プロローグ……夢と現実の隙間……現世と地獄の隙間

第2話・亜夢……夢魔として転生

 柔らかな光りが満ちる空間の中で、二人の男性の会話が聞こえてきた。

「怖くはないか?」

「堕ちるのは紫炎が生み出してしまった。マルチバースの深淵しんえんにある地獄だ……怖くはない」


「こんなコトになってしまって。すまない」

「気にするな、オレが堕ちなかったら紫炎が消えて、この世界も消滅する……たとえ、今までの記憶を二人が失ったとしても、また会える必ず」


「忘れない……会った時に必ず思い出す」

「無理をするな、逆に苦しくなるだけだ……自然に思い出すのを待った方がいい。出会ってから新たな思い出を築いていけばいいじゃないか……じゃあな、紫炎」

 二人の男性の気配が淡い光りの空間から消えて、一つの魂が地獄に堕ちていった。


  ◇◇◇◇◇◇


 狭間はざまの空間──元ナイトメアで、男色悪魔の『レイ・ジルド』は性的な意味で、横臥おうがした男を貪り食べていた。

 巨大な紫色をしたバラの花のベットで、横臥した裸身の若い男……男子高校生の肉体を性的に貪る男色悪魔。


 男子高校生の背中側に裸で横臥して抱擁するジルドの手が、魂から育て上げた男子生徒『亜夢』のほどよく鍛えられた胸筋を撫で回し……愛撫する。

 男色悪魔から裸身を弄ばれている亜夢の口から、短い喘ぎ声が漏れる。

「ぁあ……んっ……んあぁ」

 亜夢の胸から、適度な腹筋の腹部を背後から背中を密着させて、撫で回している美形人間形態のジルドが、悪魔の声で亜夢の耳たぶを甘噛みしてからささやく。

「ふふ……気持ちいぃか、亜夢」

「ふはぁ……はい、ジルドさま。とても気持ちいぃです……あぁぁ」


 ジルドは亜夢のルビーのような乳首を責める。

「理想通りの肉体に仕上がってきたな、乳首も反応して固くなってきた」

「はい、淫らな体に仕上がりました……うくっ」


「この地獄に堕ちてきた魂だけの存在だった、おまえを引き揚げた……名前を死者の書で見た時は女かと思ったぞ。しかし、不思議だなおまえなんで地獄に堕ちてきたんだ? 汚れた魂じゃなかっただろう?」

「んんぁ……わかりません、生前の記憶はありませんから……あふっ」


 ジルドの手が亜夢の下腹部へと伸びる、反応している男のシンボルを手の中で確認するジルド。

 亜夢の体がピクッと跳ねる。

 シンボルを愛撫しながらジルドが言った。

「立派な男のシンボルだ……亜夢、おまえは新たに魂から形成した、おまえの夢魔の体は自在にその姿を変えられる……男が思わず推したくなる、可愛らしい男の体になってみろ」

「はっ、はい……ジルドさま」


 アスリートタイプの肉体が、小柄で華奢きゃしゃな愛玩動物を連想する、男子生徒の容姿に変わる。

 色白で細い肢体になった亜夢の体の向きを変えて、向かい合って優しく抱き締める男色悪魔。


 亜夢は、また甘い喘ぎ声を発した。

「はぅ……ジルドさまぁ……好きです、ジルドさまぁ」

 ジルドは、亜夢の肉体を形成する時に、自分が抱いてきた男たちの容姿を移植した。


「さあ、夢魔の仕上げだ」

 ジルドと亜夢が……肉体的に繋がる。

 ジルドに騎乗した亜夢の箇所が、喜びで痙攣して引き絞まる。

「あぁぁぁ……ジルドさまぁ、幸せです。亜夢は幸せです……なにか、出ます! 体から何か出てきちゃいます……あぁぁぁ」


 亜夢の背中から黒い夢魔のコウモリの翼が、ビキッビキッと生える。

 尾骨からは悪魔の黒い尻尾が生える──尻尾の先端はハート型だ。

 夢魔に変わって、恥ずかしそうに背を向けて、両手で自分の体を抱き締めて、少しだけ震えている亜夢の体を眺めながら、ジルドが言った。


「完成したな……亜夢、おまえは今日から見習い夢魔だ……男たちを淫らな夢の中に誘い込め」

 着衣をしている亜夢にジルドが命じる。


「さあ、人間界に地獄からもどって。男たちの夢を喰ってこい……時には男の夢を叶えてやったりしてな」

「はい、ジルドさま……この淫らな夢魔の体は、ジルドさまと共に」


 そう言うと亜夢は、現世へと黒い夢魔の翼を羽ばたかせて向かった。


亜夢……夢魔として転生 ~おわり~

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