第10話 冒険者ギルドに行こう
まおちゃんとがぶがぶさんと一緒に、ショコラの港町へ帰る。門で手続きをして貰い中に入って、まずは冒険者ギルドへ向かおう。冒険者ギルドに入って、買い取りカウンターへ向かう。
「こんにちは、買い取りをお願いします」
「あいよ。ここの台の上に出してくれるか?」
(そんな小さい台じゃ置ききれないぞ)
「はい。まおちゃん、お願い出来る?」
(ああ。良いが、知らんぞ?)
まおちゃんがお口を開けて、次から次へ台の上にドロップ品を出していく。さすがに全部乗り切らなくて台から落ちてしまう。
「ちょ、ちょっとまってくれっ! 別の所に案内するから、一度仕舞ってくれるか?」
「まおちゃん、ごめんね。お願い出来る?」
(うむ、やっぱりな)
(魔王様、さすがに多いですね)
(倒しまくったからな)
冒険者ギルドの職員さんに着いて行くと、地下の倉庫に着いた。そこにまおちゃんに出してもらう……でも、一向に終わらない。次々にまおちゃんのお口からドロップ品が次々に出てきて倉庫の床に置かれていく。
「なんて量だ。お前さんが倒したのか?」
「いえ、この子達が倒してくれました」
「そうか。お前さんの職業を聞いても良いか?」
「え、えっと……」
「あー、言いにくかったら良いぞ」
「はい、すみません」
職員さんは、私の頭をなでなでして悪かったなと謝ってくれた。封印術師と口にするのは、やっぱり怖かった。いくら前世の記憶を思い出したとしても、追放されるくらいなんだから言ったらまずいだろう。
「なんだこりゃ? 嬢ちゃん、これは何のドロップだ?」
「えっと、すみません、よく分からなくて……この子達の倒すペースが速すぎて何が何やら」
「そんなにこの可愛いのは強いのかぁ。悪いがギルマスを呼んでくるから、ちょっと待っててくれるか?」
「はい、わかりました」
困り顔の職員さんは、ギルマスを呼びに行った。私はまおちゃんとがぶがぶさんと一緒に椅子に座って待つことにする。
「二人とも強かったもんね。あれは何のドロップだったんだろうね~」
(さっきのはボスのドロップだから、人間共に分かるかどうか)
(あそこのダンジョンは未踏破ですからね)
「二人とお話出来たら分かるんだけどね~」
(確かに話が通じないのはもどかしいな)
(そうですね。おやつの催促はしたいですね)
(そいつは良いな! ユアが言うには、他にもお菓子があるみたいだからな)
(そうなんですか!? ユアにどう伝えれば……)
まおちゃんとがぶがぶさんがお話しているみたいに、頷いたりぽよぽよしたりしている。あまりにも可愛くて、にこにこと眺めてしまう。
30分くらい待っていると、バタン! と勢いよくドアが開いた。さっきの職員さんと、物凄くガタイの良い50代くらいの男の人が一緒に入ってきた。
「私はこの街の冒険者ギルドのギルマスだ。お前さんがこの見たことのないドロップ品を持ってきたのか?」
「見たこともない、ですか? えっと、この子が出したアイテムでしたら多分そうですね」
どのドロップ品が私のなんて分からないから、そういうとギルマスは一緒に居た買い取りカウンターの職員さんを見た。職員さんが頷くのを見たギルマスは、私の方に向き直ると説明をしてくれた。
「このドロップ品は一体どこで手に入れたんだ?」
「えっと、今日行ってきたのは海へ行ったのと、そのあとはダンジョン? だと思います。まおちゃん合ってる?」
(うむ、合ってるぞ)
まおちゃんがそうだと言うようにぽよんと跳ねたので、そう伝えるとギルマスは頭を抱えた。そんなに困る事だったのかなぁ。
「海なんて危ないところに行ったらダメだろう!」
「えっ? 危ない、ですか?」
「今、海には危険なサメが出るから近づくなと言われなかったか?」
「えーっと、忘れてました」
「はぁ。無事だったから良かったものの、死んだら元も子もないだろう!」
「はい、すみませんでした」
そういえば、サメが出て困っているって言ってたんだよね。まおちゃんが平気そうに進んで行くから、忘れてしまっていた。それと、そのサメが出るからダンジョンへも入れないのだそう。
「えっと、普通に入れましたよ?」
「サメに襲われなかったのか?」
(そのサメはがぶだからな)
まおちゃんがぽよんと跳ねてがぶがぶさんの上に乗った。そういえば、がぶがぶさんを封印したの海だったよね。
「まおちゃん、もしかして暴れていたサメってがぶがぶさんのこと?」
(ユア、今更か? 本当に我がいないと危ないな)
(気が付いていなかったのですか……)
「む、がぶがぶさんとは?」
「えっと、この子です。海で暴れていたサメはこのぬいぐるみの中に入ってます」
「はぁっ!? どういうことだっ!?」
これは封印術師ってことを伝えないとダメなやつだよね。ちょっと怖いけれど、この街はすぐに出発しちゃえば大丈夫……かなぁ。
「あのっ、明日にでもこの街を出発するので、それまで秘密にして頂いても良いですか?」
「む? そんな大事な事なのか。ふむ、まあ良いだろう」
(何かあったら我々が守るから大丈夫だぞ)
「えっと、私の職業は、封印術師なんです。それでこの子達を封印したんです」
「封印術師だとっ!?」
(ユアに何かするつもりですか!)
