第15話 封印術師ギルドへ

 次の日、朝ごはんを食べて支度をしたら、まずは冒険者ギルドに向かう。

 まずは冒険者ギルドに行って、それから封印術師ギルドに行ったら良いかな。

 国からお家とか貰える事にはなったけれど、いつ手に入るか分からないからお仕事もしなきゃいけないと思うんだよね。でも、私が出来る依頼なんてあるのかなぁ。


「今日はまずは冒険者ギルドに行こうね」

(そうだな)

(昨日ギルマスが言ってましたね)


 今日もまおちゃんとがぶがぶさんを抱っこして、もふもふしながら歩く。冒険者ギルドに着いたら、すぐに職員さんがギルマスの部屋に通してくれた。人が多いからすぐに気が付いて貰えて助かった。


「ギルマス、おはようございます。昨日はありがとうございました」

「おう。昨日はお疲れさん。そこ座っててくれ」

「はい」


 ソファーに座ると、お茶を入れて持ってきてくれた。まおちゃんとがぶがぶさんは私の膝の上だ。


「国からの褒賞はもう少し待っててくれな。だが、あのまま宿に居てくれて大丈夫だからな」

「えっ、良いんですか?」

「ああ、もちろんだ。国からもそう言われているから気にするな」

「はい、ありがとうございます。とても助かります」

(ふむ、ユアを追放した奴らとは大違いという事だな)

(そうですね。泊まる所と食事があれば助かりますね)

「それと、今日は封印術師ギルドに行ってほしい。これは国と俺からの紹介状な。封印術師ギルドでは封印術を教えて欲しい。それは国からの依頼になるから、封印術師ギルドからの帰りに依頼達成の手続きをしてくれな」

「分かりました」


 ギルマスの部屋を後にして封印術師ギルドへ向かう。封印術師ギルドは冒険者ギルドから少し離れた場所にあるらしい。やっぱり封印術師だから、端っこに追いやられているんだろうか。


「国からの褒賞貰えるのに1か月くらい掛かるとなると、何か依頼受けたりして稼がないとだね」

(まあ、我らがいるからな)

(そうですね。とりあえずクマを封印しないとですね)

「とりあえず今日は封印術を教えるんだけど、形が似ているぬいぐるみなら封印出来るんだよね?」

(ああ、そうだな)

(形が似ていれば出来ますね)


 二人が頷いてくれるので、形が似ていればぬいぐるみで封印出来るんだろう。ちゃんと封印出来たら良いんだけど、どうかなぁ。ちょっとドキドキするね。


 冒険者ギルドから少し離れた西門の近くに封印術師ギルドがあった。本当に、端の方にあるんだね。ドアをそっと開けてみると、誰もいない。


「あの、こんにちは。どなたかいませんか~?」


 何回か声を掛けると、2階からドタドタと音が聞こえた。誰かいるみたいで良かった。慌てて降りてきたのが女性でびっくりした。


「お待たせしてすみませんっ。えっと、ユアさんですか?」

「はい。ユアと言います。こっちはまおちゃんでこっちはがぶがぶさんです」

「まあまあまあっ! その子達が噂の封印された子達ですかっ!!!」


(圧が凄い……)


 この女性はコリンナさんと言って、エメラルドグリーンの髪を一つに纏めて、アイスブルーの目がとても綺麗な40代くらいの女性だ。


 まおちゃんとがぶがぶさんをじーっと見つめていると、コリンナさんの目がきらきらし出した。


「ユアさんっ、触っても良いかしら?」

「えっと、ちょっと待ってくださいね。まおちゃん、がぶがぶさんどうかな?」

(まあ、ユアにやさしくしてくれそうだから良いぞ)

(魔王様っ!?)

