第9話 海底ダンジョン
まおちゃんに着いていくと、大きな扉があった。ここは何だろう?
(よし、行くぞ!)
「えっ、ここ開けるの?」
そっと大きな扉に手を置いて押そうとしたら、コロンと転んでしまった。いつの間にか扉の中に入ってしまったみたいだ。なんでか良く分からないけれど、触るだけで良かったのかもしれない
「これ、海の中? あれっ、でも息が出来る?」
(ダンジョンの中だからな)
扉の中は、白い石造りのとても広い部屋に、水みたいに青いきらめきが揺れている。海の中から上を見上げているみたいでとても綺麗だ。
「すごい綺麗だね」
がぶがぶさんも私の腕の中から出て、海の中を泳いでいるみたいだ。でも、息が出来るから海の中じゃないんだよね?
「がぶがぶさん、空を飛べちゃうの?」
(いえ、ここは海底ダンジョンなので、海の中と同じで泳げるんですよ)
会話が出来ないから詳しいことは分からないけれど、まおちゃんとがぶがぶさんの様子を見ていると泳ぐことが出来るみたいだね。やっぱり海の中みたいだからなのかな?
まおちゃんは、ぽよんと跳ねないですいーっと泳いでいるみたい。うん、可愛い。
しかしここは何なんだろうね?
よく分からないけれど、まおちゃんとがぶがぶさんに着いて歩いて行く。歩いていると、魚が泳いでいるのが見えた。
「あっ、お魚いるね」
(ユア。あれは人を食べるぞ)
(あまり前に出ると危ないですよ)
(我ら二人いたら怖い物などないがな)
(まあ、確かにそうですね)
近づいていくと魚の大きさが分かって怖くなった。大人の男性よりも大きくて、眼光鋭く歯もギザギザで、嚙み千切られそうでかなり凶悪な見た目だ。
「うわぁ、大きいし怖いね……」
(がぶ、さっさと倒してしまえ!)
(はっ! ってがぶって何ですか、魔王様!?)
(おぬしはがぶがぶであろう)
(がぶがぶさんです!)
(ふんっ)
がぶがぶさんが魔法を使ったのか、目の前に居た大きな魚はドロップ品を落として消えた。ドロップ品は魚の切り身が沢山と、綺麗な水色の魔石だった。
「わっ、すごいっ! がぶがぶさん、強いね~。でも今のって魔物だったの?」
(うむ。というか我の方が強いのだぞ!)
(ふふっ。ですが、倒したのは私ですからね)
(よし、我も倒すぞ!)
それから、まおちゃんとがぶがぶさんは競うようにして魔物を倒していく。なんか二人して次々に魔物を倒しているけど、そのたびにどうだ! って顔をして私を見るの、可愛すぎでしょ! あまりの可愛さにきゅんきゅんしちゃう。
(うーむ。このままでは、海底ダンジョンを攻略するまでにユアが疲れてしまうな。がぶ、ユアを背中に乗せられるか?)
(はっ!)
「きゃっ!」
突然後ろから、がぶがぶさんが激突してきた。そのまま背中に乗せられて海の中を泳いでいるようになった。ただ、がぶがぶさんが小さいから、ちょっと可哀そうな気がして仕方がない。
「がぶがぶさん、重くない? 大丈夫?」
(ユアくらいなら全然問題ないですよ)
がぶがぶさんは、そのまま私を乗せたままスイスイと空中を泳いでいる。まおちゃんもがぶがぶさんと一緒に泳いでいる。スライムなのに泳げるんだね、不思議だ。
私を乗せてスイスイと泳ぐがぶがぶさんと、その横をスイスイと進みながら、さくさくと魔物を倒していっている。
「うわぁ、二人ともすごいねぇ」
(我だからな!)
(私は海の覇者ですからね!)
(我は魔王だがな!)
(魔王様、張り合わないでください)
なぜかこの巨大な部屋に階段があって、二人とも魔物を倒しながらさくさくと進んで降りていく。一体どこに向かっているのだろうか?
