第3話 いつものやり取り
俺がいきなりお店を継ぎしばらく時が経過した。
多分今日も大通りの方は賑わっているだろうが……って、行ってないからわからないな。いや、地味に遠いってか。この店がね。大通りから離れ過ぎてるんだよ。びっくりするくら路地裏のさらに奥。ってかホントずっと奥だし。それに店番がいないから営業中の時はあまり店から離れれないし。まあ開店前とかに行けばいいだろ。と言われるかもしれないが。それじゃピークの時間帯を見れないんでね。それに――無駄に外に出て行く必要はないし。
ってまあ、店番やらやら。店の事を俺が言っているということは奇跡的にお店は残っているということだ。
俺が引き継ぐ倒産させた。お店を潰したということは今のところない。
今日も路地裏のさらに奥。超奥。まだまだ奥で営業中である。ほんと意味のわからない場所でね。マジで何でこんなところで――なんだか。毎日思っている俺だった。
そういえば今更になるかもしれないが。両親が切り盛りしていたお店の名前は「彷徨い飯」という。
はじめは、なんだそれ?だったのだが――これについてはちらっと両親から聞いたな。
『当てもなくふらふらしている人に来てほしい。美味しいご飯を食べて帰ってほしいだけだ。だからこの店はメニューもない。頼まれたものを作るそれがこの店。お客さんが食べたいと言ったものを何が何でも作るのがこのお店だ』
やらやらだったか。確かそんなことを聞いた気がする。って――お店の名前の由来に関しては聞いたのだが――俺この店の読み方を知らないというね。
何でこの店こんな名前なんだ?と聞いた時は――看板見つつだったし。親も――名前は言わなかったんだよな。
普通に読めば――『さまよいめし』?かと思うのだが――親の事だと別の読み方をしていたのかもしれないが――謎が多い店だホント。まあお客さんもお店の名前に関しては今のところ聞いてこないんでね。俺的にはセーフだったりしている。でもまあ――聞かれたら『さまよいや』とか。やはりそのまま『さまよいめし』いや。意外性というか。そんな読み方あるのか――っていうのも面白いかもしれない。まあそのうち考えてみるか――って、まあお店の名前なんて気にしない人にとってはどうでもいい話か。無駄なことを話したな。
それから俺は今日も「~本日も営業中です~」と書かれている看板をお店のドアにかけた。 そうそう営業時間。適当である。いいだろー。俺が起きている間。まあでもそこそこの時間はちゃんと営業しているんでね。
そういえば営業中やらやらの看板だが――これ……手作り感が満載だから。親が作ったのかもしれない。まあ、今じゃわからないことだがな。謎は謎のままだ。
看板をかけた俺は背伸びをしつつ周りを見る。ちなみにだが。今のところお店の周りを歩いている人は全くいない人っ子一人いない。人以外の生き物も――多分いない。
そんなことを思いつつチラリと振り返ればボロボロの廃墟ビルに見える建物がある。うん。目の前にドン!だな。って、ここは今は俺の店や家があるところだ。
ここは――マジで廃墟ビルで説明はいい気がする。まあ中は――まだマシなんだがね。
にしてもホント俺は何をしているのだろうね。こんなところで…… 脱走していいなら脱走……まあ無理だろからしないが。ってか、ここに居れば。まあ、生活はできるんだよな。謎なことに。だから平和っちゃ平和である。お店を開けていればなんか不自由なく生活している。
お店が閉まっている時も部屋では普通に俺過ごしているからな。特に困ることなくね。この廃墟ビルみたいなところで――。
っか、日差しくらいちゃんと届いてほしいな。現段階でこの場所にはほとんど太陽の光が届いてないというね。ちょっとお店の前から歩いたら太陽の光が届いているところはあるのだが――俺のお店には今の時間帯では太陽の光が当たらないというね。ってか。多分時間が経過してもほとんど太陽の光は当たることなく今日も思わっていくと思うが――マジでおかしなところにある店だよ。
植物もだが。人も太陽の光はたまには必要だと思うんだがね。まあ普通に1人暮らしをしていた時は、暑ければ太陽から逃れ――寒ければ太陽の光の下へ――だったが。勝手に室内に太陽の光が入って来るって……すごい事だったんだな。
今はマジで太陽の光が差し込むって事がほとんどないからな。ごくごく稀に――ちょっとだけ入ってくる角度があるみたいだが――こんな場所にあるからダメなんだな。
