第602話

 アポピスを討伐した後、デスキャリー達をトレントの〖メテオスタンプ〗によって無事に殲滅することに成功した。

 その後、俺達は沼から少し移動したところで休憩をとっていた。


 アポピス達との戦いによって、アロは【Lv:61/130】から【Lv:72/130】へと上がっていた。


 そしてトレントは【Lv:71/85】から【Lv:85/85】へと上がっていた。

 ついに進化可能な最大レベルに達したのである。

 これまで長かった。

 永遠を生きるウロボロスの寿命を全て費やしても終わらないのではないかと危惧していたトレントのレベリングであったが、ついに、ようやく今日を以て完遂することができた。


『主殿、さささ、よろしくお願いしますぞ!』


 トレントがパタパタと木霊状態の翼を振りながら、急かすように俺へと言った。


『そうせっつかなくても、しっかりやるからよ』


 宥めてはいるが、トレントの気持ちはわかる。

 これまで本当に長かった。よくぞここまで頑張ったと言ってやりたい。

 

『魔力強めでお願いいたします!』


『お、おう、勿論全力でやらせてもらうぜ』


 進化の際に必要な〖フェイクライフ〗の魔法のことだろう。

 ……そんな力込めても、変わらねぇと思うんだけどな。

 ま、まぁ、気持ちとして祝ってやりたいし、毎回なるべく魔力は込めて行っているが。


「トレントさん、頑張って!」


 アロも興奮気味にトレントを応援していた。

 トレントもアロへと翼を向け、呼びかけに応じる。

 ……んな気合い入れても、多分変わらねぇと思うんだけどな。


 俺は早速、〖フェイクライフ〗をトレントへと放った。

 黒い光がトレントを包み込んだ。

 黒い光の中で、トレントが膨らんでいくのが見えた。


 幹が太くなっていき、背丈が伸びていく。

 ……と思っていたら、俺とアロを押し潰さんがばかりの勢いで、爆発的な膨張を始めた。


 ト、トレントに取り込まれる……!

 俺はぽかんと口を開けてトレントを見上げるアロを抱えて、慌ててトレントから離れた。


 ……五十メートルくらいだろうか。

 タイラント・ガーディアンの五倍以上の大きさである。

 これはもうどう頑張っても抱えられない。


 数多もの木の幹が複雑に絡み合い、巨大な木となっていた。

 これまで同様、目の窪みと高い鼻も残っている。

 青々と輝く葉を茂らせていた。


『主殿ー! アロ殿ー! どっ、どこでございますか!』


 動くたびに衝撃が伝わってくる。

 存在感がありすぎる。

 ンガイの森の木より遥かに大きくなっちまった。


『こ、こっちだトレント!』


 トレントが幹を回し、こちらを振り向いた。

 激しく枝を森の木に打ち付け、顔を顰めていた。

 今のトレントが下手に動くと、何が起こるかわからねぇぞ、これ。


『主殿……! アロ殿……!』


 巨大なトレントの顔が俺を見る。

 い、威圧感すげぇ……。

 風格は伝説級じゃねぇか。


『……小さくなりましたか?』


 お前が大きくなったんだぞ、トレント……。


【〖ワールドトレント〗:A+ランクモンスター】

【一つの世界が始まったとき、世界の行く末を見守る者として〖ワールドトレント〗が生まれると言い伝えられている。】

【周囲のあらゆる動植物は生命力が漲り、土地が肥える。】

【その特性により、〖ワールドトレント〗を中心に一つの国が築かれることが多い。】

【〖ワールドトレント〗は国の繁栄を、そして王は義に背いた王政を行わないことを誓う。】

【決して朽ちぬ強靭な生命力は、人々を永遠に見守ってくれることだろう。】


 無事にトレントはA級上位へと進化していた。

 ワ、ワールドトレント、か……。

 随分と大層な変貌を遂げたもんだ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ワールドトレント

状態:呪い

Lv :1/130

HP :538/1258

MP :21/477

攻撃力:197

防御力:553

魔法力:292

素早さ:169(338)

ランク:A+


特性スキル:

〖闇属性:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv3〗〖硬化:Lv7〗

〖HP自動回復:Lv7〗〖MP自動回復:Lv6〗〖飛行:Lv4〗

〖癒しの雫:Lv6〗〖不屈の守護者:Lv--〗〖重力圧縮:Lv5〗

〖忍び歩き:Lv5〗〖生命力付与:Lv--〗〖世界樹の樹皮:Lv5〗

〖妖精の呪言:Lv--〗〖鈍重な身体:Lv--〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv8〗〖落下耐性:Lv9〗

〖魔法耐性:Lv7〗


通常スキル:

〖根を張る:Lv5〗〖クレイ:Lv5〗〖ハイレスト:Lv5〗

〖ファイアスフィア:Lv7〗〖アクアスフィア:Lv4〗〖クレイスフィア:Lv6〗

〖ウィンドスフィア:Lv4〗〖念話:Lv5〗〖グラビティ:Lv6〗

〖ポイズンクラウド:Lv4〗〖フィジカルバリア:Lv6〗〖アンチパワー:Lv6〗

〖デコイ:Lv6〗〖スタチュー:Lv6〗〖メテオスタンプ:Lv6〗

〖木霊化:Lv6〗〖バーサーク:Lv5〗〖ウッドストライク:Lv5〗

〖ウッドカウンター:Lv5〗〖鎧破り:Lv5〗〖ガードロスト:Lv5〗

〖クレイウォール:Lv5〗〖地響き:Lv5〗〖熱光線:Lv5〗

〖樹籠の鎧:Lv4〗〖死神の種:Lv4〗〖不死再生:Lv4〗

〖人化の術:Lv2〗


称号スキル:

〖魔王の配下:Lv--〗〖知恵の実を喰らう者:Lv--〗〖白魔導師:Lv7〗

〖黒魔導師:Lv7〗〖竜の落とし物:Lv--〗〖世界樹:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ……た、体力お化け。

 レベル1のステータスだとはとても思えない。


 ただ……どうやら、これまで以上に耐久型らしい。

 経験上、ぶっちゃけ戦いやすいのは攻撃に秀でたタイプの魔物だと思っていたので、そろそろトレントも攻撃型に転向したりしないかな……と密かに期待していたのだが、最後の最後まで耐久型を貫いて、耐久型として完成してしまった。

 ま、まあ、このことはトレントには黙っておこう。


 スキルも増えているし、工夫次第では色々な戦い方ができそうに思う。

 素早さに括弧がついているのは〖鈍重な身体〗の効果だな。

 ベルゼバブも同じ特性スキルを持っていた。


 特性スキル〖鈍重な身体〗は、速さの基礎ステータスを半減させる。

 代わりに他のスキルで姿を変えれば、速さを元に戻すことができるのだ。

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