第607話
ユミルを〖転がる〗で無事に振り切ることができた。
俺達は木の枝で休息していた。
地面にいたら、突然何が出てくるのかわかったものじゃねぇ。
これまでは〖気配感知〗でどうにかなっていたが、それで対処できる奴ばかりだとは思えない。
……それに、ユミルみたいに猛スピードで向かってくる奴だっているだろう。
『もう二度とあの化け物とは出会いたくありませんぞ……』
アロもトレントも、〖転がる〗での移動疲れでぐったりしていた。
何はともあれ、疫病蝦蟇との戦いによって、トレントは【Lv:1/130】から【Lv:69/130】へと上がっていた。
アロは【Lv:72/130】から【Lv:76/130】へと上がっていた。
ユミルに妨害されて途中中断という形にはなったが、これは大きな成果である。
アロも、トレントも、ある程度まではレベルを上げることができた。
この先はどんどんレベル上げが厳しくなってくるだろうが、ひとまずここまで上げられたのであれば、A級上位の戦力として充分見ることができる範囲だ。
これでアロとトレントのレベルを上げる課題は概ね達成できたといえる。
機会があれば狙っていきたいが、優先度は下げて考えていいはずだ。
後は俺の進化条件の開放……そして、この世界からの脱出だ。
『しかし……なんだ、ありゃ?』
天穿つ塔までかなり近づいてきていた。
具体的なサイズがようやく把握できて来た。
高さは果てしないとしか言いようがないが、円塔の直径が百メートル近くありそうだ。
思ったよりもずっと大きい。
遠くからは縦長の塔にしか見えなかった……まぁ、高さに対して考えれば、縦長なんだけどよ。
塔のことはいい。
問題は、塔の巨大な扉の前に、不気味な石像が設置されていることである。
全長十メートル近くある、鎧を纏った巨人の像だった。
三十程度の腕がわらわらと伸びており、首は欠けていて頭がなかった。
腕の一本には巨大な剣を握っている。
ピクリとも動かないが……まさか、アレ、魔物じゃねぇだろうな?
【〖ヘカトンケイル〗:L(伝説)ランクモンスター】
【醜い巨人像。かつての勇者の成れの果て。】
【使命に憑りつかれ人道を見失った彼は、その象徴である頭を失い、代わりに彼の優れた武を象徴するかのように無数の腕を得た。】
【全てを失った彼は他者を守る力を欲し、願いは叶った。】
【だが、既に彼は、守るための何かを持ってはいなかったのだ。】
で、伝説級……出やがったな。
どうにも、塔を守っている臭い。
戦闘は避けられねぇかもしれないな。
しかし、妙に具体的な説明だな……。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
〖ヘカトンケイル〗
種族:ヘカトンケイル
状態:狂神
Lv :140/140(MAX)
HP :10000/10000
MP :10000/10000
攻撃力:1500+200
防御力:4000
魔法力:1500
素早さ:1500
ランク:L(伝説級)
装備:
手:〖巨像の大剣:L〗
神聖スキル:
〖人間道|(レプリカ):Lv--〗〖修羅道|(レプリカ):Lv--〗
〖餓鬼道|(レプリカ):Lv--〗
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv5〗〖気配感知:LvMAX〗〖HP自動回復:LvMAX〗
〖MP自動回復:LvMAX〗〖超再生:LvMAX〗〖過回復:LvMAX〗
〖第六感:LvMAX〗〖剣士の才:LvMAX〗〖狂神:Lv--〗
耐性スキル:
〖物理耐性:LvMAX〗〖魔法耐性:LvMAX〗〖魔力分解:LvMAX〗
〖物理半減:Lv--〗〖状態異常無効:Lv--〗〖七属性耐性:LvMAX〗
通常スキル:
〖ハイレスト:LvMAX〗〖自己再生:LvMAX〗〖次元斬:LvMAX〗
〖ハイジャンプ:LvMAX〗〖破魔の刃:LvMAX〗〖瞑想:LvMAX〗
〖影演舞:LvMAX〗〖自然のマナ:LvMAX〗
称号スキル:
〖天穿つ塔の番人:Lv--〗〖不動不倒:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗
〖元英雄:Lv--〗〖元魔王:Lv--〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ななな、なんだあの化け物……!
どこをとっても異様すぎるステータスだった。
異様すぎて、どう解釈すればいいのか上手く掴めない。
五桁に到達しているステータスなんて初めて見た。
どう考えてもステータスの合計数値が高すぎる。
俺が最大レベルになったって、絶対こんなのにならねぇぞ。
あまりにインチキ過ぎるだろ……。
だが、HP、MP、防御力以外は俺が勝っている。
攻撃力も魔法力も、伝説級としては最低クラスだ。
アロはかなり危ないが、トレントは数発もらっても耐えられる攻撃力だ。
もっとも、トレントではまともにダメージを与えられないかもしれないが……。
経験則だが、防御力の半分程度の攻撃力の攻撃は、まともにダメージが通らない。
ヘカトンケイルは【防御力:4000】であるため、【攻撃力:2000】に遠く届かない攻撃では、あの石像の身体に傷をつけることも敵わないだろう。
アロの魔法攻撃でも怪しいくらいだ。
俺の魔力を吸い上げて魔法攻撃にドーピングを掛け、最大まで魔力を込めた一撃の直撃を取って、ようやく足しになるかもしれない、程度だ。
だが、それもあのガチガチの耐性スキルの前ではどうなるのかわかったものではない。
戦えば、勝てるっちゃ勝てるか……?
耐性スキルがどう考えてもヤバいが、攻撃面はそこまでトリッキーでもねぇ。
むしろ伝説級の中では安全に倒しやすい部類かもしれない。
ホーリーナーガやオリジンマターのように、俺でも気を抜けば瞬殺されかねないような理不尽な攻撃スキルは持っていないように思える。
空高くからトレントの〖メテオスタンプ〗でどうにかならねぇか……?
いや、威力を底上げするには、それだけ高くから落とす必要がある。
素早さもそこまで高くないが、伝説級としての最低限程度にはある。
容易に当たってくれるとは思えねぇ。
〖ハイジャンプ〗もあるし、上空からでも塔に接近すれば反応して襲い掛かってくるかもしれねぇ。
……ここから〖次元爪〗で仕掛けるのも、あまりよくはねぇな。
所詮遠距離スキルだ。
あんなトレント以上の反則級のガチガチ耐久型の敵を〖次元爪〗だけで仕留めきれるかは怪しい。
試すだけならアリではあるが、相手もどうせ〖次元斬〗を持っている。
チマチマ遠距離勝負するより、近接で一気に決めちまった方がいいだろう。
『アロ……トレント、ちっと待っててくれ。あのデカ巨像を、ぶっ飛ばしてくる。対応できない敵が出てきたら、魔法を空に撃つなりして教えてくれ、すぐに戻る』
俺はアロとトレントへと言った。
彼らではまだヘカトンケイルにまともにダメージは通せないし、逆に相手の攻撃は致命打になりかねない。
逆に俺ならヘカトンケイルの攻撃はほとんど痛くはないはずだ。
奇妙な奴で怖くはあるが……そこまで苦戦はしないはずなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます