第7話 サメのぬいぐるみを作ります♪
部屋に入ると、まおちゃんがクリーン魔法を掛けてくれた。お風呂に入ったようなさっぱり感はあるけれど、やっぱりそのうちお風呂につかりたいね。
「まおちゃん、ありがとうね」
(うむ。ユアはサメを作るのか?)
さっぱりしたところで、青と白の生地を出してサメを作り始める。
転生するときに手芸をするためのスキルを貰っている。スキルは手ミシンと型紙省略。
手ミシンは手で縫うときにミシンみたいに速く正確に縫えるスキルなんだ。とっても便利でしょ!
型紙省略は、作りたい形を頭に浮かべるだけで型紙がなくても、すぐに生地をカット出来る素敵スキルなんだよ。
これのおかげでさくさくっと必要な生地を切り出せた。ここからは手ミシンの出番だ。ちくちくちくーっとすごい勢いで生地を繋ぎ合わせていく。
(ユア、速すぎないか!?)
1か所だけ縫わずに開けておいたところから、生地をひっくり返してサメの形に整える。その穴から綿をぎゅぎゅっと詰め込んでいく。端っこまで綿がいくようにぐいぐいと押し込んでいく。それでもこの綿は硬くならないでふわふわのままだ。綿を詰めたら、空いている穴を塞いで完成!
「出来たーっ!」
(もうできたのかっ!?)
「楽しくてあっという間に出来ちゃったよ。まおちゃん、こんな感じでどうかな?」
(うむ。これならあやつも封印出来るであろう)
「ぽよんってしたからOKなのかな~」
背中側が青で、お腹の部分と口の中が白いサメのぬいぐるみが出来た。
まおちゃんからのOKが貰えたっぽいので、このぬいぐるみを持っていればサメに会っても大丈夫そうだ。というか、そもそもそんな危ないところに行かなければいいのではないだろうか? でも、まおちゃんが作ってって言うんだから、きっと必要ってことなんだろうなぁ。
「まおちゃん。このサメを作ったけれど、サメに会いに行くの?」
(ああ、暴れているのが我の部下だからな)
「でも、危なくないの?」
(もちろんだ。魔王である我が負けるわけなかろう)
自信満々にぽよんと跳ねているから、きっと大丈夫なんだろう。私が寝ている間も守ってくれたくらい強いんだし、まおちゃんが行くというのだから覚悟を決めて一緒に行こう。
「うん、分かったよ。まおちゃんに任せるね」
(ああ、任せておけ。我があやつに負けるなどありえんからな)
こんなにかわいい外見で強いだなんて、まおちゃんはすごいね。
お出かけの準備をしたら、朝ごはんを食べに行こう。サメのぬいぐるみはまおちゃんに仕舞っておいてもらった。
今日は街で調味料とかお買い物をする予定だ。調味料があればお肉も美味しく食べられるよね。後は調理器具も欲しいかな。後はお皿とかも欲しいね。
「まおちゃん。本当にまおちゃんが倒してくれた魔物のドロップ品のお金は使っちゃって良いの?」
(もちろんだ。全部使えば良いぞ!)
まおちゃんが良いと言ってくれているので、ありがたく使わせて貰おう。私も早く稼げるようになると良いのだけど、まだまだ難しいね。
まだこの先王都まで行く予定だから、野営の準備もしたいんだよね。野営の時でもまおちゃんに美味しい物を食べさせてあげたい。そのためにも今日は色々とお買い物をしなきゃなんだよね。
「そういえば、まおちゃんが仕舞ってくれるものは腐ったりしないの?」
(うむ。我のストレージは時間が止まるからな)
「熱い物は熱いままなのかな?」
(ああ、もちろんだ)
「わわっ、それは嬉しいしすごいね。だったらやっぱり調味料とか調理器具も買いたいね!」
後は市場で食材も買いたいなぁ。まおちゃんが収納してくれると時間も止まるみたいだから、お野菜とかも仕舞っておいて貰えればとても助かるよね。
市場に行くと、日本に居たときと同じようなお野菜も沢山あって嬉しくなった。玉ねぎ、にんじん、ジャガイモはやっぱり欲しいよね。でも、サメが出ていて漁に出られないからか商品はとても少ない。本当は沢山買いたいけれど、そういうわけにもいかなそうだ。王都に行くまでに使う食材より少し多めに買うだけにしておこう。
買った食材はまおちゃんに収納しておいて貰う。次は食材屋さんだ。
「うーん。お砂糖はやっぱり少し高いね。でも、欲しいなぁ」
(砂糖なんて何に使うのだ?)
「うぅ、でもまおちゃんに食べさせてあげたいなぁ」
(何!? 我に食べさせたいだと! 金なら我に任せておけ!)
小麦粉は少し安めだけど、調味料は結構良い値段がする。ただ、港町だからかお塩はちょっと安い。
スパイスは高いから諦めるとして、お砂糖はクッキー1回分くらい買っちゃおう。クッキーの材料とお塩を少し買う事にした。
「うーん、これからどうしようかな」
(これから、とは?)
