第7話 嵐は続く
唐突に忙しくなった俺のお店。あれからも人の波はしばらく切れなかった。ホントちょっと一息。ということもなく。ひっきりなしに人がやって来た。
おいおい、何が起こってるんだよ――ってか、何か起こった?と俺は思いつつも必死に接客である。香良洲も今のところ――目を回しつつ。と言えばいいのか出来る限り必死に頑張ってくれている。って――香良洲よ。既におにぎり代?だったか?もう忙しすぎて香良洲の注文忘れだしたよ。なのだが――まあその代金分の働きは終わっているかと思う。でも――俺の希望的にはこの波が終わるまで頑張ってくれである。
カランカラン……。
やっとお客さんが帰ったと思ったらまたお客さんきたよ来たよ。マジでどうなっているんだろうな。
……こんなことは言いたくないが――表で大量殺人的な事が――いやそれはないか。まあここに来る人がどういう経緯で来たかはわかってないし。でも――まあ何か悪さをして来たではないと思うんだよな。にしても何が起こっている?インフルエンザ的なものが流行った?うーん。ここに居ると外の情報は少ないからな。
ちなみにこの場所テレビ無いんだよ。親曰く映らないから必要ないとか昔昔に聞いた気がするが――テレビが映らないってね。外の情報なしである。
って、今も入って来たおばあちゃんのお手伝い中の香良洲。彼女も何故――ここに来たのか。それを確認する時間が――マジでない。
「大判焼きをくれるかね。あっ私ね。あんこ好きなんだよ。あんこ多めでお願いね」
俺がそんなことを思っていると。香良洲により席に案内されたおばあちゃんが注文をしてきた。って――大判焼きということは――焼く道具というか。型が必要なのでは?そんなものあったか?と、俺が思っていると――。
「大判焼き?」
おばあちゃんの隣に居た香良洲の頭の上にはてなマークが浮かんでいた。
「香良洲。大判焼き知らないか?」
「えっと――なんか聞いたことは……」
「じゃあ今川焼とか。回転焼きは?」
「あっ。回転焼き。あー一緒なんだ」
どうやら地域差というのだろうか。俺もあまり知らないんだがね。たまたま知っていたので言ってみると、それで香良洲の謎は解けたらしい。
その後香良洲はあんこ多め希望のおばあちゃんと大判焼き。回転焼きについて話していた。
ちょっと聞いていると、中身の話をしているみたいだったな。あんこ多め希望のおばあちゃん。あんこと言いつついろいろ知っているみたいで、カスタードバージョンとか。チョコとかいろいろな話が出て来ていた。
ちなみに、やっぱりこの店おかしいわである。
絶対大判焼きを焼く道具なんてないだろ。と思っていたら――あったよ。引き出し開けたらあったよ。おかしいだろ。うん。絶対つい先ほどまではなかったぞである。
でもまあその後店内には言い香りが……。
「お待たせしました。あんこ多めの大判焼きです」
「美味しそう――あっ、すみません」
どうやら香良洲。働きっぱなしで甘いものが欲しくなっているみたいだった。
「香良洲も食うか?材料あるぞ?」
「えっ。いや――」
「あらお嬢さん。一緒に食べましょうよ。もう一つ頼めるかい?」
「かしこまりました」
「す。すみません」
ちょっと恥ずかしそうにしていた香良洲。まあそれから数分後。あんこ多め希望のおばあちゃんとともに大判焼き。あっ、香良洲にとっては回転焼きか。まあ言い方だけで同じ商品なんだが……ちなみに香良洲に渡したのは普通の量のあんこ。あんこ多め希望のおばあちゃんのは――ホントに皮が薄めという感じで、あんこたっぷりである。
