第8話 サメを封印?
「まおちゃん、大変です!」
(なんだ、どうかしたのか?)
「えっとですね、ごめんなさい。必要経費ではあったんだけど、使いすぎたみたいです。もうお金が残り少なくなってしまいました」
(ふむ。我はお金はよくわからんが、大変なのだな?)
「明日から宿に泊まると本当にお金がなくなっちゃうから、野宿になります!」
(それはユアが大丈夫なのか?)
この世界のお金は小さい方から銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨で、銅貨が100円くらいなイメージかな。なので今持っているお金は大体一万円くらいしかないのです。
ドロップ品は沢山あったけれど、どれも街道に出てくる魔物であんまり高くは売れなかったんだよね。王都までは歩いて行くとしても、後2日も泊まったらそれだけでなくなりそうなんだよね。
今はどうにも出来ないから、まずは出来る事からやろうかな。まおちゃんがサメの所へ行きたいって言っているんだから、そこに行ってみよう。
「とりあえず、明日はサメさんの所に行く?」
(そうだな。あやつを封印してやれば良かろう)
まおちゃんは暴れているというサメの所に行く気満々だ。私としてはかなり怖い。だってサメだよ!?
サメっていうだけでも怖いのに、さらに魔物なんだよ。怖すぎるでしょっ!?
「場所はまおちゃんがわかるのかな?」
(ああ、任せておけ)
まおちゃんがぽよんと動いて分かると言っているみたいだ。明日は街の外に出たら、まおちゃんには道を教えて貰おう。
しかし、明日からどうやって暮らしていこうかな。あんまりお金ないのにクッキーなんて作っちゃったけど、どうしてもまおちゃんに食べさせてあげたかったんだよね。
(そういえば、我のストレージの中にまだ大量にアイテムがあるのだがな。これを売ればお金には困らんだろう)
「また夜にまおちゃんに頼っちゃうかもしれないけど、お願いしても良いかな?」
(ああ、任せておけ! ユアには旨い物を食わせて貰っているからな。それくらい問題ないぞ)
「えへへ、ありがとうね。またお外でもクッキー食べようね!」
(クッキーか、あれは物凄く旨かったな!)
まおちゃんを抱っこして食堂へ行き、お夕飯を半分こして食べる。明日からの事を考えると不安になるから、今日はまおちゃんを抱っこしてむぎゅむぎゅすりすりしてゆっくり寝ちゃおう。
次の日の朝起きると、まおちゃんがもう起きていた。まおちゃんが伸びて縮んでって体操してるみたいで、朝から悶えてしまった。可愛すぎて瞬間的に抱き着きに行ってしまった。
「まおちゃん、おはようっ! 運動してたの?」
(我もさっき起きたから、伸びをしていただけだぞ)
「ふふっ。まおちゃん、可愛すぎるっ!!」
(可愛いだとっ!? 我は魔王なのだぞっ!)
準備をしたら、朝ごはんを食べて宿を出る手続きをして貰い外に出る。
今日はまずは海に行く予定だ。門番さんにはとても心配されたけれど、今日はまおちゃんに着いていくつもりなのだ。危ないからと出してくれない門番さんを必死に説得をして、門を出たら目の前には砂浜が広がっている。
「まおちゃん、ここからは場所が分からないからお願い出来るかな?」
(うむ、任せておけ。ユアはこれをもっていろ)
「あっ、サメのぬいぐるみ! えっと、これを持っていたら良いの?」
(うむ)
まおちゃんが持っておけというので、地面をぽよぽよしているまおちゃんの代わりに、サメのぬいぐるみをむぎゅっと抱っこする。我ながらいい出来だ。むぎゅっとするとふわんと綿の感覚が気持ちいい。しかもふわっふわのタオル地も抜群の触り心地だ。
お口に手を突っ込んでふわふわを感じながら、幸せ気分で歩いて行く。
ぽよんぽよんと跳ねているまおちゃんの後を着いて、ぽてぽてと歩いて行く。まおちゃんの後ろ姿を見ているだけで、ほんわかしてしまう。だってふわふわのぬいぐるみがぽよぽよ跳ねてるんだもん、可愛すぎでしょう。
見ていたら楽しくなってしまった。やっぱりかわいいは正義だよね!