自然の光があった方がお店の雰囲気良くならないか?なんだが――まあ今更建て替え。移動は……無理だろうな。なんか知らんがここでお店を開いていれば生きていけているが――お金は貯まってないからな。全く。ってかここ最近お金なんて触ってもない気がしてきた。
などなど俺はいろいろなことを思いつつ店内へと戻った。いや、1人だとね。無駄にいろいろ考えるという。誰かが居れば他の話にもなるのだろうが――今は1人だし。って――そもそも1人暮らしの時から俺はこんな感じか。
1人ばかりで何か考えだしたらずっと考えている。だって止める人が居ない。話しかけてくる人が居ないんでね。つまり――今も昔も同じ生活をしている俺だった。
なんだ。俺の生活何も変わってないじゃん。
そうそう俺が店を任されてから――いや、強制的にだが。ここ大切。強制的にお店を引き継ぐことになったのだが……まあ文句を言うところもないので特にこれと今思うことはないが――今はね。まあ少し前の事を言うと。
「なんなんだよ!どうなってるんだよ!」
……などとちょっとだけ誰も居ない店内に文句を言ったのは数週間前の事だったかと思う。いや、声に出して思いを吐き出す大切だよ。ちょっとスッキリするし。
以上。すっきりしたことだったからちょっと紹介してみたという。さらに無駄な話というね。
まあ俺が1人で文句を言ったところで現状は何も変わらず。とりあえず俺は他にすることもないので店を毎日開いている。開店休業状態なることもあるがな。
でも自慢ではないが。すでにそこそこの人数のお客さんを多分満足させているはずである。
ってか。ここに来るお客さん店員が変わったのに誰一人として何も言って来ないんだよな――まあいいが。気にしていないだけかもしれないし。
いや……なんとなくわかりだしてるけどよ。
まあとりあえず「美味しかった。ありがとう」などという感謝の言葉を聞けているので――よしとしている。気分は良いしな。
そうそうこのお店に関しての事を言うと今のところこのお店は年齢層が高い気がする。こういう雰囲気が落ち着くのかご高齢の方が――などと思っていると……。
カランカラン……。
お店のドアが開いた。今日は開店早々お客さん登場らしい。さっきは誰も近くを歩いてなかったのに、と俺が思いつつ入り口の方を見ると――。
腰の曲がったおじいさんがお店へとやって来たのだった。おじいさんは腰は曲がっているが。しっかり歩いて席へと座った。
「いらっしゃいませ」
俺はいつも通りの挨拶をする。すると腰の曲がったおじいさんは周りを見つつ。
「落ち着いた店じゃの」
「ボロなだけですよ」
「わしは好きじゃのー。そうそうお店に来たんだから何か頼まんとの。どうしようかの?わしゃあれだ。ほんのり甘いご飯をくれんか?」
「……甘いご飯ですか?」
俺は注文を聞いた後。いつものように、何があるんだ?と思いつつまずは食材、材料の確認をしてみる。
そうそう材料に関してだが。なんか突然現れるというか。届くのか。というのは未だにわかってないし。食材に関しても支払いとかどうなっているんだろうか――なのだが。まあ誰も何も言って来ないのでそのままにしてある「金払えー」とか言われていたら早急にいろいろ考えないと言いけないが――今のところホント何も誰も言ってこないしな。だからそのままにしてある。マジで「支払いしろ!」とかがないんだしいいよな?ダメか?誰かアドバイス願い。
……いやだってよ。ほんと勝手に届くなんだよ。
いや、マジでお客さんの注文を聞くか。お客さんが来る前に、冷蔵庫や棚を開けたら食材がこんにちは状態でね。だから……謎なことにはあまり触れない方が正解な気もしてきているのだが――俺が生活出来ているしな。いいだろう。よし決定。食材は勝手に現れるが俺は関わってない。勝手に出てくるのは食材だ。だから俺はそれを無駄にしないように使っている。よし、そういうことにしておこう。
とりあえず俺も未だにいろいろ気にはなっているが――まあ受け入れるってことも時には大切だよ。である。考えても無駄なことはあるからね。食材が突然出てきたり。お金のやりとりがない。などというのはここでは普通なんだよ。そうだ。普通なんだよ。だから何も気にしなくていいだな。
って、腰の曲がったおじいさんの接客を忘れるところだった。
俺はそんなことを思いつつ。食材、材料の確認をしてみると――。
今のところあったもの。というか。現れていた物は米。干し芋に……三つ葉。味噌に玉ねぎ。わかめ……まあ、なんとなく作るべきものはわかった。
