第11話 王都へ向けて出発!

 朝起きて、まおちゃんのふわふわ枕に思わず二度寝をしそうになった。ふわふわの生地で作ってよかったなぁ。

 がぶがぶさんもふわふわで抱き心地が良い。しかもお口に手を突っ込むことも出来ちゃうんだよ。さすがにちょっと可哀そうで出来ないけど。


 今日はとりあえず、王都へ向かおう。王都までは1日くらいで着くらしいから、食材もあるし何とかなるかな。


「うーん、私の足だと1日半って感じかなぁ」

(そうであろうな)

(そうですね)

「野営グッズ持ってないけど、大丈夫かなぁ?」

(我がいるから問題なかろう)

(毛布くらいはいるのではないですか?)

(それは確かにそうだな! ユアが病気にでもなったら大変だからな)

「何か必要な物ありそうだね。お買い物してから向かおうか」

(うむ、それが良いと思うぞ)

(ええ)


 雑貨屋さんへ行って野営に必要な物を見ていると、二人が毛布の所でこっちを振り返っている。これが必要って事なんだろうな。


「これ買った方が良いのかな?」

(うむ!)

(必需品です!)


 まおちゃんとがぶがぶさんがそうだと言わんばかりに頷くので、毛布を買ってまおちゃんに仕舞っておいて貰う。

 そのまま北門で手続きをしてから外に出る。ここから次の王都までは平原が多いから、見通しが良くてとても助かる。


 まおちゃんはぽよぽよと跳ねて歩いてる。がぶがぶさんは私がむぎゅっともふっと抱っこしてる。うん、気持ち良い。

 少し歩いていると、くるりと振り向いたまおちゃんはがぶがぶさんに何か話しているみたいだ。がぶがぶさんが私の腕の中からぴょんと飛び降りると、まおちゃんの頭の上にぴょこんと乗っかっている。


(ユアが疲れるであろう。我の上に乗せてやるから降りると良い)

(ま、魔王様、正気ですか!?)

(さっさとしろ!)

(はっ!)

「ふふっ、二人とも仲良しさんだね~」


 がぶがぶさんを頭に乗せてぽよぽよしているまおちゃんが、とってもとっても可愛くて癒されます。いくらでも歩いていられるくらい可愛いです。

 今日は平原でそんなに木が多くないから、歩きやすいしお天気も良くて気持ちがいい。途中で何回も休憩しながら歩いていると、夕方になってきた。そろそろ野営の準備をしないといけないかな。


「そろそろ野営の準備しようか?」

(そうだな)

「でも、何をすればいいのかな? 木を集める、にしても木がないよね」

(そうですね。ここは平原ですから、特にやる事はないかもしれませんね)

(寒かったら我が魔法で温めてやれるぞ)

「あっ! コンロ買い忘れた……ごめんね、お夕飯作れないや」

(なにっ!?)

(ええっ!?)


 すごくショックを受けたようなまおちゃんとがぶがぶさんに、思わず苦笑いしてしまう。

 途中に一応休憩所があるらしいのだけど、私の足ではそこまで辿り着かなかったのだ。だから、ここは平原のど真ん中。木もそんなに沢山生えていないから、焚火をするための木がないんだよね。


「うーん、火もお水もちゃんと準備しておかなきゃダメだったね。二人とも、ごめんね」


 二人を抱きしめて謝る。何も準備出来ていなかった自分にがっかりしてしょんぼりしてしまう。むぎゅっと抱きしめたまおちゃんとがぶがぶさんが、腕の中でふるふるっと動いた。


(なんだ、ユアはそんな事でしょげてるのか)

(水なら私が出すから、何も問題ありませんよ)

(火は我に任せておけ。魔王の我に出来ぬことはないぞ)


 がぶがぶさんは水の玉を自分の周りにふよふよと浮かばせている。まおちゃんはフライパンを取り出すと、お腹に乗せた。


「がぶがぶさんはお水を出せるの!? すごいね~」


 ちょっと得意気な顔をしている気がして、思わずなでなでしてしまう。まおちゃんは、フライパンをお腹に乗せて何をしているんだろうか?