(ふむ、そこらに来ているな)
まおちゃんが海の手前で止まった。私もつられて止まる。
サメのぬいぐるみを持つ手に力が入る。次の瞬間さばぁっ! と海の水が津波のように盛り上がった。
中から出てきたのは、巨大なサメだ。2階建ての家よりも遥かに大きいサメは、大きな口を開けて私に一直線に向かってきている。
「我は海の覇者……なんだ、ひっぱられ……うわぁっ!」
「きゃぁっ!」
サメが何か言っていた気がするけれど、怖くて思わずサメで顔を隠してぎゅぅっと目を閉じる。
いつまで待っても衝撃は来ない。その代わりに私の腕の中に居るサメのぬいぐるみがぴこっと動いた気がした。
そっと目を開けると、目の前には何もいない。海も静かだ。
「まおちゃん。さっきのサメはどうしたの?」
(そこにいるであろう)
(えっ、魔王様っ!? 私は一体……なぜこんな姿にっ!?)
「わわっ、ぬいぐるみが動いた!」
(ああ、さっき封印したからな)
(封印ですかっ!? まさか伝説の封印術師が?)
(そうみたいだぞ)
(そんなっ、封印術師は廃れたはずではっ!?)
(ユアは異世界から来た転生者だからな。だが、この生活もなかなか楽しいぞ)
(魔王様っ!?)
「えっと、もしかして……また封印した、とか?」
(うむ)
(……)
まおちゃんがぽよんと跳ねたから、封印したみたいだ。まおちゃんがサメのぬいぐるみを作らせたのはこの為だったのかな。
まおちゃんって不思議だよね、何でも知っているみたいだし、とっても強くて可愛いし。
「うーん、この子はなんて名前にしようかなぁ。サメだから、がぶがぶさんだね!」
((がぶがぶさんっ!?))
「がぶがぶさん、よろしくね」
(なぜ魔王である我がちゃんで、四天王のこやつがさん付けなのだっ!?)
(魔王様、そこですかっ!?)
がぶがぶさんを封印して、まおちゃんとがぶがぶさんを抱っこしてむぎゅっとする。
「まおちゃんはもちもちのふわっふわで、がぶがぶさんはふんわりふわふわ気持ちが良いね」
(魔王である我の方が、気持ち良いに決まっているであろう!)
(魔王様っ、なんで馴染んでるんですか!?)
(今までの魔王の生活よりも楽しいぞ。それに、我はユアの側が気に入ったのだ)
(魔王様っ!?)
(おぬしも気に入ると思うぞ。それで、ユアは金がないらしいのだ。だから、海底ダンジョンを攻略してユアにプレゼントするぞ!)
(えっ、ほ、本気ですか!?)
(当たり前であろう!)
(わ、分かりました。ではすぐに向かいましょう)
まおちゃんとがぶがぶさんは何か会話しているっぽい感じだけど、私には聞こえない。私もまおちゃんやがぶがぶさんとお話出来たら良いのになぁ。
「さて、この後どうしようか。街へ戻る?」
(いや、海底ダンジョンへ向かうぞ!)
「ん? まだどこかに行くところがあるの?」
(ユア殿、行きましょう。魔王様は言い出したら聞かないですからね)
(何か文句でもあるか?)
(いえ、ないですっ!)
まおちゃんが何か言いたそうだけど、どこかに行くってことで良いらしい。なので、まおちゃんにどこに行くのか歩いて貰って案内してもらう。
まおちゃんに着いていくと、大きな扉があった。ここは何だろう?
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