第639話
俺はアロ、トレントを背に乗せ、ヘカトンケイルへと飛んだ。
前回同様に一定の距離まで近づいたところで、ヘカトンケイルは動き出し、大剣を俺達へと構えた。
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〖ヘカトンケイル〗
種族:ヘカトンケイル
状態:狂神
Lv :140/140(MAX)
HP :10000/10000
MP :10000/10000
攻撃力:1500+200
防御力:4000
魔法力:1500
素早さ:1500
ランク:L(伝説級)
装備:
手:〖巨像の大剣:L〗
神聖スキル:
〖人間道|(レプリカ):Lv--〗〖修羅道|(レプリカ):Lv--〗
〖餓鬼道|(レプリカ):Lv--〗
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv5〗〖気配感知:LvMAX〗〖HP自動回復:LvMAX〗
〖MP自動回復:LvMAX〗〖超再生:LvMAX〗〖過回復:LvMAX〗
〖第六感:LvMAX〗〖剣士の才:LvMAX〗〖狂神:Lv--〗
耐性スキル:
〖物理耐性:LvMAX〗〖魔法耐性:LvMAX〗〖魔力分解:LvMAX〗
〖物理半減:Lv--〗〖状態異常無効:Lv--〗〖七属性耐性:LvMAX〗
通常スキル:
〖ハイレスト:LvMAX〗〖自己再生:LvMAX〗〖次元斬:LvMAX〗
〖ハイジャンプ:LvMAX〗〖破魔の刃:LvMAX〗〖瞑想:LvMAX〗
〖影演舞:LvMAX〗〖自然のマナ:LvMAX〗
称号スキル:
〖天穿つ塔の番人:Lv--〗〖不動不倒:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗
〖元英雄:Lv--〗〖元魔王:Lv--〗
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改めて、ヘカトンケイルのステータスを確認する。
……やっぱし、何度見たって異様なステータスだ。
〖物理半減〗や〖魔力分解〗なんて恐ろしいスキルを、おまけのように所有してやがる。
それも、基本耐性スキルと重複しているのがとんでもない。
しかし、今回は諦めて逃げたりなんてしねぇ。
残り日数だってあまり猶予がない。
ミーアだって、これ以上に狂神が進行しかねない。
倒すための力は、算段は、充分に蓄えてきた。
『前回の様には行かないぜ、ヘカトンケイル……!』
俺の言葉に、ヘカトンケイルからの反応はない。
俺はヘカトンケイルの右側へと回り込むように飛びながら、高度を落として一気に接近していく。
MPが尽きるまでに倒さなくてはならない。
だから、〖次元爪〗は撃たない。ただ近づいているような状況で〖次元爪〗を使うのは勿体ない。
単発のダメージ以外に、ミーアの戦闘補佐になるような状況でなければ、無事に当ててもむしろMPが勿体ない、なんて状態になりかねない。
俺は基本的に、直接攻撃で打点を稼いでいく。
俺の動きに合わせ、ヘカトンケイルは大剣の向きを変える。
「敵はあちらだけではないぞ」
ミーアはそう言いながら、ヘカトンケイルへと地上を走って接近していく。
俺達とは反対に、左側より。
ヘカトンケイルはこのまま待っていれば片方に死角を晒すと考えたらしく、俺の方へと走ってきた。
「自身から回り込み返して、一方向から相手取ろうという考えか。しかし、今私にあっさり背を晒したのは愚策ではないか?」
ミーアが大剣を掲げる。
黒い魔法陣の輝きと共に、黒い光の球体がヘカトンケイルへと飛来していった。
「〖ダークスフィア〗」
今のミーアは、攻撃力よりも魔法力の方が遥かに高い。
伝説級最上位レベル、【魔法力:4444】の一撃は重い。