「調理器具とかも買いたいけれど、あんまり買いすぎたらお金なくなっちゃうよね。計画的に使わないと、私まだ稼げないしね」
(我がいるから問題ないであろう)
楽しかった気分がへにょんと萎んで、思わずまおちゃんをむぎゅっと抱きしめた。
(どうしたのだ?)
「えへへ、ごめんね。ちょっと不安になっちゃった。私に何が出来るのか分からなくて、この先どうしたら良いのか……」
(我がいるであろう。この世界の魔物は我がいれば問題ないぞ。なんといっても魔王だからなっ!)
すりすりしてくれるまおちゃんに、心が温かくなった。まおちゃんをむぎゅっと抱きしめると、少し安心する事が出来た。
どうしたら良いのか、何も解決策は決まっていないけれど、まおちゃんのぽよぽよすりすり攻撃で和んでしまった。
「とりあえず、宿のキッチンを借りられないか聞いてみようか」
(ふむ。さっき言っていたものを作ってくれるのか?)
この先が不安でしかないから、調理器具は最低限のフライパンを1つだけ買う事にした。食器も最低限だけにしておいた。それでも結構使ってしまって、お金が残り少なくなってしまった。
不安な気持ちでまおちゃんを抱えながら、宿に帰ってきた。今日は泊まれるけれど、明日はどうなるか分からない。
「あら、おかえりなさい」
「ただいまです。あの、出来たらで良いのですが、キッチンを少しお借り出来ませんか?」
「今の時間だったらちょうど空いているから大丈夫よ。でも後1時間くらいで夕飯の仕込みが始まっちゃうから、それまでになっちゃうけれど、いいかしら?」
「はい、十分です。お願いします」
女将さんに案内して貰って厨房に入る。まおちゃんも一緒に入って良いと言ってもらえたので、一緒に厨房に入る。
厨房の片隅をお借りする事が出来たので、クッキーを作ろう。材料は買ってきたから、卵、お砂糖、小麦粉、バターのシンプルなクッキーにした。
「その材料で何を作るんだ?」
「クッキーを作ろうと思ってます」
「クッキー?」
「えっと、サクッとしたお菓子です」
「その材料で作れるのか?」
「はい」
厨房に居た旦那さんが、不思議そうな顔をして同じ材料を準備してきた。旦那さんに説明をしながら作り始める。
柔らかくしたバターにお砂糖を入れて混ぜる。そこに卵を少しずつ加えて、最後に小麦粉をさっくり混ぜたら生地の完成。
「これを丸めて少し潰して焼いたら完成です」
「焼くのは何で焼くんだ?」
「普通はオーブンで焼きます。それかフライパンでも一応作れます」
「よし、一緒に焼いてやるからここに乗せて良いぞ」
「わわっ、ありがとうございます!」
オーブンで焼くなら1回で焼きあがるからとっても助かる。焼いている間に何か作ろうかとも思ったけれど、邪魔になりそうだったので止めておいた。
10分ちょっとして、バターのいい香りとともに焼きあがった。お腹空いちゃう。
「わぁ、綺麗に焼けてる~。ありがとうございました」
(うまそうな良い香りだな)
「いや、こちらこそ教えてくれてありがとうな」
「ささ、お茶が入ったから一緒に飲もうかね」
「ありがとうございます」
女将さんがお茶を入れてくれたので、食堂へ移動して一緒に食べる。まおちゃんのお口にクッキーを入れてあげると、サクッと良い音がした。
(これはうまいっ!)
「おや、これはサクッとしてるんだね。こりゃお茶に良く合っておいしいねぇ」
「サクッとした食感が良いな。うまい!」
気に入ってもらえてよかった。私のクッキーも美味しく焼けている。フライパンだと焼くのがちょっと難しいから、一緒に焼いてもらえて本当に良かった。
おかげでおいしいクッキーが沢山出来た。まおちゃんも美味しいのか、ぽよぽよと身体が嬉しそうに揺れている。うん、作って良かった。
一緒にお茶をしながらクッキーを食べる。久しぶりのクッキーに、なんだか日本が懐かしくなった。
今の私は、アレクシアの記憶よりも日本に居たときの記憶の方が強い。だから普通に旅も出来ているんだけどね。
アレクシアの記憶の方が強かったら、ここまで平気でいられなかっただろう。後は、まおちゃんの存在が大きいかもしれない。やっぱり一人じゃないって、とても心強い。
ちょっとしんみりした気分になっていたら、まおちゃんがすりすりしに来てくれた。思わずむぎゅっと抱きしめる。つい手はもふもふしちゃうけどね。
(どうかしたのか?)
「まおちゃん、ありがとうね」
女将さん達にお礼を言って、一度部屋に戻る。後1時間くらいでお夕飯の予定だ。
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