グルメ小説コンテスト用 第3話 年齢層は基本高い

そういえば今更になるかもしれないが。両親が切り盛りしていたお店の名前は「彷徨い飯」という。

はじめは、なんだそれ?だったのだが――これについてはちらっと両親から聞いたな。当てもなくふらふらしている人に来てほしい。美味しいご飯を食べて帰ってほしい。とか。だからこの店はメニューもないと。

お客さんが食べたいと言ったものを作るだけ。やらやらだったか。確かそんなことを聞いた気がする。


まあお店の名前なんていいとして――。

今日も俺は「~本日も営業中です~」と書かれている看板をお店のドアにかけた。

俺が店を任されてから――いや、強制的にだが。ってまあ文句を言うところもないので特にこれと今思うことはないが――まあ少し前の事を言うと。


「なんなんだよ!どうなってるんだよ!」


……ちょっとだけ誰も居ない店内に文句を言ったのは数週間前の事だったかと思う。


とりあえず俺は他にすることもないので店を毎日開いている。


ちなみに自慢ではないが。すでにそこそこの人数のお客さんを多分満足させた。

ってか。ここに来るお客さん店員が変わったのに誰も何も言って来ないんだよな――まあいいが。気にしていないだけかもしれないし。


とりあえず「美味しかった。ありがとう」などという感謝の言葉を聞けているので――よしとしている。


そうそうこのお店に関しての事を言うと今のところこのお店は年齢層が高い。などと思っていると……。


カランカラン……。


お店のドアが開いた。今日は開店早々か。と俺が思いつつ入り口の方を見ると――。

腰の曲がったおじいさんがお店へとやって来た。

腰は曲がっているが。しっかり歩いて席へと座った。


「いらっしゃいませ」

「落ち着いた店じゃの」

「ボロなだけですよ」

「わしは好きじゃのー。そうそうお店に来たんだから何か頼まんとの。わしゃあれだ。ほんのり甘いご飯をくれんか?」

「……甘いご飯ですか?」


俺は注文を聞いた後。食材、材料の確認をしてみる。


ちなみに材料に関しては――なんか突然現れるというか。届くのか。というのは未だにわかってないし。支払いとかどうなっているんだろうか――なのだが。まあ誰もないも言って来ないのでそのままにしてある。


いやほんと勝手に届く。なんだよ。

いや、マジでお客さんの注文を聞くか。お客さんが来る前に、冷蔵庫や棚を開けたら食材がこんにちは状態でね。だから……触れない方が正解な気もしている。


まあ言いたいことはたくさんあるかもしれないが。制限があるんでね。割愛させてくれ。制限?ってなんだって?まあいろいろだよ。文字数とか。えっ?あー。これは違うか。忘れてくれ。


でもまあ実際俺も気にはなっているが――まあ受け入れるってことも時には大切だよ。である。考えても無駄なことはあるからね。


とりあえず俺が食材料の確認をしてみると――。

今のところあるのは米。干し芋に三つ葉。味噌に玉ねぎ。わかめ……まあ、なんとなくわかった。現れる食材で作れと言われている料理は予想できるんでね。


「干し芋ご飯ですかね?お味噌汁付きで」

「あー、そんなんじゃったな。そうじゃそうじゃ婆さんがよー作ってくれたわ」


腰の曲がったおじいさんがそういうと、俺はお米などの準備を開始しながら話を続けた。

このお店は料理を出すまでに時間がかかる場合があるんでね。なるべく沈黙は避けないとという。難しいミッションもあるんだよ。


「—―干し芋も家で作っていたんですか?」

「婆さんが網いうのか。洗濯干すところにかけておったわい」

「あー、いいですね。お婆さんの干し芋も美味しそうですね」

「美味かった」

「ちょっとおばあさんの作った干し芋とは味は違うかもですが美味しくなるように頑張ります」

「楽しみじゃの」


俺は話しつつ。小さな釜でご飯の準備を行う。 それと同時に味噌汁の準備も始める。

ご飯が出来るまで少し時間がかかるので。俺はお茶と余った干し芋をすこし腰の曲がったおじいさんの前に置いた。


「おー、美味い芋じゃないか」


すぐに干し芋を一口食べた腰の曲がったおじいさんはそんなことを言いながら昔話をしてくれた。

それからしばらくおじいさんと話しているとご飯が炊け、店内にはほんのり甘い香りが漂った。

そして干し芋ご飯と、味噌汁が出来ると……。


「おまたせしました。干し芋ご飯とお味噌汁になります」

「いい香りじゃ、懐かしいの。これぞ「ばあさんとの思い出の料理」じゃな」

「ごゆっくりどうぞ」


俺が料理を腰の曲がったおじいさんの前に置くと――あっという間に腰の曲がったおじいさんは完食していた。食もしっかりしているよ。である。

それから腰の曲がったおじいさんは席でお茶を飲みつつゆっくりとしていた。


俺が片付けをしていると……後ろから腰の曲がったおじいさんの声が聞こえてきた。


「もう食べれんのは残念じゃの――美味かった」


それからしばらくすると湯呑みを置く音が後ろでした。

俺が振り向くと腰の曲がったおじいさんが席を立ちあがるところだった。


「足元お気をつけてください」

「ありがとよ。美味かった」


腰の曲がったおじいさんはゆっくりと歩き出す。しっかりと自分の足で歩いてお店を出て行く。


カランカラン……。


腰の曲がったおじいさんが出て行くとまた店内は静かに。そして……温もり。気配も消えた。


俺が店を強制的に継いでからは――やはりなのか高齢のお客さんが多かった。まあ若い人。同年代や年下は来てほしくないな。ってか高齢の人も来てほしくないが――と思いつつ。最近お客さんがお店を出て行った後に言うようになった言葉を今日もつぶやいた。


「—―もう来るなよ」

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