雪のしずく

よぞら

　僕は君を引き止めることができなかった。結局勇気が出なかった。なんと言って引き留めればいいのか分からなかった。君を引き止めてしまっていいのか分からなかった。引き止める資格があるのか分からなかった。君は本当に僕のことを好きでいてくれたのか分からなかった。

　僕には君の考えていることが分からない。どれが本音でどれが偽りの言葉なのか、どれが偽りの感情なのか。本当は僕を試しているだけで、遊んでいるだけで、ふざけているだけで、ここでわがままを言ったら僕の前から消えて、いなくなってしまうのではないか。そんなことを考えていたらどれを信じればいいのか分からなくなった。本当に甘えていいのか嫌われないか不安で甘えられなくなった。君のために僕は何が出来るのか分からなくなった。僕には何もできないことが分かってしまった。

　僕は君を引き止めることを辞めてしまった。