「まおちゃんは、何をしているの?」

(これでフライパンを使えるぞ)

(魔王様っ、身体が焦げてますよっ!?)

(なにっ!?)

「わわっ、まおちゃん!!」


 まおちゃんの身体から黒い煙が出てて驚いた。どうしたら良いのか慌てていたら、がぶがぶさんがまおちゃんにお水を掛けてくれた。


「まおちゃん、大丈夫!? がぶがぶさんもありがとうね」


 まおちゃんを抱き上げてみると、お腹の部分が焦げてしまっている。綿も見えかけていて、あまりの痛々しさにぽろぽろと涙が零れる。


「まおちゃん、ごめんね。ありがとう。私の為にフライパンを温めてくれようとしたんだよね?」

(うむ。失敗してちょっと焦げたがな)

(ちょっと、ですか?)

「痛いよね、どうしよう」

(我はスライムだから痛くないのだがな。だが、ユアを泣かせるのは嫌だな)

(そうですね。ユアには笑っていてほしいですね)

(ユア、少し魔力を貰うぞ!)


 涙が止まらない私に、まおちゃんはぴとっとくっついてくれた。ただ、私の魔力が吸われている気がする。


「まおちゃん、どうしたの?」

(我に任せておけ。ユアの魔力も使えば傷など!)


 私の魔力を使ってまおちゃんが何かをやりたいらしいから、好きにさせてあげよう。私の魔力がぐんぐん減っていく。

 少しすると、私の魔力が吸われなくなった。まおちゃんがぽよんと動いたと思ったら、一瞬の強い光にびっくりして目を瞑ってしまった。


 目を開けると、そこには傷がすっかりなくなったまおちゃんがいた。しかも、前よりもっとふわっふわのもちもちのまおちゃんにグレードアップしている。


「まおちゃん、傷が治ってる!?」

(うむ、ユアの魔力と我の魔法を使えば簡単な事よ)

(さすが魔王様です)

「良かったぁ」


 まおちゃんが治って元気になって、とても安心してむぎゅっと抱きしめる。うん、物凄く気持ちよくなってる。


「まおちゃん。なんだか触り心地がすごいアップしてない?」

(多分、ユアの魔力を貰ったからであろうな)

(魔王様ばかりむぎゅっとされててずるいですよ)

(ふふん)


 そんなことをしていたら、辺りは真っ暗になってしまった。結局お夕飯は諦めて、クッキーを少し食べてそのまま寝る事にした。座って寝ようと思ったら、まおちゃんがぽよぽよと跳ねて私を呼んでいるみたい。


「まおちゃん、どうしたの?」

(我はこんな事が出来るようになったのだ!)


 目の前のまおちゃんがどんどん膨らんで大きくなっていく。破裂しちゃわないか心配になるくらいだ。私が抱っこ出来るくらいの大きさだったのに、今では私の身長くらい大きくなっている。

 そのままぽよんと横になると、自分の身体をぽふぽふっとした。まおちゃんはベッドになってくれるみたい。恐る恐るまおちゃんの上にのると、ふわっふわでとても気持ちがいい。


「ふふっ。気持ちいい~」


 思わずまおちゃんにすりすりと頬ずりしてしまうくらいに気持ちがいい。大きなまおちゃんベッドは、ウォーターベッドみたいなふよふよ感ともふもふの毛布みたいな触り心地で幸せすぎる。

 さらに近くに来たがぶがぶさんを抱っこしたら、それだけですぐに目も明けていられないくらいの眠気が襲ってきた。


(がぶ、魔物が来たら頼むぞ)

(お任せを!)

(後、ユアに毛布を掛けてやれ)

(そうですね)

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