第498話

 クレイブレイブが鎧と同色の、赤黒い輝きを放つ長刃の剣を構えて俺へと向ける。


 ……元魔王の半身だか知らないが、俺を試すというなら、受けてやる。

 だが、シュブ・ニグラスは山羊による無敵スキルがあったから倒すのに苦労させられたが、たかだかA+級単体の魔物相手に、今更後れを取るつもりはねぇ。


 俺はステータスの確認から入る。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:クレイブレイブ

状態:通常

Lv :130/130(Lock)

HP :1902/1902

MP :1754/1754

攻撃力:1631+190

防御力:1990+255

魔法力:1331

素早さ:1257

ランク:A+


装備:

手:〖刻命のレーヴァテイン:L-〗

体:〖悪装アンラマンユ:L〗


特性スキル:

〖ゴーレム:Lv--〗〖土属性:Lv--〗〖光属性:Lv--〗

〖剣士の才:Lv9〗〖HP自動回復:Lv9〗〖MP自動回復:Lv9〗


耐性スキル:

〖物理耐性:LvMAX〗〖魔法耐性:LvMAX〗〖毒無効:Lv--〗

〖即死無効:Lv--〗〖呪い無効:Lv--〗


通常スキル:

〖噛みつき:Lv8〗〖変形:Lv7〗〖自己再生:Lv8〗

〖クレイ:Lv8〗〖衝撃波:Lv9〗〖十三連魔剣:Lv7〗

〖流し身:Lv7〗〖掬虚月:Lv7〗


称号スキル:

〖土塊王:Lv--〗〖元魔王の配下:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗

〖執念:LvMAX〗〖剣王:Lv9〗〖神剣の担い手:Lv--〗

〖悪神を纏う者:Lv--〗

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 ……変わったスキルは、ない。

 見かけ通り、高ステータスを活かした近接タイプらしい。


 というより、アドフやヴォルクなど、人間の剣士に近いスキル構成だ。

 こいつを造ったのは錬金術師アルキミアだと聞いていたが、クレイブレイブがそいつをモデルにしているのならば、むしろアルキミアの本領は剣士だったんじゃねぇだろうか。


 耐性も堅く、高威力の剣で圧倒しつつ、自分を回復させて長期戦でも戦い切ることができる。

 同格相手なら強いだろうが……悪いが、数値なら俺が圧倒している。


 ……しかし、不穏なのは魔物自体よりも、むしろ武器の方だった。


【〖刻命のレーヴァテイン:価値L-〗】

【〖攻撃力:+190〗】

【〖不義なる神叛の刃〗とも称される。】

【虹の輝きを帯びる魔鳥〖ヴィゾーヴニル〗の尾羽を用いて作られた、最高の魔力を秘めた剣。】

【しかし、力の代償に、振るう度に命を削られる。】

【かつて神を倒すべくこれを探し求めた魔王がいたが、実物を手にして酷く落胆していたという。】


 ほ、補正値、【攻撃力:+190】!?

 どうなってんだ。

 某勇者の持っていた〖聖剣ラディム〗でさえせいぜいこの半分強程度だったぞ。

 〖ヴィゾーヴニル〗は知らないが……伝説級の魔獣王かなにかだったのだろうか。

 ……伝説級の剣とは、ヴォルクが大喜びしそうな代物だが、恐らくヴォルクの身体ではこの剣の消耗に命の方が持たないのではないだろうか。


【〖悪装アンラマンユ:価値L〗】

【〖防御力:+255〗】

【かつて歴代最強の聖女〖ヨルネス〗が災厄の竜を従え、その炎を以て造り上げた鎧。】

【本来ならば聖なる光を帯びた鎧ができあがるはずであったが、鎧に彼女の黒い心が反映された結果、強烈な呪気を帯びてしまったという。】

【〖ヨルネス〗の祈りの力により、常時魔法反射障壁を展開しているが如くの凶悪な対魔法性能を誇る。】

【だが、身に着けたものは鎧の呪気に心を喰われ、廃人になるとされている。】

【これまでに歴代の勇者四人が魔王を討つべくこの鎧に手を出し、例外なく悲惨な末路を遂げたため、長くある王城の地下迷宮に隠されていた。】


 ……ランク的には、こっちの方が上らしい。

 今まで見て来た武具の補正値とはやはり格が違う。

 これまで四人を呪殺してきたとんでもない代物らしいが……これをわざわざ地下迷宮から掘り起こしてきたのがアルキミアだったのだろう。

 アルキミアは、そこまでして神の声を殺したかったのか。


 クレイブレイブは剣を持つ手を俺へと傾け、額に剣先を合わせる。

 まるで気取った騎士の様な、どこか人間臭い仕草だった。


 クレイブレイブは地面を蹴って横に跳びながら剣を振るい、〖衝撃波〗を放って来る。

 〖刻命のレーヴァテイン〗の刃の赤黒い輝きが、そのまま刃から離れ、破壊力を伴った斬撃と化して俺へと襲い掛かってくる。


 俺は背を屈め、首を逸らして回避する。

 〖衝撃波〗の後を追う様に距離を詰めてきていたクレイブレイブが、身体を宙で翻し、勢いの乗った一撃を俺へと放つ。


 俺は前足の爪で防ぎ、逆の爪をクレイブレイブ目掛けて振り下ろした。

 前足がクレイブレイブを捉え、地面へ叩き落した。


 やった、と思った。

 だが、次の瞬間、前脚に鋭い痛みが走った。


「ガッ……」


 やられた……。

 恐らく、交差した一瞬に剣を伸ばし、俺の速度を利用して手首を斬りつけたのだ。

 だが、こちらも相手を弾き飛ばしたのだ。

 無傷ではないはず……!


 目前に空いていた地面の穴から何かが跳び出し、土煙が舞った。

 何事もなかったかのようにクレイブレイブが地面の上に降り立ち、俺へと再び剣を構えた。


 ダメージがほとんどねぇ!?

 もしや〖悪装アンラマンユ〗の力か……?

 い、いや、違う。

 さすがにあの補正値があっても、俺の一撃がまともに通れば身体が吹っ飛ぶはずだ。


 直撃してなかったんだ。

 剣で俺の手首を斬り、その反動を利用して背後に逃れたのだ。


 あ、相手が小さいから戦い辛い……。

 ……いや、これは戦闘技術の力量差だ。

 こっちが力押しで向かったのを利用して受け流された。


 ……俺でも【攻撃力:1631+190】は、そう何回も受けてはいられねぇ。

 〖悪装アンラマンユ〗の凶悪な魔法耐性もある。

 シュブ・ニグラスとは違い正面から来るタイプの敵ではあるが、あまり気は抜けそうにない。

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