第一章・見習い異種インキュバス誕生〔経験値を溜めろ〕

第3話・楡崎 紫炎の場合①〔紫炎②は非公開〕

 亜夢は、満月夜の町を夢魔の翼で飛行した。

 夢魔の姿は通常の人間には見えない。やがて亜夢は引き寄せられる、強い波動をキャッチして男のシンボルが反応する。

(体が疼く……これが、夢魔の体!?)


 亜夢は、ある家の二階の窓が開いていて、一人の男性が仰向けで眠っているのを発見した。

 引き寄せられるように、開いた窓から室内に侵入する亜夢。

 月光の中で、寝息を立てている自分と同年と思われる男性。

 枕元の丸テーブルに、インテリジェンスなメガネが置かれているところを見ると、普段はメガネを愛用しているメガネ男子らしい。

 亜夢は、眠っている男子の両肩が寝具から露出しているのを見て、そっと寝具をめくってみる。

 パジャマ姿の美形男子が現れる。


 亜夢のシンボルが興奮する。まるで男子は夢魔を誘っているように、無防備な肢体を亜夢の前に晒す。

 心臓が高鳴る亜夢。

(なんだか、ドキドキしてきた……早く夢の中に入り込まないと)

 亜夢は、眠っている男子の上に腕立て伏せをするように体を重ねると……ゆっくりと下降をして男子の額に自分の額を接触させた。

 そして亜夢は、男子に溶け込むように入り込んでいった。


 夢の世界にも、亜夢が入り込んだ男子がいた。

 全裸でしゃがみ込んでいる男子が顔を上げて微笑む。

「やっと来てくれた……待っていたよ」

 亜夢は、なんとなく懐かしさを感じつつ、男子に質問する。

「待っていたって、夢魔を待っていたというコトか?」

「それもある……実は、オレもあまり過去のコトは覚えていないんだ、心のどこかで忘れたがっているせいかも知れないが。でもおまえを待ち続けていた感覚はある」

 裸の男子が立ち上がって裸身を晒す。

 男子が自分の胸に、軽く手を触れながら言った。

「オレの名前は『楡崎 紫炎にれざき しえん』……数多くの心世界をとりまとめる、リーダー格の心格者だ」


 楡崎の話しだと、この世界は誰かのインナースペース心的世界マルチバース多元世界で、数多くの心が世界を構成共有しているらしい。

「多重人格とか、複合性格とも意味合いが違う……例えるなら、心のマンションに個別に住む【集合心格】といった感覚か……心格という呼び名は、みんなで相談して決めた。誰がメインでもサブでもない。基本のまとめているリーダーはオレ、紫炎だが」


「紫炎が心格リーダーというコトは、他の世界の者たちも知っているのか?」

「あぁ、大半のマルチバースの心格たちはオレをリーダーとして慕ってくれているが……中には認識していない者もいる」

 紫炎が、台本のようなモノを差し出して言った。

 中には、無数のシャボン玉のような世界が拡がっていた。

「これが、オレたち心格が望む世界のシチュエーションだ……一人、一人がそれぞれ別のシチュエーションを抱いて生きている、夢魔の力で望みを叶えてやってくれ」

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