(我を触らせるだけでユアにやさしくしてくれるなら構わん)

(くっ……で、では私も我慢しましょう)


 二人とも触っても良さそうだ。そう伝えると、コリンナさんはそっとまおちゃんを持ち上げた。コリンナさんは私が二人を大事にしているのが伝わっているのか、宝物にさわるように大事に触れてくれる。


(うん、この人は信用出来そう)


「ユアさん。封印術を教えて頂きたいのですが、いかがでしょう?」

「はい、大丈夫です。とりあえず、書状を預かっているのでお渡ししても宜しいですか?」

「あっ、分かりました。って多くないですか!?」


 確かに、ショコラの街のギルマスに王都のギルマス、さらには国王様からの書状まである。いきなりこんなに渡されたら怖すぎるよね。コリンナさんの顔色もあまりよろしくない。


「あっ! 国王陛下からも封印術を教えて貰って欲しいと書いてありますね」


 コリンナさんは先ほどの青褪めた顔から一気に頬がピンクになって嬉しそうだ。ちゃんと封印出来るかが心配だけど、まおちゃん達が出来るというからきっと大丈夫だよね。


「ユアさん、今日からよろしくお願いしますね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

「まずは部屋へ行きましょうか」


 コリンナさんに着いて行くと、2階にある部屋に案内された。部屋には沢山の本が置いてあって、すべて封印術に関する本みたいだ。いつか読んでみたいな。

 ソファーに座っていると、コリンナさんがお茶を入れてきてくれた。この封印術師ギルドには、コリンナさん以外いないんだそう。確かに封印出来ない封印術師ギルドに、そんなに人数必要ないよね。


「では、封印術について聞いても良いかしら?」

「まおちゃん、がぶがぶさん。間違えていたら教えてね?」

(うむ)

(分かりました)


 まおちゃんとがぶがぶさんが頷いてくれたので話しを始めよう。


「まずは封印したい子の形に近いぬいぐるみを作ります」

「ぬいぐるみは必需品なのね」

「はい」

(うむ。それがないと封印出来んな)

(そうですね)


 そこまで言ってから、どうやって封印しているのか私自身良く分かっていない。ぬいぐるみを持っていたらいつの間にか封印していたんだよね。


「それで、ぬいぐるみをどうしたら良いのかしら?」

「えーっと、私も良く分かってないんですけど。ぬいぐるみを持っていたら、いつの間にか封印出来ていたんですよね」

(魔物の前にぬいぐるみを出せば大丈夫だぞ)

「あら、そうなのね。王都の近くにいる魔物に近いぬいぐるみを作ってみたら良いわね」

「王都の周りにはどんな魔物がいるんですか?」

「そうね~。王都の近くだったら、一角ウサギとか食人花と北の森に行くとウルフとゴブリンがいるわね」


 頭の中で思い浮かべてみる。一角ウサギだったら、もふもふの毛玉に耳を付けたら可愛いかも。花は、どんなのがかわいいかなぁ。ひまわりに顔を付けちゃう?

 ウルフは犬だよね! ゴブリンは小人さんなら可愛いかも?


「それは可愛いですね~」

「えっ!? か、可愛い……かしら?」

「だって、ウサギと花と犬に小人さんですよ!」

「えぇぇ!?」

((ユア?))

「どれから作りましょうか~」

(ユア、大雑把すぎないか?)

(ちょっと可哀そうになってきましたね)


 頭の中でぬいぐるみを思い浮かべてニコニコしていたら、みんなの動きが止まっていた。どうしたんだろうときょろきょろしてしまった。


「えっと、ユア。似てなくて大丈夫なの?」

「えっ? でも、そんな感じですよね?」

「……」

((……))

(がぶ、似てるか?)

(えっ……いや……あの……)

(似てないなら、似てないとはっきり言え!)

(ユアに泣かれますよ?)

(い、いや、だが……なあ?)


 なにから作ったら良いかな~と考えていたら、動きの止まっていたみんなが動き出した。どうしたんだろうね?


「や、やはり、一角ウサギからにしましょうか」

「そうですね~。ぬいぐるみはどうしますか?」

「もちろん私が作るわっ!」

「はい。では、手芸屋さんへ行きましょう~!」

「そうね。材料がないと作れないわね。一緒に選んで貰える?」

「はい、もちろんです」


 コリンナさんと一緒に手芸屋さんへ向かう事になった。私も行きたかったから、ちょうどよかったね。

 コリンナさんは、今まで使えなかった封印術が使えるかもしれないってとてもご機嫌だ。私もウサギさんを封印しようと思ったら、まおちゃんとがぶがぶさんに、全力で止められた。ものすごい勢いで首を振ってたよ。

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