第2話
それでも僕は君を引き止めなかったことをすぐに後悔した。
君に別れを告げられ、最後に
「納得した?」
と聞かれて。
僕は小さな声で、
「やだ。」
と言った。
ただのわがままだ。僕は何もできない。どうしたいのかも分からない。それでも君と別れるのは嫌だった。心からほんの一言だけ漏れてしまっただけだ。
「もう一回言って。なんて言ったの。」
と君に言われたけれど僕にはもう一度わがままを言う勇気はなかった。
僕はつい、
「なんでもないよ。」
と誤魔化してしまった。これが僕だ。結局何も出来ず。勇気を出すことも出来ず。たった一言告げることも出来ず。何も分からないまま。分からないを言い訳に逃げてばかり。こんな人生、こんな僕の事が嫌になってくる。
「なんでもないの。じゃあ切るよ。じゃあね。さようなら。」
そう言って君は最後の電話を切った。
電話が切れた瞬間僕は張っていた糸が切れたかのように突然泣き出した。久しぶりに声を上げて泣いてしまった。全然止まらなくて、やだ。まだ一緒にいたかった。やだよ。とついつぶやいて。君がそれを聞いているわけもなく。君との関係は一番近い関係から一番遠い関係になってしまったのだ。
もう少し本音を言っていればよかった。勇気を振り絞ってもう一度言えばよかった。そうしたら、もしかしたら、なにか変わっていたかもしれない。今になってはどれだけ後悔しても意味がない。この後悔は君に届くわけないのだから。一時の恥を偲んで君に本音を伝えてしまえばよかった。もう少し君に甘えておけばよかった。君を不安にさせるような行動をしなければよかった。もっと愛情表現をしておけばよかった。今更反省したってなんの意味もないのに。本当に馬鹿みたいだ。
僕はこれからどうやって生きていけばいいのだろう。
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