第12話 王都へ到着

 朝起きると、まおちゃんベッドの周りにはまたドロップ品の山が出来ている。夜の間にこんなに襲われたんだろうか……。


「まおちゃん、がぶがぶさんおはよう。昨日あれからまた魔物が来たの?」

(ああ。がぶだけで十分だったがな)

(そうですね。弱かったですからね)

「ケガしてない? 大丈夫?」


 そう聞くと、二人は大丈夫と元気よく跳ねてくれた。私が熟睡している間に戦ってくれたり守ってくれた二人にお礼を言ってむぎゅっと抱きしめる。


「二人とも、ありがとう!」

(うむ)

(ユアがきちんと眠れて良かったですよ)


 朝ごはんにパンを食べて、がぶがぶさんが出してくれたお水を飲む。

 今日は街に着いたらコンロとか買っておかないとダメかな。王都に着いても、その先がどうなるか分からないしね。二人には沢山美味しいもの食べてほしいから、出先でもお料理とおやつは作れるようにしておきたいよね。


「よし、王都に向けて出発しようか」

(よし、行くぞ!)

(魔王様、お願いしますね)

(仕方ない、早く来い)


 今日もがぶがぶさんはまおちゃんの頭の上に乗っている。後ろから見てとても可愛くて仕方ない。ぬいぐるみがぬいぐるみを運んでいる可愛い光景に、にこにこ笑顔のまま歩いて行く。

 本当に二人がいてくれてよかった。そういえば、封印術ってどんな魔物も封印出来るのかな?


「二人は封印術の事知ってるの?」

(うむ、知ってるぞ)

(ええ、大体の事は知ってますね)

「そこら辺にいる魔物も封印出来るのかな?」

(む? 出来るが、ダメだぞ!)

(そうですね。我々とそこらの魔物を一緒にして貰っては困りますね)


 ちょっと聞いてみただけなんだけど、ダメって言われているみたい。出来ないってことなのかなぁ。封印術ちょっと不便なのかもしれないね。

 色々な魔物を封印出来ると封印術師さん達も助かるのかと思ったんだけどね。


「えっと、出来ないとかダメってことかな? 他に何が封印出来るのか知りたかったんだよね~」

(だったら、4天王の残り3人を封印するのが良いだろうな)

(そうですね。でも、そうしたらユアが魔王ってことになるのですかね?)

(なにっ!? だが、我はユアといる方が楽しくて良いぞ)

(確かに、ユアの側はとても温かくて幸せな気分になりますからね)

「次は何のぬいぐるみを作ろうかなぁ」


 そう呟くと、まおちゃんががぶがぶさんを下してふよふよと形を変えていく。身体は4本足の動物っぽい感じ。頭には丸っこいお耳が付いている。この可愛らしいフォルムはくま?


「まおちゃん、器用だね。その形はくま?」

(それだ!)

(それです!)


 次はくまのぬいぐるみを作ればいいらしい。くまなら日本に居るときに作ったことがあるから大丈夫だね。王都に着いたら、触り心地の良い生地を買おう。王都の手芸屋さんは、ショコラの街よりも大きいらしいからね。

 どんなくまちゃんにしようか、悩んじゃうなぁ。まおちゃんはピンク、がぶがぶさんは青だから……白が良さそうだけど、水色の子も可愛くて好きなんだよね。どっちの色の生地があるかで決めようかな。


「ふふっ。新しい子を作るの楽しみだなぁ」

(うむ。あやつならもしかしたら話が出来るかもしれんしな)

(魔王様、あの四天王のくまは超が付くほどの無口ですが……?)

(あっ! ……まあなんとかなるだろ)


 日本みたいにふわっふわのファー素材が売っていたら良いんだけど、この世界ではどうなんだろう。一応まおちゃんを作った生地みたいにふわふわの素材もあるから、あると信じたい!

 やっぱりくまちゃんを作るには、もふもふのふわっふわの生地で作りたいよね~。


 新しく作る子を考えていると、あっという間に時間が過ぎて、王都に到着した。門でギルドカードを見せて手続きをして街の中に入る。街の中は危ないので、二人を抱っこして歩く。ちょっと大きいから、すれ違う人達が不思議そうな顔をして私を見ていく。


 そういえば、港町ではゆっくり出来なくて海鮮をほとんど食べられなくて残念だった。そのうちゆっくり行ってみたいけど、どうなるか分からないな。


 街の中を歩いていると、冒険者ギルドの近くにある屋台が沢山ある広場が見えた。美味しそうな香りも漂ってきて、お腹が空いてしまう。


「二人とも、あそこに屋台があるよ。おいしいものあるか行ってみようか」

(行くぞ!)

(行きますっ!)


 まおちゃんもがぶがぶさんも行きたそうなので、色々食べちゃおうかな。屋台に近づいた時に大変な事に気が付いた。


「大変!」

(どうした!?)

(どうしました?)

「二人を抱っこしてたら、食べ物持てない」

(我がストレージに入れるから構わんぞ)


 まおちゃんにほっぺたをつんつんされた。まおちゃんを見たら、お口をあーんと開けたので、まおちゃんが食べ物を仕舞ってくれるらしい。いつも荷物をぱくっと持ってくれる、頼もしいまおちゃんです。


「ありがとうね。美味しそうなものが沢山あるから、少しずつ食べてみようね」

(そいつは良いな)

(楽しみですね)


 色々な屋台を回って、次から次へと購入してはまおちゃんにぱくっと持ってもらう。どの屋台を見ても美味しそうだし、二人とも何を見ても目を輝かせるので、食べきれるか分からない量を買ってしまった気がする。


「多かったら後で食べようね」

(食べられると思うがな)

(そうですね、あれくらいなら余裕ですね)


 ジュースも買ってから、近くのテーブルに移動する。二人もテーブルに乗せてあげて、一緒に食べよう。

 二人とも自分で食べられない気がするから、餌付けのような感じでお口に入れてあげる。うん、可愛い。まおちゃんは自分で手を出して使っていたけれど、大変そうだもんね。


「どれも美味しいね~」

(うむ、どれも旨いぞ。ユア、もっとだ!)

(本当に美味しいですね。私ももっと食べたいです)


 二人が次々にお口を開けるのがかわいくて、ついつい次から次へ食べさせちゃう。これだけで癒される。


「ふふっ、まだ食べられるの?」

(もちろんだ!)

 それにしても、二人ともよく食べる。買いすぎたかなぁと思っていたのが、最終的には全部食べ終わってしまった。今度ごはんを作るときには沢山作るようにしよう。


「よし、食べたことだし冒険者ギルドに行こうか」

(そうだな)

(そうですね、買い取りして貰えないと困りますからね)


 お片づけを済ませたら、まおちゃんとがぶがぶさんを抱っこして冒険者ギルドに向かおう。

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