そんなに見ないで……恥ずかしい……」
激しい羞恥心で顔を赤らめながら……
そんな真剣な早紀を、いやらしい目で見つめる翔。何やってるんだか。
(うわ~ひとりエッチよりそそる……なんて刺激的な声とポーズなんだ。でもここで早紀を
シリンジ法は、翔や早紀のように、もともとセックスレスが常態であるカップルはもちろん、そうでないカップルでもとても使い勝手の良い手段であると言える。子作りのプレッシャーで不能になったりする場合もある。実は男性も意外とデリケートなのだ。
更に、不妊治療には頻繁な通院が必要となるが、これが難しい場合にはシリンジ法と併用する事も可能。
さて、いい事づくめに見えるシリンジ法であるが、欠点もある。
男性の精子の運動能力が低かったり、精子に異常がある場合には使えないのだ。
幸い、翔の精子は正常であった。
シリンジ法が功を奏し、ついに翔と早紀夫婦に子宝が授けられた。
◇◇◇◇◇◇
妊娠した早紀から、私に電話が来た。
「楓さん、私赤ちゃん出来たよ!」
「やったじゃん! おめでとう。私も嬉しいよ」私はまるで自分の事のように喜んだ。
「ありがとう」
「どうやったの。私結局智也に牡蠣入りボンゴレ食べさせたんだけど、全然ダメ」
「まずはね、ひとりエッチの見せっこして、高まってきてイキそうになってから入れたの」
「あーそれ良さそう」楓は、それなら智也との間で赤ちゃんを作る事は可能ではないかと思った。
「でもね、それってけっこう難しいんだ。入れる前に出ちゃったり」
「ありそうだね」
「だから、シリンジ法っていうのを使ったの。それでね……」
「知ってる。あれそんないいんだ」
私は助産師志望なので、シリンジ法の知識は持っていた。でも、まさか自分が使う事になるとは思ってもみなかった。
早紀は、私にシリンジ法の体験談を話した。
「わかった、やってみる」
私は、その日のうちに早速智也と一緒にシリンジ法を試してみた。
まずは見せっこで精液採取。
シリンジによる注入時は、私は早紀のように恥ずかしがり屋ではないため、そのまま智也の目の前で作業した。淡々としたものである。
でも、智也はよだれを垂らしそうな表情で見つめていた。
「キレイだよ楓。もっと良くみせて」
「しょうがないな~もう!」
私は見られるのが大好きなので、わざと見せつけてやった。
こうして、私達夫婦の元にも赤ちゃんがやって来る事になった。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第5話は、楓が早紀と一緒にマタニティビクスに。そこでなんとカトミナと知り合いになります。なんとなく百合しそうな感じ。どうなるのでしょうか? お楽しみに。
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