第5話・楡崎 紫炎の場合③

 深い夢の領域で、亜夢と繋がった紫炎は、浅い夢の領域にもどってきた。

 紫炎を抱き締めている亜夢が言った。

「満足したか?」

「気持ち良かった」

「オレも、欲望の精を吸収して満たされた……メインのリーダー心格の願望が満たされると、他の心格にも影響は出るのか?」


「すべての心格に、共通意識として【男好きで、男に抱かれたい、男を抱きたい】という意識に書き換えられたはずだ。別の心格の夢に、すんなりと夢魔が入り込める」

「そうか」

 亜夢は、夢の中で紫炎のシンボルを握り締めて言った。


「現実の肉体も、淫夢とシンクロしているぞ」

「みたいだな……後始末が大変だ」

 夢の中で紫炎は苦笑した。

 そして、紫炎は呟く。

「思い出した……オレは亜夢の」


 ジルドの元にもどった亜夢は、出会った【集合心格】紫炎の存在を報告した。

 亜夢の話しを聞き終わったジルドが言った。

「多数の心を宿す肉体とは、稀有けうな存在だな……だが、夢魔が移動をして獲物を探す手間は省けるな。この世界が誰かのインナースペースで、マルチバースな世界だったとは、悪魔でさえも知らなかった──この地獄も、インナースペース世界の一つというコトか。その楡崎とかいう集合心格体を、おまえ専用にして他の心格の夢で経験値を積め……夢魔のおまえは、受けでも責めでも変幻自在だからな」

 ジルドの言葉に亜夢は、うなづいた。


楡崎紫炎の場合~おわり~

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