第661話
俺はひとまず、〖胡蝶の夢〗について調べてみることにした。
スキルの効果によっては、今後の戦い方が大きく変わるかもしれない。
オネイロスで手に入った特性スキルは他に〖竜の鏡〗があるが、こちらも強力なものだった。
もしかしたら既存スキルと強力なシナジーがあるかもしれねぇし、使い方次第でとんでもねぇ威力を発揮できるような類のものかもしれねぇ。
できれば、神の声相手にも有効打が取れそうな変わり種スキルだと嬉しいんだが……。
【特性スキル〖胡蝶の夢〗】
【夢と現**入れ替え叢Z極の蘇lヒキル。】
【者のHPがゼロになっこのスキルの所有た際に、夢とが曖昧になる。現実の】
【を夢へと追・゜ネ復そ**に自身の死活する。】
【このスキ**一繝サ遐する**失する。】
頭が一気に熱くなった。
脳が揺さぶられたような気がして、俺は顎を地に落とす。
視界が極彩色になり、ゆらゆらと揺れ、輪郭が溶けて混ざっていく。
やられた……!
まさかスキルに、何か罠でも仕掛けられていたのか!
神の声ならそれくらいできてもおかしくはない。
不用心だった、というよりは、奴の手札が膨大すぎる。
こんなことまでできるとは思っていなかった。
「グゥ、グゥオオオオオオオオッ!」
俺は咆哮を上げる。
慌てて何かが近づいてきて、視界で妙な光が爆ぜた。
ぼんやりと周囲の輪郭が鮮明になってきて、アロとトレントの姿が見えてきた。
「だ、大丈夫ですか、竜神さま!」
『主殿……! 〖ハイレスト〗を掛けておきましたが、どうでしょうか……?』
い、今の光は、トレントか……。
気持ち悪さや頭痛がだんだんと和らいできた。
なんだ、このスキルは、俺が見ちゃいけないようなもんだったのか?
いや、一概にスキルのせい、とは言い切れないかもしれねえ。
〖地獄道〗を手に入れたことや、〖ラプラス干渉権限〗のスキルレベルを上げた反動なのかもしれねぇ。
タイミングは妙だが……。
『悪い、二人共、心配かけちまったな』
ただ、思ったよりさっきの奇妙な感覚は一時的なものだった。
一応……試しに、もう一度だけ確認しておこう。
読み取れないにしても、認識できる範囲だけでもしっかりと頭に入れ、スキルの詳細や原因についての考察を持っておくべきだ。
【特性スキル〖胡蝶の夢〗】
【夢と現実を入れ替える究極の蘇生スキル。】
【このスキルの所有者のHPがゼロになった際に、夢と現実の境界が曖昧になる。】
【その際に自身の死を夢へと追いやり、完全な状態で復活する。】
【このスキルは一度使用すると消失する。】
今度はしっかりと読み取れた。
……さっきのがなんだったのか疑問はあるが、考えても答えは出そうにない。
かなり変わり種のスキルではあるが、別に神聖スキル絡みとも思えない。
オネイロスらしいスキルだ。
ひとまずさっきのことは置いておいて、スキルについて考えるとしよう。
どうやら、俺が死んだ際に効力を発揮し、HPとMPを全回復してくれるらしい。
一回こっきりらしいが、完全にぶっ壊れスキルである。
一度の戦いに限り、HPとMPが倍増するに等しい。
〖胡蝶の夢〗があれば、このスキルを切るだけでリリクシーラでもミーアでも全く危なげなく倒し切れていただろう。
オネイロス最大レベルでの習得に相応しい強力なスキルだ。
このスキルのためだけにオネイロスに進化しても悪くないくらいだ。
……ただ、これは神の声との戦いに絶対にとっておかねえといけねぇな。
それに、このスキルは手放しに信用できねえ。
俺が死んだときにしか発動しねえスキルなんざ手軽に扱えねぇのはそうだが、何よりも怪しいのがさっきのあの頭痛と得体の知れない感覚だ。
このスキルはもしかしたら、神の声の送り込んできたトロイの木馬なのかもしれねぇ。
一番最悪なのは……このスキルに頼って全回復したら最後、神の声に自我を乗っ取られるような事態だ。
あいつの目的は、自分より強い魔物を作って〖ラプラス干渉権限:LvMAX〗を習得させ、その力を用いてフォーレンとやらを復活させることだ。
だが、その魔物が神の声の言うことを聞くという保証はない。
その対策として洗脳スキルを送り込んできた……と考えると、筋が通っているようにも思える。
そうしたら最悪、神の声を倒すどころか、俺の代でこの世界を吹っ飛ばすことになっちまいかねない。
あくまで仮説だ。
実態はわからないが、手放しで〖胡蝶の夢〗の入手を喜ぶより警戒しておくべきだろう。
当たり前といえば当たり前の話ではあるが、能動的に作戦に組み込むような真似は、よほど追い込まれでもしない限りは考えない方針で行こう。
そして、もう一つ確認しなければいけないことがある。
俺の進化先である。
……恐らくは、俺の最後の進化だ。
次の進化種族で、神の声の奴をぶっ倒す必要がある。
神聖スキルは六道になぞらえられている。
俺が所持しているのは五つだ。
恐らくもう一つ、最後の神聖スキルである〖天道〗が存在する。
もしかしたら、全て集めてから進化を目指した方がいいのかもしれない。
だが、俺は一刻も早く元の世界に戻り、奴の〖スピリット・サーヴァント〗を倒さなければいけない。
〖天道〗の存在は、あくまで俺の仮説でしかない。
ミーアでさえその所在や有無については全く知らないようだった。
実態のわからねぇ、詳細不詳のものを求めて先延ばしにしている猶予はない。
【進化先を表示しますか?】
メッセージが浮かぶ。
俺は目を瞑り、頷いた。
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【未来】
【〖ピュートーン:ランクL+(伝説級上位)〗】
【〖ヌン:ランクL+(伝説級上位)〗】
【〖アジ・ダハーカ:ランクL+(伝説級上位)〗】
【〖アポカリプス:ランクL+(伝説級上位)〗】
【〖クロノス:ランクL(伝説級)〗】
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【現在】
【〖オネイロス:ランクL(伝説級)〗】
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【過去】
〖ウロボロス〗:ランクA
〖厄病竜〗:ランクB-
〖厄病子竜〗:ランクD+
〖ベビードラゴン〗:ランクD-
〖ドラゴンエッグ〗:ランクF
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