第660話
ミーアとの戦いが終わり、俺達は一度、天穿つ塔の外へと出ていた。
タナトスの亡骸を埋め、森にあった石を切り出して彼女の名を刻み、小さな墓を建てた。
『……不格好で粗末な墓で悪いな、ミーア。ここには危ない魔物も多いから、すぐに壊されちまうかもしれねぇ。でも、俺達も、先を急がねぇといけないからよ』
俺はミーアの墓へと頭を下げた。
俺に続いて、アロとトレントも頭を下げる。
『私の恨みや妄執なんて継がないでくれって、そう言ってくれたよな。だが、ミーア、お前だって最初は恨みのためなんかじゃなくて、この世界に神の声の奴の干渉のない、平和な世界を作りたくて、ずっと戦ってきてたんだろ? その願いは、神聖スキルと一緒にしっかりと継がせてもらったからよ。俺の望みは確かに、知ってる奴を守れたらそれでいいっていう、小さいもんかもしれねぇ。でもよ、そのために必要だっていうんなら、神の声ぶっ倒して、ついでに世界も救っておいてやる。だから、安心して眠ってくれよ』
本当に勝ち目があるのかどうかはわからねぇ。
だが、そんな戦い、今までに何度だって経験してきたんだ。
自称神様くらい、きっと……いや、絶対に打ち倒してみせる。
神の声の目的は、〖ラプラス干渉権限〗のレベルが最大の魔物を作って、ラプラスが封印しているフォーレンという化け物を解放することだと口にしていた。
神の声が何のためにそんなことをしたいのかはわからねぇ。
ただ、神の声は恐らく、この世界のシステムの内側に存在する。
少なくとも俺達同様にスキルを扱えるのは間違いないのだ。
〖スピリット・サーヴァント〗を使っていたし、〖ラプラス干渉権限〗も有していると口にしていた。
ゼロになれば死に至るHPが設定されていて、魔物扱いならランクだって有しているのかもしれない。
神聖スキルの同時保有数なのか、本体のランクなのかステータスなのかはわからないが、〖ラプラス干渉権限〗は所有者が強くなければそのスキルレベルを上げることはできないのだ。
そして神の声は、目的である〖ラプラス干渉権限:LvMAX〗を手に入れられてはいない。
神の声は、自身の目的を達成するために、自身より強い魔物を作る必要があるのだ。
そして従順でない俺に対しても、なるべくデータを取るためにギリギリまで強化したいと考えているようだった。
つまり、充分俺には神の声を超えられるポテンシャルが備わっているはずなのだ。
奴がその一線を見誤ったとき、俺の牙は奴の喉元へと届き得るはずだ。
勿論、可能性なんてどれだけあるのかわかったもんじゃねえ。
だが今までだって、それは同じことだった。
敵の規模がちっと跳ね上がったくらいで、今更そんなもんに怯えてはいられねぇ。
ミーアとの戦いを終えて、アロは【Lv:106/130】から【Lv:109/130】へ、トレントは【Lv:107/130】から【Lv:116/130】へと上がっていた。
【Lv100】を超えてなお一気に三つも上がったアロもそうだが、トレントのレベルの上がりようがマジで凄まじい。
ここにきて九も上がっている。
カウンターで大ダメージを稼げていたのが大きいのか。
俺はアロのステータスを確認してみた。
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名前:アロ
種族:ワルプルギス
状態:呪い
Lv :109/130
HP :92/92
MP :28/3414
攻撃力:1210
防御力:965
魔法力:2292
素早さ:1101
ランク:A+
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv4〗〖アンデッド:Lv--〗〖闇属性:Lv--〗
〖肉体変形:Lv9〗〖死者の特権:Lv--〗〖土の支配者:Lv--〗
〖悪しき魔眼:Lv7〗〖アンデッドメイカー:Lv--〗〖石化の魔眼:Lv7〗
〖飛行:Lv3〗〖不滅の闇:Lv--〗〖不吉な黒羽:Lv--〗
耐性スキル:
〖状態異常無効:Lv--〗〖物理耐性:Lv8〗
〖魔法耐性:Lv6〗〖物理半減:Lv--〗
通常スキル:
〖ゲール:Lv8〗〖カース:Lv6〗〖ライフドレイン:Lv7〗
〖クレイ:Lv7〗〖自己再生:Lv8〗〖土人形:Lv7〗
〖マナドレイン:Lv8〗〖未練の縄:Lv7〗〖亡者の霧:Lv6〗
〖魅了:Lv6〗〖ワイドドレイン:Lv6〗〖ダークスフィア:Lv6〗
〖吸血:Lv7〗〖デス:Lv7〗〖ミラージュ:Lv7〗