しかも、二人が倒した魔物のドロップ品はまおちゃんが瞬時に仕舞っている。連携が素晴らしくて、次の階へ行くまでに5分と掛からずに進んでいる。
「ところで、二人ともどこに向かっているの?」
(それはもちろん、海底ダンジョンのボスだな)
(さくっと倒してきましょう)
「二人がわかっているなら、お任せして大丈夫なのかな?」
(うむ、任せておけ)
(もちろんです)
二人がやる気満々で頷いているので、お任せしておこう。なんだかよく分からないけれど、二人とも楽しそうだから良いよね。
がぶがぶさんの背中に乗って1時間くらい。次々に魔物を倒しているんだけど、なんの魔物を倒しているのか分からないくらい二人とも早い。
(よし、次がラスボスだな)
(そうですね。以外と時間掛かりましたね)
(うむ、そうだな)
階段を降りると、なんだか巨大な魔物がいた。あまりの大きさに怖くてがぶがぶさんにしがみついた。
(ユア、大丈夫だ。我がすぐに倒してやるぞ!)
ぎゅっとしがみついていると、私の背中でぽよんとまおちゃんが跳ねた。そっと顔を上げてみると、さっき居た巨大な魔物は跡形もなく消えてきた。
「あれ、さっきの魔物は?」
(もちろん倒したぞ)
(もういないから大丈夫ですよ)
「二人が倒したの? 本当にすごいね~!」
(我だからな!)
(でも、ユアは見てませんでしたけどね)
(何っ!?)
「二人ともすっごく強いんだね!」
がぶがぶさんの背中から降りると、まおちゃんがお口を開けて私の目の前に山のようなアイテムを出した。
「えぇぇぇ!? 何これっ!?」
(ここで取れたもの全部だぞ。これを売ればユアはお金に困らぬであろう?)
(そうですね)
「えっと、もしかしてこれ、全部ドロップ品なの?」
(うむ)
(ええ)
「あっ! もしかして……私がお金がないって言っていたから?」
そうだと言うようにまおちゃんが跳ねた。私がお金に困っていたからこんなに沢山戦ってくれたんだ。嬉しくなってまおちゃんとがぶがぶさんを抱きしめてお礼を言った。
「でも、私が使って良いの?」
(うむ、もちろんだ!)
(もちろんです!)
二人はすぐにそうだと言うように返してくれた。私の事を考えてくれたのがとても嬉しい。
「ありがとう! よし、二人ともクッキーを食べてお茶にしようか?」
(食べるぞ!)
(くっきー?)
(ユアの作ったクッキーはとても旨いのだ! がぶも食べてみると良いぞ)
(美味しいっ!)
(やはりユアのクッキーは旨いな!)
お茶をしながら、まおちゃんとがぶがぶさんに不思議に思っていた事を色々聞いてみた。まおちゃんとがぶがぶさんの反応から、ここはダンジョンだったらしい。そして、さっきの巨大な魔物はここのボスだったみたい。
ダンジョンも制覇出来るまおちゃんとがぶがぶさんって、実は物凄くすごい子なのかな。でも、確かにがぶがぶさんは巨大なサメだった。でも、そんなに強いのに封印出来てしまったことにびっくりだ。
「二人は強いのに……本当に私と一緒に居て良いの?」
(うむ、もちろんだ!)
(もちろんです)
ちょっとドキドキしながら聞いてみたけれど、二人とも即答で返してくれた。まおちゃんはぽよんと跳ねて、がぶがぶさんは上下に顔をこくんと頷いてくれた。
「えへへ。二人ともありがとう!」
(ずっと一緒にいてやるから、安心すると良い)
(そうですね)
ありがとうのむぎゅーと、もふもふすりすりもちゃんとしておきました。
3人でのんびりおやつを食べたら、ダンジョンを出て街へ帰ることにする。帰りはまおちゃんはぽよぽよと跳ねて、がぶがぶさんは私が抱っこして、てくてく歩いて帰る。
私は二人が楽しく過ごせるように、美味しい物を作ってあげよう。
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