第13話 ここはどこ

「真菅さん!真菅さん!」

「——あれ?」


一瞬世界がぐにゃっとしたと思ったが――再び目を開けると――やはり人の気配はないが。多くの人が行き来している大通りに俺と香良洲は立っていた。

不思議なことに路地裏から出て。大通りの真ん中に居るはずだが。誰からも邪魔。という視線は感じず……。


「なんだ。これ」

「大丈夫ですか?急に黙って」

「いや、なんか世界が曲がった」

「——はい?」


何言ってるんですか?という表情で香良洲が見てくるが――仕方ない。今実際に俺が体験したことだからな。


「ってか、香良洲。お前は感じるか?」

「何をですか?」

「今俺達の周りを歩いている人を」

「そりゃ見えてます――から……?あれ――?そういえば――」


どうやら香良洲も気が付いたらしい。ってことは俺と香良洲は同じ状況にあるとと考えた方がいいだろう。


「香良洲。なんかおかしいのはわかった。とりあえず――戻るか」

「あっ。はい。えっと――どうして……こんなに人が居るのに全く人の気配が――静か過ぎます」

「わからん」


結局俺と香良洲は大通りまでは行けたが。違和感を感じたため、そのまま俺のお店まで一緒に戻って来た。

ちなみに路地裏に入ると、大通りで感じた違和感はなくなっており――何故か行きより早くお店へと戻った気がしていたのだった。


カランカラン……。


clauseだったお店の中に俺と香良洲は入ると。それぞれが椅子に座った。そしてしばらく沈黙のち――。


「わかったことは――」

「——」


俺が話しだしても香良洲は何も言う感じがないので俺がそのまま話を続ける。


「俺達同じだな」

「——はい。って、ことなんですかね?でも私一人の時は大通りまで行けなかったのに……」

「それは――あれだろう。なんか俺の家というか。まあ親もこのお店をしながら、俺が怪我した時病院。外まで来ていたからな。何かある可能性がある。全くわからんが。だからさっきは俺が居たから香良洲も大通りまでは出れた。でも――」

「記憶が――ない。あと――変な感じでした」

「ちなみに俺はは記憶がある。多分――前に1人暮らししていた所には――行けると思う。でもまあこれも。俺の家が何かある――と考えると。だな。普通なら忘れる事をたまたま覚えているだけかもしれない」

「つまり私たちは?」

「なんというか――どちらの世界にも居ないみたいな?状況なのか?なんか周りを歩いていた奴らは俺達が見えてないような感じすらあったからな」


自分で言いながら頭の中で再度整理をする。まあそうなるのではないだろうか。現実の世界も――見ることは出来る。でも何かもうおかしい。おかしくなっている。少し行かない間におかしくなったらしい。かといって向こうの世界にも行ける雰囲気は今のところ全くなかった。つまり簡単に言ってしまえば――何故か2人ぼっち状態の俺と香良洲だった。


香良洲は――多分自分の記憶がなくなったことにショックを受けているのか。戻って来てからは全く元気がない感じだった。


「香良洲」

「あっ。はい」

「とりあえずだ」

「はい」

「俺達は世界から捨てられたらしい」

「——真菅さん。さらっとすごい事言いましたね」


ちょっと香良洲から笑みがこぼれた。


「いや、そうじゃね?」

「——まあ、わからなくもないですが……」

「まあとりあえずいいだろ」

「えっ?」

「だってここ食料はあるしさ。暇つぶしに店はあるし。ちなみに奥には部屋もあるんだぞ?」

「あっ。ここ真菅さんの家」

「まあそういう事。だから――ここは何かおかしな空間ってことが香良洲のおかげで確定した」

「えっと――それ確定したところでどうなるんですか?」

「わからん」

「えー」


いや、本当にこの後俺達どうなるの?だったが。まあここで殺し合いでもしてみたら何かわかるかもだが――そんなことをもちろんすることはない。


「まあ香良洲」

「はい?」

「とりあえず、嫌だろうが。ここで過ごすか?」

「——いいんですか?さっきは追い出してましたよね?」

「状況が変わった。それに今の混乱している香良洲を1人にしてもだからな。あと――香良洲が来てお店が忙しくなりすぎたから。従業員がやっぱり必要」

「——なら――とりあえず真菅さん」

「うん?」

「せっかく戻ってきたので言わせてください」

「何を?」


俺の方をまっすぐ見て、何かを決心したかのような表情を香良洲はしてから――。


「ただいまです。また来ましたよ。塩むすびまたお願いします。私が満足する塩むすびを。あっお手伝いもしますね。以上です」

「……なんかいろいろ言ったな。こいつ。さっきまで落ち込んでいたのどこ行った?」

「言いました。よろしくお願いします。とりあえず理解しました。私たちは捨てられたんですね」


香良洲がそんなことを笑顔で言ったのだった。あれ?もう大丈夫なのだろうか?俺たいして良い事言ったとかないんだが――なんで立ち直った?まあいいか。


「—―本当はもう来るなよ。って言ったんだがな。っか。無駄に難易度高くないか?確か香良洲だけ簡単に満足してくれなかったんだが――」

「かもしれませんね」


香良洲が笑いながら――どうやらお店に立つつもりなのか。エプロンを付けて――と準備しているが。


このお店。休みなしではない。そんなブラックなお店を作った覚えはないからな。


「香良洲」

「はい?」

「さすがにそろそろ俺休みたいからお店今日は閉めたいんだが――」

「閉めていいんですか?ここ」


ちょっとビックリという表情の香良洲。いやいやずっと働くつもりなのかよ。休みないしで。


「問題ないはず。ってかちゃんと閉める時間は閉めてる」

「え、っと――じゃあ私は?」

「とりあえず――裏使うか?」

「——お邪魔では?」

「まあ親が居た部屋あるし。部屋はある。さすがに初日に過労で倒れましたは嫌だからな。倒れたら消えるのかもだが」

「——確かに、倒れたら倒れたで、それはご迷惑を――ですね。あれ?でも消えた方がいいんですかね?」

「何とも言えんが――目の前で倒れられてもだからな」


俺が言うと香良洲はエプロンを再度畳んでいた。


「じゃ、お言葉に甘えて――」

「こっちだ――あっ、ちょっと待ってくれ」


俺について来るように香良洲に言おうとしたが――って。タイムタイム。ちゃんとお店を閉めておかないとなので、俺は香良洲の横を一度通過して――お店のclauseを確認。よしである。これで客は――来ないはず。


「よし。休もう」

「はい」


再度俺が声をかけると香良洲がお店の奥へと付いてきたのだった。俺がドアを開けると――香良洲が付いて来て――香良洲がドアを閉めたのだった。


――バタン。

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