ヘカトンケイルは、大剣の刃を盾のように構えた。
易々と直撃を受けていい攻撃ではないと判断したようだった。
ミーアは地面を蹴り、速度を上げる。
〖神速の一閃〗を用いた移動だ。
そして構えた刃を振るう。
斬撃は刃を離れ、地面を穿ってヘカトンケイルへと接近していく。
距離はあるが、初見で捌けるような速度じゃない。
ただの〖衝撃波〗ではない。
〖衝撃波〗を〖神速の一閃〗で打ち出したのだ。
スキルにはこんな使い方もあったのか。
素早い斬撃は、〖ダークスフィア〗を追い抜き、ヘカトンケイルの手許を砕いた。
ヘカトンケイルの大剣が下がる。
空いた胸元に、黒い光が飛び込み、炸裂した。
巨像の胸部に亀裂が走り、何本かの腕が落ちた。
黒い光が晴れたとき、ミーアはヘカトンケイルの目前にいた。
「どうしたヘカトンケイル、まだまだ攻めさせてもらうぞ」
〖神速の一閃〗で再び加速し、ヘカトンケイルの体勢が崩れたところを突きにいった。
ヘカトンケイルの身体に、大剣の刃が叩きつけられる。
ヘカトンケイルの巨体が大きく揺れた。
わ、わかってたことだが、ミーア、マジで強え……。
ステータスもそうだが、本人の攻め方にも無駄と容赦が一切なく、それが高い技術と深い経験によって洗練されている。
だが、俺も、感心してる場合じゃねえ!
ミーアも一度、ヘカトンケイルの前に、撤退を余儀なくされているのだ。
それに、MPを割いて初撃から一気に畳み掛けてくれたのは、俺達に……もっといえば、トレントに確実に攻撃を通させるためだ。
少しMPを使い過ぎというか、飛ばし過ぎにも思えたが、ずっとこの調子で攻め続けるわけでもない。
絶対に想定を頭から失敗しないため、保険を掛けてくれたのだろう。
そして、ミーアは充分以上にやってくれた。
俺達がしくじるわけにはいかない。
「グゥォオオオオオッ!」
俺は叫びながら、体重を乗せた尻尾の一撃を叩き込んだ。
ヘカトンケイルの片足が僅かに浮いた。
『今だ、トレント、アロ!』
『はっ、お任せてくだされ!』
「はい! 威力最大で準備していました! 〖ダークスフィア〗!」
アロの〖ダークスフィア〗がヘカトンケイルの横っ腹で炸裂する。
アロの魔法で入った亀裂に、トレントの吐き出した、緑に発光する種が複数、入り込んでいった。
MPを吸い続けるスキル、〖死神の種〗である。
『やりましたぞ主殿! 最大個数、叩き込んでやりました!』
『うし! よくやったトレント!』
考えられる限り、最良の流れであった。
長引けば長引くほど効果を発揮し続ける〖死神の種〗は、開幕と同時にぶつけておきたかった。
俺とミーアで、挟み撃ちの形にできた。
ヘカトンケイルは今、体勢が崩れている。
一気に攻撃し続けて、HPとMPを削る……!
俺の爪の一撃は、大きく空振った。
ヘカトンケイルの巨体が影へと沈み、素早く移動し、間合いを取ったところで実体を取り戻した。
ヘカトンケイルのスキル、〖影演舞〗だ。
『ま、そう上手くは行かねぇか……。多対一のメリットを、あのスキルにちょっと喰われちまうな』
挟み込めても、ヘカトンケイルが一度〖影演舞〗を使えば、それでチャラにされてしまう。
『特に、早々にミーアと俺達の連携を一気に受けたんだ。今後は、かなり細かく使ってくるかもしれねぇな……』
「それでいい。いや、そのために最初から攻めさせてもらったんだ。警戒させてからは堅実に攻めればいいさ。あのスキルだって、便利な分、ただじゃない。頻繁に使えば、それだけバテるのは早くなる」
ミーアが大剣を構え、そう口にした。
なるほど……そういう意図もあったのか。
本当にミーアは心強い。
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