#40 メロンにも友人がいたのね
「何を考えているんだい、メロン」
「貴様は――」
デカメロンの隣に、いつの間にか一人の少年と一人の少女が立っていた。少年の方は、デカメロンの顔を心配そうに、覗き込んでいる。もっとも、彼の顔はヘルメットで見えないが。
「そうか――もう、四季市に到着していたのか」
デカメロンは彼らの顔を確認して、一呼吸置くと、少年に右手を差し出す。デカメロンなりの、歓迎の握手のつもりなのだろう。それだけ、彼らのことを認めているのだ。
「よく帰ってきた、砂雄――そして、書子様も」
「メロンも元気そうで何よりだよ」
「そうね――ただいま」
砂雄と呼ばれた少年はデカメロンの握手に応じると、再び彼に問いかけた。
「それで、何を考えていたのさ、メロン」
「なに、昔の話だ。お前と書子様のことを考えていた」
「え、僕たちのこと? 照れるなぁ!」
「お前のことは大して考えておらぬ。比率は書子様の方が大きい」
「素直じゃないなぁ」
「拙者は貴様と違って、真面目なだけだ」
「融通が利かないだけよね」
「書子様、乃鈴様がお待ちです。あちらへどうぞ」
「都合が悪くなったのね。だから、話を逸らした」
「やっぱり素直じゃないなぁ」
「砂雄はお前だろう」
「ダジャレのつもりかい、メロン」
「アホ歩亜郎の口癖に影響されたようだ――悪影響でござる」
「歩亜郎? あの男子トイレの壁に嵌まっている子のこと?」
「安心したわ。メロンにも友人がいたのね」
「友人ではございません。手紙でもお伝えした通り、拙者は今、部活動組織に所属しており、歩亜郎という男はそこのメンバーでござる」
「へえ、面白い子だね」
「お前とは波長が合うかもしれんな、いろんな意味で」
「砂雄と波長が合うなんて、不安しかないわね」
「よし! 変態同士、親睦を深めてくるよ!」
「やめておけ。あやつは人見知りだから、お前が突然話しかけても、無視するだけだ」
「ははっ! まるで昔のメロンみたいだね――」
「どこが!」
談笑しながら、乃鈴の元へ向かう三人。彼らは久しぶりに再会した喜びを密かに噛み締めながら、自分たちがいかにして出会ったのか、ということを思い出していた。
「あの――誰か、助けてください」
その後、壁に嵌まった歩亜郎の存在を、思い出す者はいなかった。自力で脱出した彼は、手持ち無沙汰であったため、デカメロンの代わりに境内の掃除をすることにした。意外にも彼の掃除により、境内がより一層綺麗になったことに気がついた者は、誰一人いなかった。
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