〖黒血蝙蝠:Lv7〗〖暴食の毒牙:Lv3〗〖暗闇万華鏡:Lv5〗
〖
称号スキル:
〖魔王の配下:Lv--〗〖虚ろの魔導師:Lv8〗〖朽ちぬ身体:Lv--〗
〖アンデッドの女王:Lv--〗〖不滅の魔女:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗
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改めて見ると、魔法力の上昇具合がやっぱりえげつねぇ。
二千台の壁を楽々と突破している。
スライム野郎の成れの果てであったルインの魔法力でさえ、二千には僅かに届いていなかったはずだ。
あいつは固有スキルの〖ルイン〗の射程や規模、威力がえげつないのが強さの最大の要因でもあったが、威力でいえばアロの〖ダークスフィア〗でほぼ同一のダメージを叩き出すことができるだろう。
その上、MPを度外視すれば〖暗闇万華鏡〗を用いて乱れ撃ちすることもできる。
周りの奴が強くなりすぎて見落としがちだが、アロもここまで強くなっていたんだな……。
短期決戦時の火力が同ランクと比べても桁外れなのではなかろうか。
〖暗闇万華鏡〗からの魔法連打を放てば、エルディアもベルゼバブもほぼ反撃を許さないままに瞬殺できるだろう。
果たして戦闘狂だったベルゼバブは、それで喜ぶのかどうか。
俺は続いて、トレントのステータスを確認する。
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種族:ワールドトレント
状態:呪い、木霊化:Lv6
Lv :116/130
HP :987/5283
MP :158/1420
攻撃力:232(565)
防御力:1208(2416)
魔法力:1074
素早さ:1212(606)
ランク:A+
特性スキル:
〖闇属性:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv3〗〖硬化:Lv7〗
〖HP自動回復:Lv7〗〖MP自動回復:Lv6〗〖飛行:Lv4〗
〖癒しの雫:Lv6〗〖不屈の守護者:Lv--〗〖重力圧縮:Lv5〗
〖忍び歩き:Lv5〗〖生命力付与:Lv--〗〖世界樹の樹皮:Lv5〗
〖妖精の呪言:Lv--〗〖鈍重な身体:Lv--〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv8〗〖落下耐性:Lv9〗
〖魔法耐性:Lv7〗
通常スキル:
〖根を張る:Lv5〗〖クレイ:Lv5〗〖ハイレスト:Lv6〗
〖ファイアスフィア:Lv7〗〖アクアスフィア:Lv4〗〖クレイスフィア:Lv7〗
〖ウィンドスフィア:Lv4〗〖念話:Lv5〗〖グラビティ:Lv6〗
〖ポイズンクラウド:Lv4〗〖フィジカルバリア:Lv6〗〖アンチパワー:Lv6〗
〖デコイ:Lv6〗〖スタチュー:Lv6〗〖メテオスタンプ:Lv6〗
〖木霊化:Lv6〗〖バーサーク:Lv5〗〖ウッドストライク:Lv5〗
〖ウッドカウンター:Lv5〗〖鎧破り:Lv5〗〖ガードロスト:Lv5〗
〖クレイウォール:Lv5〗〖地響き:Lv5〗〖熱光線:Lv6〗
〖樹籠の鎧:Lv5〗〖死神の種:Lv5〗〖不死再生:Lv5〗
〖人化の術:Lv2〗
称号スキル:
〖魔王の配下:Lv--〗〖知恵の実を喰らう者:Lv--〗〖白魔導師:Lv7〗
〖黒魔導師:Lv7〗〖竜の落とし物:Lv--〗〖世界樹:Lv--〗
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今は木霊化を使っているから、横のステータスが通常状態でのステータスのようだ。
見る度に思うが、本当にステータスがピーキーすぎる。
HPと防御力はほぼ今の俺と同一レベルであるし、〖世界樹の樹皮〗を考慮すれば下手すれば俺よりも実質的な防御面のステータスは上かもしれない。
……まあ、デカい上に速度はなく、能動的な攻撃もできないため、これくらい防御面に優れていても、単体だと同格相手に一方的に殴られてあっさりと沈められちまいそうな気はするが。
トレントには悪いが、敵で出てくると最初は面倒だが、対処法さえわかったら簡単に倒せちまうタイプの魔物だ。
もっとも、トレントは一人ではない。
俺やアロがついている。
だからこそ、機動力や能動性に欠ける弱みを隠し、強みを発揮し続けることができているのだ。
そしてその際の強さは、オリジンマター戦とミーア戦で確認済みである。