それからあんこ多め希望のおばあちゃんと香良洲が雑談をしつつ食べる。という時間があり――あんこ多め希望のおばあちゃんはお礼を言って去っていった。
カランカラン……。
って、また休憩なしだった。いや、先ほど香良洲とあんこ多め希望のおばあちゃんが話している間。俺は片付けをしていたから休憩と言えば休憩だったのだが……ホント周りを気にせず休みということが無いんだよ。
「おう、兄ちゃん。かき氷頼むよ」
「——かしこまりました」
「いらっしゃいませ」
次に来たのは――大変元気なおっちゃんだった。いい感じに日焼けしており。頭にはハチマキ。大工さんだろうか?なんか頭みたいな感じだった。などと思いつつかき氷機かー。と俺が思いつつ探すと――今度は戸棚からこんにちは。だった。すると――。
カランカラン……。
またお客さんが来てしまった。ホント行列が出来てしまいそうだよ。
「いらっしゃいませ」
香良洲が接客に向かう。
「べっぴんさんが居るな」
「えっ?私」
「いい店だな。おい、筑前煮あるか?」
「あっ。わかりました。筑前煮ですね」
なんか聞こえてきたが――マジか筑前煮ね。これはかき氷を作ったらすぐに筑前煮――って、そうか。かき氷だもんな。うん。出来るよな。
「筑前煮。お願いします」
「香良洲?」
「はい?」
「かき氷頼む」
「えっ?」
俺のところへと来た香良洲に俺はいい。香良洲に氷をパスする。良い大きさの綺麗な氷が冷凍庫にあったんだよ。いつの間にだろうな。
「冷たっ」
「ファイト」
「えっ?」
「おっ、かわいいお姉ちゃんが作って食えるのか。じゃ、かき氷もう一杯」
……いやいや。まだ1杯目も出来てませんが――と俺は思いつつも香良洲にかき氷は任せて筑前煮の準備を開始した。
「香良洲。たっぷりでいいぞ」
「いやいや大丈夫ですか?」
恐る恐るという感じで香良洲が氷を削っているいる。それを見守る男3人。うん。お客さん2人。筑前煮頼んだ人も見てたよ。
「大丈夫だろ」
「お姉ちゃんこんもりくれ」
「あ。はーい」
それからの事を話すと、香良洲はかき氷を7杯作ったのだった……えっ?数が合わない?まあその後の事を言うとな。
まずは一番初めにかき氷を頼んだ……大変元気なおっちゃんが3杯うん。3杯も食ってたよ。さすがに3杯目。香良洲が心配していたが――ぺろりと食って帰って行った。向こうの世界でいきなり腹を壊してないといいが……。
そしてその後も筑前煮おじちゃん1杯食べて、すぐあとにやって来た髪真っ白なおばあちゃん1杯。さらにさらにその後入ってきた香良洲をナンパしていたおっちゃん2杯食べたため7杯も作ることになったのだった。
俺は休憩時間となったな。まあ最後のお客。香良洲をナンパするおっちゃんの相手をすることになったから――途中から戻ったが。
いやなんか香良洲に対して「この後どこか行こう」とかね。うん。この後の行き先って決まっているというか――まあ香良洲も本来なら行くべきなのだろうが……うん。なんか。このおっちゃんとは行かせてはいけないだろうと。という直感が働いたため。食べたら退場していただいた。
まあこの店の設定というか。まあ来る人は2回目がないのでね。出たらもう来ないである。
以上7杯ものかき氷注文が殺到。連続で来たのだった。まるで口コミでかき氷あるよ。と広がったみたいに――って、筑前煮を注文した人もさらっと追加注文していたというな。珍しいというか。うん。普通に他の人が頼んだものを――という人は居なかった気がするのだが。やはり香良洲が来てから何かがおかしいのか……。
カランカラン……。
って、まだ終わらないんかい!