(我がそんな事させないがな!)
ギルマスが動いた瞬間に、私の前にまおちゃんとがぶがぶさんが守るように出てきてくれた。
「すまん、あまりにも驚いたものでな。まさか、あの誰も使えないとされていた封印術を使えるとは……そっちの丸いのは何を封印したのだ?」
「こっちは多分スライムです」
「なるほど、スライムか。だが、ダンジョンで倒せるほど強いのか?」
「それはもうとっても!」
(我は魔王だからなっ!)
まおちゃんとがぶがぶさんの強さを説明すると、すごく驚いた顔をしていた。確かに、スライムって弱いとされているよね。なんでまおちゃんは強いんだろうね?
しかし、封印術師と伝えてもすぐに追い出される事がなくてホッとした。親に追放されるくらいだから、街からも追放されるかもと怖かったんだよね。いくら前世を思い出した後でも、怖いものは怖い。
「それで、ダンジョンへ行って倒したのもこの2匹なんだな」
「はい」
「どんな魔物がいたか分かるか?」
「すみません、全然分からないです」
そのあとの説明が、とてもとても大変だった。だって、私には何を倒したのかよく分からないし、二人とお話が出来ないから詳しいことが何も分からないんだよね。
ギルマスは何階まであって、どんな魔物がいるかとか色々情報を知りたかったみたいだ。だけど、私はがぶがぶさんの背中に乗っていたし、二人の倒してドロップ品を回収する速度が速すぎて全然ついていけなかったんだよね。
買い取りして貰うために出したドロップ品はほとんどが買い取りして貰えないで終わった。王都のギルドに着いたら買い取ってもらえるかもしれないから、そっちで買い取ってもらうことになるみたいだ。
ただ、ほとんど買い取ってもらえなかったとは言っても、最初持っていたお金よりも遥かに多い。このお金だけで、王都まで十分行けちゃうね。
「王都のギルマスに手紙を書くから、それを持って行ってもらえるか?」
「はい、分かりました」
「それと、王都に封印術師ギルド……というか封印術を研究している者がいるから、そちらにも行って貰えるか?」
「封印術を研究している方がいるんですか!? ぜひ、お会いしたいです!」
「ああ、そっちにも手紙を書いておく」
「はい、ありがとうございます!」
「それじゃ、王都まで頼んだぞ。その2匹が強いから心配ないだろうが、気を付けて行くんだぞ」
「はいっ!」
封印術師ってわかっても心配してくれるギルマスに、ちょっと心が温かくなった。封印術師と分かっても、全然嫌な顔しなかったもんね。
少し待って、ギルマスからの手紙を受け取って冒険者ギルドを出る。今日は野宿になるかもと思っていたけれど、宿に泊まれる事になった。
宿で1泊分の手続きをして貰って、ごはんを食べて部屋に入る。今日もまおちゃんがクリーン魔法を使って綺麗にしてくれた。
ベッドに入ってまおちゃんとがぶがぶさんをむぎゅっとする。少しするとまおちゃんは私の頭の下に潜り込んだ。枕になってくれるみたい。
「ふふっ。まおちゃん枕気持ち良い。でも重くないの?」
(問題ない。ユアはゆっくりと休むと良い)
「えへへ、ありがとうね。がぶがぶさんはむぎゅってしても良い?」
(ええ、もちろん。ユアにむぎゅっとされるのは気持ち良いですからね)
「二人とも今日はありがとう。おかげで野宿じゃなくなったよ。私が野宿って言っていたから、きっと二人は頑張ってくれたんだよね、ありがとう!」
(ばれていたか)
(ユアの事は魔王様と私でお守りします)
まおちゃんを枕にして、がぶがぶさんをむぎゅっと抱っこしたらとても安心出来てすぐに眠ってしまった。
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