1.俺はヤンキーで君は風紀委員長【蒼世】

 耳の横を伸ばしている金髪。両耳にピアス。目つきの悪さ。乱れた服装。口調の悪さ。アクセサリー着用。暴力事件、で停学。


 俺は所謂ヤンキーという奴だ。


 珍しく朝から平和で、始業前に学校に着いたと思って校門をくぐろうとしたその時、俺の前にざっとガラの悪い連中が現れた。


「設楽蒼世! 今日こそはお前をボコボコにしてくれる!」

「へぇ。やれるもんならやってみやがれ、雑魚共」


 ものの5分で片付け終了。


「はんっ、俺に勝とうなんざ百兆年早ぇぜ」


 ま、朝からいい運動にはなったか。ふぁぁ、体動かしたら眠くなってきたな。授業サボって屋上で寝るか。と考えながら下駄箱に向かおうとすると、聞き慣れた声によって俺の行く先が塞がれる。


「設楽くん! 朝から、しかも学校の前で喧嘩するなんて、どういう神経してるのかしら?」

「うるせぇな。てめぇには関係ねぇだろうが、嘉納」


 俺の最高の癒し、今日も超可愛い。怒った顔も超可愛い。あー、好き。


 嘉納に睨みをきかせて不機嫌な顔を見せながら、心の中では好きが溢れてしまうのはいつものこと。

 そう、俺は風紀委員長であるこの女に恋をしている。一目惚れだった。高校1年の頃からやんちゃで喧嘩ばかりしていた俺の前に現れた天使のような女の子。それが彼女だった。

 ずっと想い続けて、気づけば高校も残り1年になってしまった。想いを伝えられたらいいのにとは思うものの、昔から素直じゃない性格の俺は、話しかけられる度に思ってもいない言葉ばかりを彼女にぶつけてしまう。反省と後悔は毎回のようにしているのに治らない。

 ま、でも、風紀委員長が学校一の問題児の俺と付き合うとか、人から見たら俺が脅したみたいに見えたり、嘉納の印象が悪くなったりすることに繋がるよな。そう思うと、おいそれと想いを告げられなくなってしまっていた。え? ヤンキーのくせに案外ヘタレ? うるせぇ、んなこと俺が1番よくわかってんだよ!!


「ちょっと、設楽くん、話聞いてるの?」

「あ? お前の話長ぇから途中から聞こえてなかったわ」


 色々考えてたからな、聞いてなかったごめんな。


「はぁ……だから、怪我人はいなかったからよかったものの、今後学校の前で喧嘩しないで。髪は黒に戻して。ピアス外して、制服ちゃんと着て」

「あーはいはい、注文多すぎ。マジでうぜぇ。かっちりしすぎてると若ハゲするぜ、くそ真面目ちゃん」


 ため息ついてても可愛いのずるくねぇ? つか、全然そんなこと思ってねぇから。その綺麗な黒髪がハゲるわけねぇし。


「……そのくそ真面目ちゃんって呼ぶのやめてくれる?」

「そっちがドMヤンキーくんって呼ぶのやめたら考えてやるよ」

「……はぁ、ほんとあー言えばこう言うわね。授業はサボら……」

「あ、無理。屋上で寝るんで。んじゃ」


 多分また小言言われるんだろうなと思い、俺は捕まる前に屋上に逃げ込むために全力ダッシュする。しかし、彼女がそれを許すはずもなく……。


「〜〜っ、設楽くん、待ちなさい!」


 後ろから全力ダッシュして追いかけてくる嘉納の姿が見えたが、校舎内に入った俺の勝ちだ。彼女は校舎内では絶対に走らないのだから。


 ごめんな。嘉納のことは好きだけど、俺不良なんで、風紀は守れません。

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