第559話

 リリクシーラが崖壁を這い、俺へと距離を詰めて来る。

 今までとは比べ物にならねぇ速度だ。

 この悪寒……A+級じゃねぇ、伝説級にまで入っていやがる。



【〖ホーリーナーガ〗:L(伝説)ランクモンスター】

【蛇の半身を持つ異形の人間。】

【邪が世を呑み込む前に現れて魔の王を滅する聖なる存在であると、聖国にてそう言い伝えられている。】

【自然に眠る魔力を利用した特異なスキルを自在に操る。】


 悪い予感が的中した。

 最悪だ。

 リリクシーラは、俺が初めて対峙する、完全な形での伝説級の魔物となった。


 人間には進化がない代わりに、レベルアップが魔物に比べて遅く、レベルの後半になる程ステータスの上昇幅が上がるようになるらしいことは、これまでの傾向から薄っすらと理解していた。

 恐らく〖メタモルポセス〗の魔法は、対象のレベルとポテンシャルに応じたランクの魔物へと変化させる、というものであったのだろう。

 レベル100に達し、二つの神聖スキルを有するリリクシーラは、伝説級の魔物へと至る資格を持っていたのだ。


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〖リリクシーラ・リーアルム〗

種族:ホーリーナーガ

状態:通常

Lv :100/140

HP :3592/3592

MP :3956/3956

攻撃力:2337

防御力:2047

魔法力:3440

素早さ:2299

ランク:L(伝説級)


神聖スキル:

〖餓鬼道:Lv--〗〖畜生道:Lv--〗


特性スキル:

〖神の声:LvMAX〗〖光属性:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv7〗

〖魔術師の才:LvMAX〗〖気配感知:Lv8〗〖忍び足:LvMAX〗

〖光の衣:Lv--〗〖真理の瞳:Lv--〗〖転生の脱皮:Lv--〗

〖MP自動回復:Lv9〗〖聖なる鱗:Lv8〗〖飛行:Lv7〗

〖神仙気功:Lv7〗〖躰煉丹術:Lv7〗〖チャクラ覚醒:Lv--〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv9〗〖魔法耐性:Lv9〗〖闇属性耐性:Lv9〗

〖幻影耐性:Lv9〗〖毒耐性:Lv8〗〖呪い耐性:LvMAX〗

〖石化耐性:LvMAX〗〖即死耐性:LvMAX〗〖麻痺耐性:Lv8〗


通常スキル:

〖ステータス閲覧:LvMAX〗〖ハイレスト:LvMAX〗〖ハイケア:LvMAX〗

〖ホーリー:LvMAX〗〖ホーリースフィア:LvMAX〗〖ホーリースピア:LvMAX〗

〖念話:Lv9〗〖スピリット・サーヴァント:LvMAX〗〖フロート:Lv8〗

〖ハイクイック:Lv8〗〖ハイパワー:Lv8〗〖ミラーカウンター:Lv8〗

〖グラビティ:Lv8〗〖グラビドン:Lv8〗〖グラビリオン:Lv9〗

〖コンフュージュ:Lv8〗〖ミラージュ:Lv8〗〖ファイアスフィア:Lv8〗

〖魅了:Lv8〗〖スロウ:Lv8〗〖ディメンション:Lv8〗

〖ストーンカース:Lv8〗〖ホーリーウィング:Lv8〗〖メタモルポセス:Lv2〗

〖毒牙:Lv8〗〖神仙縮地:Lv8〗〖アパラージタ:Lv8〗


称号スキル:

〖選ばれし者:Lv--〗〖ヘビガミ:Lv--〗〖聖女:LvMAX〗

〖魔獣王:Lv3〗〖白魔導士:LvMAX〗〖黒魔導士:Lv9〗

〖闘杖術:Lv9〗〖ちっぽけな勇者:LvMAX〗〖救護精神:LvMAX〗

〖狡猾:LvMAX〗〖嘘吐き:LvMAX〗〖ラプラス干渉権限:Lv5〗

〖最終進化者:Lv--〗

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 ……ステータスの優位が、ついにぶっ壊された。

 スキルも一気に増えている。

 いや、それだけじゃねぇ。

 おまけというには、あまりに凶悪過ぎる付属効果があった。


 瀕死であったはずのリリクシーラの、HPとMPが完全に回復している。

 通常、進化してもレベルが上がってもHP等の回復は発生しないのだ。


 アレだけリリクシーラが奥の手を出し渋り、無意味と思える抵抗を繰り返していた理由もわかった。

 一方的な戦いだと俺に思わせることで戦いへの集中力を削ぎ、その間に少しでも俺の魔力を削ることが狙いであったのだ。


 油断があったつもりはねぇ。

 だが、憐れとまで思わせるリリクシーラの抵抗の前に、俺の手が緩んでいたことは間違いない。

 次の瞬間には倒せているはずだと、何度もそう錯覚させられていた。

 そこを合わせて、今の今まで、全てがリリクシーラの掌の上だったのだ。


 しかし……全回復が〖メタモルポセス〗の力だとすると、あまりにぶっ壊れ性能すぎる。


【特性スキル〖転生の脱皮〗】

【古い身体を脱ぎ捨て、新しい身体を手に入れる。】

【魔力の消耗は激しいが、外傷や欠損を回復する。】

【また、この特性を有しているだけで、進化の際に自身のステータスが完全に回復する。】


 このスキルが悪さをしていやがったのか!

 通常なら進化時のリスクを抑えられる程度のおまけだが、〖メタモルポセス〗の効果が進化と見做されているせいで、戦闘中で一度きりとはいえ完全回復を果たす壊れスキルになっている。


 偶然……な、わけがねぇ。

 戦闘中に〖メタモルポセス〗で〖ホーリーナーガ〗へ至り、〖転生の脱皮〗の効果で完全回復を取って優位に立つところまで、リリクシーラは見越していたのだ。

 ラプラス使用の有無の差が大きく出た。


 リリクシーラは人質頼みで俺へと挑んだのだと、そう考えていた。

 違った。

 リリクシーラは何重にも保険を掛けた上で、完全に計算尽くで俺へと挑んできている。

 人質を取れず、純粋な一対一となるケースも想定内であったのだ。


 スキルを用いての上位存在への進化に留まらず、システム仕様を掻い潜ったかのような荒業での全回復まで見せつけて来るとは思わなかった。

 〖転生の脱皮〗のせいで、大きな差をつけられてしまった。


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〖イルシア〗

種族:オネイロス

状態:通常

Lv :109/150

HP :2985/4397

MP :2287/4534



 ここまでの何度もの衝突によって、俺の魔力は半分にまで落とされていた。

 おまけにリリクシーラは未知のスキルだらけだが、リリクシーラは既に俺の戦い方を把握済みだろう。

 容易に一方的に攻撃できる隙を晒してくれるとは思えねぇ。

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