第二章・淫らな夢の秘湯宿〔旅情〕

第6話・楡崎 子日〔ねのひ〕の場合①〔子日②は非公開〕

 亜夢は、また紫炎の寝室を訪れた。

 前回と同様に、眠っている紫炎の夢の中に入る。

 紫炎の夢は、インナースペースの他のマルチバースな世界とつながっていて。

 それは、夢魔見習の亜夢には、夢の世界として表現されている。


 今回の世界は、田舎のバス停からスタートだった。

 周囲を田畑に囲まれた山間のバス停で、亜夢の姿は少し華奢きゃしゃな体型の、可愛い系イケメン夢魔に変わっていた。

(別の心格者の夢の中? この姿が心格者が希望する、相手役の容姿?)


 亜夢が、鳥のさえずりが聞こえる。のどかなバス停のベンチに座っていると、旅行カバンを肩から提げた一人の成人男性が現れた。

 男性が、夢魔の姿をした亜夢に話しかける。

「こんにちは、あなたも秘湯宿行きのバス待ちですか?」


 男性は大学生で職業作家の『楡崎子日ねのひ』と、名乗った。

「作家と言っても、数冊ほど売れない本を出している……三流作家ですけれどね」

 苦笑する子日は、自分が心格であるコトを自覚していた。

「第二リーダーの紫炎から、亜夢さんのコトは伝わって知っています。自分が、ひとつの肉体を共有している集合心格の一人であるコトも」


 子日の言葉を聞いて亜夢は思った。

(このシュチュエーション世界が、子日にとっては現実と同じ意味合いを持つ世界なんだ……子日ねのひが望むコトっていったい?)


 ベンチから立ち上がって子日が言った。

「まだ、バスが来るにはしばらく時間がありそうですから、歩きながらバスが来たら乗りませんか……田舎のバスは、バス停は関係なく、手を挙げれば停まって乗せてくれますから」

 亜夢は、秘湯の方向へ向かって子日と会話をしながら歩くコトにした。

 穏やかな日射しの田舎の道、二羽の蝶々が戯れながら歩く二人の横を通り過ぎていく。


 子日が言った。

「少し創作に行き詰まってしまって……秘湯で、ゆっくり休養でもすれば、いいアイデアが浮かぶんじゃないかと思って旅に出ました」

「良いアイデアは浮かびそうですか?」

「ええっ、出逢いがありましたから……あなたという若い夢魔と」

 その時、後方からパスのクラクションが聞こえてきた。

「バスが来たようですね」

 子日が手を挙げると、バスが停まり、二人は乗車して秘湯宿がある、バス停に少し揺れるバスで向かった。

 並んでい座席に座った、亜夢の太モモを子日は触ってきた。

 亜夢は、子日の行為を受け入れる。

(積極的な淫夢……これが子日の望みか)


 子日の触り方は次第に大胆になり、亜夢の太モモから股間の膨らみまで撫で回す。

 子日が、二人だけしか乗客がいないバスの中で呟く。

「いい作品が書けそうです……その肉体を捧げてください」


 子日は、亜夢の唇を求めてきた。

「んんッ……んッ」

 座席に寝かされて、口を吸われる亜夢。

 バスの中での、淫らな行為は秘湯宿があるバス停まで続いた。


 バス停から歩いて数分──湯けむりが沸き上がる、渓流沿いの宿に到着した。

 一つの部屋に、二人で宿泊するように子日と亜夢は案内された、

 部屋に用意されていた、お茶で喉を潤し茶菓子を食べながら亜夢は思った。

(旅の宿で、男二人が一つの部屋に泊まる……男同士での、禁断のハプニング発生が子日ねのひが希望するシュチュエーションなのか……なるほど)

 少し部屋で休憩してから、子日が言った。

「お風呂……行こうか、この宿の売りは源泉かけ流しの、露天風呂みたいだから」

 

 せせらぎの音が聞こえる、湯けむりの露天風呂に一緒に入る亜夢と子日。

 夢魔の翼と尻尾を出したまま、洗い場で体を洗っている亜夢に近づいた子日が言った。

「背中、流してあげようか」

 亜夢の背中を、泡立てた石鹸せっけんで洗う子日が呟く。

「きれいな肌……きれいな背中……夢魔のコウモリ翼もビロードのような肌触りをしている……あぁ、もう我慢できない」

 子日は、亜夢の背中に自分の裸身を密着させた。

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