第198話 風流洞攻略14日目(5):アラネア・ポリュプス再戦(上)

 ――第四二階層。


 俺たちはガーディアンやセンチネル、複数相手の戦いで連携を試した。

 数戦やってみて、分かった。

 ここでもルーカスはさすがだった。


「すぐに馴染んだな」

「ボウタイ時代に、いろいろな相手と組んだからな。即興も慣れている」

「じゃあ、もう少しいろんなバリエーションを試してみよう」


 四人全員で四方から攻撃をするパターン。

 防御に徹し、俺の精霊術で攻撃するパターン。

 ステフが敵の攻撃を防いで、ルーカスとシンシアが飛び出すパターン。


 いろいろ試してみたが、どれも上手くいった。

 というのも、ルーカスは戦闘をコントロールするのが巧みなのだ。


「なんか凄い戦いやすかったぞ。さすがは師匠だ」

「思いっきり動けるわね」

「ああ、俺もやりやすかった」

「年の功だ」


 俺も戦闘コントロールには自信があったが、まだまだルーカスには及ばない。

 いつまで彼と一緒に戦えるか分からない。

 その間にひとつでも多くのことを学びたい。


「リーダー」

「ん?」

「ここからは指揮を任せたい」

「……」


 今までは事前に作戦を決めるだけで、戦闘中に指示は出さなかった。

 ルーカスはそれを俺に任せると言う。

 俺の気持ちを察したのか、俺に学ばせてくれるようだ。


「ああ、任せろ」

「あるじどのー、がんばるー」

「ここからは全力だ」

「シンシア、サラ、アイツはいる?」

「いるー」

「ええ、復活してるわ」

「まずは、アイツを倒そう。そしたら、第四三階層だ」


 アイツとは、アラネア・ポリュプス――このフロアのボスだ。

 前回トライしたときは、比較的楽に勝てた。

 一度戦ったので、敵の行動パターン、弱点は知っている。

 というか、俺の【風凝砲ウィンド・キャノン】なら一発で倒せる。


 勝てるのは当たり前、戦闘技術と連携を駆使して、力押しせずに勝つ方法。

 俺は頭の中で作戦を組み立てる。

 よし、ルーカスというピースがピッタリと当てはまった。

 歩きながら、ルーカスにアラネア・ポリュプスのことを説明する。

 説明が終わる頃、ちょうど目的地にたどり着いた。


 大きな扉。

 この先にヤツがいる。


作戦会議ブリーフィングだ――」


 皆に、作戦を伝達する。

 そして、精霊によるバフ。


『火の精霊よ、皆に加護を与えよ――【火加護(ファイア・ブレッシング)】』

『風の精霊よ、皆に加護を与えよ――【風加護(ウィンド・ブレッシング)】』

『水の精霊よ、皆に加護を与えよ――【水加護(ウォーター・ブレッシング)】』

『土の精霊よ、皆に加護を与えよ――【土加護(アース・ブレッシング)】』


「ほう、これが。想像以上だ」


 ルーカスは感嘆する。


「これが精霊術だ」

「最強職というのも納得だ」

「シンシア、ステフ」

「うん」「ああ」


『――【聖気纏武(せいきてんぶ)】』


 シンシアが聖気を纏う。

 そして、ステフの肩に手を置く。


『――【オーラ・レセプター】』


 ステフがスキルを発動させ。

 シンシアの聖気がステフを包み込んだ。


「ルーカスも」


『――【闘気纏武(とうきてんぶ)】』


「これが今の最強状態だ。行くぞ」


 メンザがいないので、防御力は落ちている。

 その代わり、攻撃力は爆上げだ。

 ゴリ押しで勝てるが、今回は俺の指揮が上手くいくかの練習だ。


 部屋に入る。

 高い高い天井。


 アラネア・ポリュプス――全長は五メートル。蜘蛛の身体に蛸のような頭部が乗っているモンスター。

 コイツが上から落ちてくる。


 前回は初見ということで様子見だった。

 今回も手出ししない――練習のためだ。

 全力を出したら、ここで倒せてしまう。


 俺は目を閉じる。


 ――ドンッ。


 アラネア・ポリュプスが着地した。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


前回のアラネア・ポリュプス戦は第142話から第144話です。

戦い方の違いを比べてもらえればと思います。




【6月30日発売】

 書籍第1巻、雨傘ゆん先生の素晴らしいイラストで発売されます。

 書籍版はweb版から大幅改稿、オリジナルバトル追加してますので、web読者の方でも楽しめるようになっています。

 2巻も出せるよう、お買い上げいただければ嬉しいです!



次回――『風流洞攻略14日目(6):アラネア・ポリュプス再戦(下)』

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