俺は最後に、自身のステータスを確認する。
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〖イルシア〗
種族:オネイロス
状態:通常
Lv :150/150(MAX)
HP :271/5791
MP :279/5969
攻撃力:4420
防御力:2658
魔法力:5415
素早さ:2706
ランク:L(伝説級)
神聖スキル:
〖人間道:Lv--〗〖修羅道:Lv--〗〖餓鬼道:Lv--〗
〖畜生道:Lv--〗〖地獄道:Lv--〗
特性スキル:
〖竜の鱗:Lv8〗〖神の声:Lv8〗〖グリシャ言語:Lv3〗
〖飛行:Lv8〗〖竜鱗粉:Lv8〗〖闇属性:Lv--〗
〖邪竜:Lv--〗〖HP自動回復:Lv8〗〖気配感知:Lv5〗
〖MP自動回復:Lv8〗〖英雄の意地:Lv--〗〖竜の鏡:Lv--〗
〖魔王の恩恵:Lv--〗〖恐怖の魔眼:Lv1〗〖支配:Lv1〗
〖魔力洗脳:Lv1〗〖胡蝶の夢:Lv--〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv5〗〖落下耐性:Lv6〗〖飢餓耐性:Lv5〗
〖毒耐性:Lv6〗〖孤独耐性:Lv6〗〖魔法耐性:Lv5〗
〖闇属性耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv5〗〖恐怖耐性:Lv4〗
〖酸素欠乏耐性:Lv5〗〖麻痺耐性:Lv6〗〖幻影無効:Lv--〗
〖即死耐性:Lv4〗〖呪い耐性:Lv4〗〖混乱耐性:Lv3〗
〖強光耐性:Lv2〗〖石化耐性:Lv2〗
通常スキル:
〖転がる:Lv7〗〖ステータス閲覧:Lv7〗〖灼熱の息:Lv7〗
〖ホイッスル:Lv2〗〖ドラゴンパンチ:Lv4〗〖病魔の息:Lv7〗
〖毒牙:Lv7〗〖痺れ毒爪:Lv6〗〖ドラゴンテイル:Lv2〗
〖咆哮:Lv3〗〖天落とし:Lv4〗〖地返し:Lv2〗
〖人化の術:Lv8〗〖鎌鼬:Lv7〗〖首折舞:Lv4〗
〖ハイレスト:Lv7〗〖自己再生:Lv5〗〖道連れ:Lv--〗
〖デス:Lv7〗〖
〖念話:Lv4〗〖ワイドレスト:Lv5〗〖リグネ:Lv5〗
〖ホーリースフィア:Lv5〗〖闇払う一閃:Lv1〗〖次元爪:Lv7〗
〖ミラージュ:Lv8〗〖グラビティ:Lv8〗〖ディメンション:Lv8〗
〖ヘルゲート:Lv5〗〖グラビドン:Lv8〗〖ミラーカウンター:Lv8〗
〖アイディアルウェポン:Lv9〗〖ワームホール:Lv1〗
称号スキル:
〖竜王:Lv--〗〖歩く卵:Lv--〗〖ドジ:Lv4〗
〖ただの馬鹿:Lv1〗〖インファイター:Lv4〗〖害虫キラー:Lv8〗
〖嘘吐き:Lv3〗〖回避王:Lv2〗〖チキンランナー:Lv3〗〖コックさん:Lv4〗
〖ド根性:Lv4〗〖
〖陶芸職人:Lv4〗〖群れのボス:Lv1〗〖ラプラス干渉権限:Lv8〗
〖永遠を知る者:Lv--〗〖王蟻:Lv--〗〖勇者:LvMAX〗
〖夢幻竜:Lv--〗〖魔王:Lv6〗
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俺はミーアとの戦いを経て、レベル最大まで上げることができた。
最大レベルが高かったこともあり、気がつけばとんでもないステータスになっていたものだと思う。
新しく手に入ったスキル〖胡蝶の夢〗も気になる。
【〖オネイロス:ランクL(伝説級)〗】
【〖夢幻竜〗とも呼ばれる。夢の世界を司ると言い伝えられるドラゴン。】
【光と重力と空間を操る、強力な魔法を用いて戦う。】
【〖オネイロス〗の放つ魔法は、その場を異界へと変えてしまうという。】
【姿を変えたり隠したりして相手を翻弄しながら、絶大な威力を誇る魔法スキルを叩き込むことを得意とする。】
オネイロスは〖夢幻竜〗とも呼ばれる、夢の世界を司るとされているドラゴンだ。
〖胡蝶の夢〗というスキル名や、今までオネイロスで習得できたスキルから考えても、何か夢や幻と関係のあるスキルであることは想像できる。
伝説級レベル最大で習得できたスキルなのだから、きっと強力なスキルであるのだろう。
ただ、そこ以外に、いや、そこ以上に気に掛かることがある。
俺の〖最終進化者〗の称号スキルが消えていることである。
つまり俺は……もう一段階進化することができる。
そして恐らく、これが最後の進化になる。
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