俺はそんなことを思いつつ入り口を見る。
香良洲もやっとかき氷から解放――だったが……。
次のお客さん。また女好きというか――。
「おうおう。ぴちぴちのかわいい子が居るじゃないか――ひっくっ」
「……」
「……」
今日は今までにはなかったお客が良く来る。
今度来たのは下駄を鳴らしつつ――完全に出来上がっている酔っぱらい。茹でタコみたいな爺だった。うん。爺だ。エロ爺でもいいかもしれない。
「おう、大将ー。このぴちぴちの子くれー」
「……」
「……」
香良洲は俺の横に居たのだが――一歩も動いてない。うん。まあ近寄りたくないわな。って――なんでこんな客が来たのか……。
「はぁ……今日はおかしなことが多いな。香良洲」
「あ、はい」
「いいか。水持っていく。飲ませて、そっと外へ――って声かけろ」
「えっ?ええ?」
「いいから」
「あっ――はい」
ちょっと嫌そう――かなり嫌そうな表情をしてからも作り笑顔で水をエロ爺のところに持っていく香良洲。
「えっと――お水です」
「おうおう――ええ子だ」
「え、えっと――とりあえずお水飲んで――外へ」
「任せろ任せろ――ひっく――」
エロ爺。酔っぱらっているがちゃんと香良洲の声は聞こえていて理解しているらしく――香良洲が運んだ水を一気飲み。そして――
カランカラン……。
「……」
「……」
エロ爺はそのままご機嫌で外に出て行き――うん。俺の直感的にはいなくなったな。
その後固まってる香良洲の横を通過して――外を確認してみると――静かで誰も居ない店の前だった。
「えっと――えっ?何で?」
「いや。ここで何か食うか飲んで出て行ったら基本さようならだからな。そういえば前にビールだけ飲んで帰った客が居たな―と。だから水でも飲ませて一緒に行く振出もしたら勝手に消えるんじゃないかなーってな。まあお疲れ香良洲」
「ふー、そんなことあるんですかーって、でも良かったです」
疲れた。良かった。という感じで香良洲は近くの椅子に座ったのだった。
エロ爺が居なくなった後。お店はいつも通りの静かさを取り戻したのだった。
静かって―—いいな。
エロ爺襲来後はやっと普通――というのか。まばらに人が来た。
シフォンケーキを注文してきたおばあちゃん。そういえばその際に時間がかかると俺が言うと。香良洲と何だっけ?手芸?クロススティッチ?とか言うことをなんかしていたな。うん。超お店でのんびりする人が現れたり――まあ香良洲的にはエロ爺相手よりこちらの方がはるかに良かっただろう。
ちなみにシフォンケーキを作っている時には逆にエロ爺に次ぐくらいの速さで帰ったお客さんも居たんだがね。
「きゅうりの漬物あるかね?」
そんな注文をしてきたおばあちゃんだ。そして冷蔵庫で俺が漬物を発見して出すと――食べてそのまますぐおかえりになりましたとさ。うん。
食べて帰る。まあ普通の事だが――あまりに早いことで、シフォンケーキのおばあちゃんとともに居た香良洲は気が付いてもなかったかもしれない。真剣にクロスステッチ?とか言うのを教えてもらっていたからな。ちなみに最後には四葉のクローバーが完成していたな。
ちなみにシフォンケーキいい感じに出来たよである。そしておばあちゃんが完食のち次こそお店は平和になったのだった。
……って、なんだ今日は?何が起こった!?だったな。過去最多の来客だ――。
カランカラン……。
「まだ終わってないだと……」
今日はどうやら――休めないらしい。
その後も香良洲が注文を聞いて、俺が作っている。そして料理が出来るまでの間は、香良洲がお客さんの話し相手。そんな感じで時間は流れていった。
ちなみにその後俺が作ったものと言うと――日の丸弁当食べたいやら。異世界料理ってぽい力がつく鍋が食べたいやら。黒いおでんが食べてみたいやら。いろいろ手間のかかる注文が多くてね。香良洲が居てくれてよかっただった。俺は料理に集中出来たからな。
香良洲は香良洲で俺にいろいろ聞きたいことがあったみたいだが――そんな暇はなかった。ってか、香良洲が居てくれてよかった。とも再度思う俺だった。マジですごい人の入りだったからな。
突然のバタバタからさらに。やっと――やっと一段落した時のこと。
香良洲が俺の横へとやって来たのだった。
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