いつも現れる食材で作れと言われている料理は予想できるんでね。たまに難しいのもあるが……まあ今回はシンプルそうだ。
「でしたら……干し芋ご飯ですかね?お味噌汁付きで」
「あー、そんなんじゃったな。そうじゃそうじゃ婆さんがよー。作ってくれたわ。その組み合わせで頼む」
「はい」
腰の曲がったおじいさんがそういうと、俺はお米などの準備を開始しながら話を続けた。
このお店は料理を出すまでに時間がかかる場合がほとんどだ。なるべく沈黙は避けないとという。難しいミッションもあるんだよ。まあ静かに時が流れることもまあまああるが――って、ちなみに9割くらいは料理ができるまで時間がかかるな。稀に即できる物もあるが――それはレアだな。特にご飯が必要という時点で数十分はかかるからな。
「—―干し芋も家で作っていたんですか?」
「婆さんがな。あれは――なんていうのか。ほれ、網いうのか。洗濯干すところにかけておったわい」
「あー、なるほど。いいですね。お婆さんの干し芋も美味しそうですね」
「美味かったな」
「ちょっとおばあさんの作った干し芋とは味は違うかもですが美味しくなるように頑張ります」
「楽しみじゃの。久しぶりじゃからな」
俺は話しつつ。小さな釜でご飯の準備を行う。 それと同時に味噌汁の準備も始める。
ご飯が出来るまで少し時間がかかるので、俺はお茶と余った干し芋をすこし腰の曲がったおじいさんの前に置いた。
干し芋を置くと腰の曲がったおじいさんは手で取り一口食べた。
「おー、美味い芋じゃないか。うんうん。美味い」
干し芋を食べた腰の曲がったおじいさんはそんなことを言いながら昔話をしばらくしてくれた。
腰の曲がったおじいさんの生まれた時から始まり――いや、始まったんだよ。腰の曲がったおじいさんの人生話がね。
まあ俺としては沈黙になるよりいいので料理をしつつ聞いていた。
約45分ほどの腰の曲がったおじいさんのお話。なかなかのものでした。
途中から腰の曲がったおじいさん絶好調なのか。俺が居る事忘れているんじゃないだろうか?というレベルで語っていたからな。俺が口を挟む暇なく。どんどん思い出した事というか。頭の中にあったことを口に出しているという形だった。
ちなみに話を聞いていてビックリしたことといえば……腰の曲がったおじいさん子供が9人も居るとか。マジかよ。だったのだが――俺が確認する間もなく腰の曲がったおじいさんのお話は続いていたのだった。
話の後半は――おばあちゃん。奥さん?の話だったな。ラブラブというのがよくわかるお話が続いたのだった。
腰の曲がったおじいさんがずっと話してくれているとご飯が炊け、店内にはほんのり甘い香りが漂ってきた。そして干し芋ご飯と、味噌汁が出来ると……。
「おまたせしました。干し芋ご飯とお味噌汁になります」
俺は腰の曲がったおじいさんの前に料理を置いた。すると腰の曲がったおじいさんの人生談は終了となった。
「いい香りじゃ、懐かしいの。これは「ばあさんとの思い出の料理」じゃな」
「ごゆっくりどうぞ」
俺が料理を腰の曲がったおじいさんの前に置くと――あっという間に腰の曲がったおじいさんは完食していた。食もしっかりしているよ。である。めっちゃ食べるの早かった。もっとご飯必要――おかわりが必要だったのかな……だったが。満足げな顔をしているので良しと見た俺だった。
それから腰の曲がったおじいさんは席でお茶を飲みつつゆっくりとしていた。休憩タイムだな。お店の中はのんびりとした時間が続いた。
俺が片付けをしていると……後ろから腰の曲がったおじいさんの小さな声が聞こえてきた。
「——もう食べれんのは残念じゃの――美味かった」
それからしばらくすると湯呑みを置く音が後ろでした。俺が振り向くと腰の曲がったおじいさんが席を立ちあがるところだった。
「足元お気をつけてください」
「ああ、ありがとよ。美味かった」
腰の曲がったおじいさんはゆっくりと歩き出す。しっかりと自分の足で歩いてお店を出て行く。
カランカラン……。
腰の曲がったおじいさんが出て行くとまた店内は静かに。そして……温もり。気配も消えた。
俺が店を強制的に継いでからは――やはりなのか高齢のお客さんが多かった。まあ若い人。同年代や年下は来てほしくないな。ってか、高齢の人でもあまり来てほしくないが――と思いつつ。最近お客さんがお店を出て行った後に言うようになった言葉を俺は今日もつぶやいた。
「—―もう来るなよ」
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