第488話

 キラークイーン討伐後は、この地を大きく移動し、フェンリルをメインに狩って回った。

 他にも〖ジャイアント・サンド・センチピード〗の亜種らしい緑色の大ムカデ〖ポイズンロード〗や、梟の頭を持つ水魔法を得意とする全裸男の五人組〖アンドラス〗との死闘を経て、滝の洞窟へと帰って来た。


 シンやキラークイーンの様なA級下位とは出くわさなかった。

 奴らが山の下では最上級のモンスターだったようだ。


 トレントさんが〖熱光線〗合戦でポイズンロードに押されて殺されかけたり、トレントさんが〖メテオスタンプ〗をしつこく狙い過ぎて隙を晒してアンドラス三体に囲まれて棍棒で殴りつけられて瀕死に陥った以外は、特に危うい場面もなかった。


 レベリングが終わったとき、辺りは暗くなっていた。

 今日も聖女が来なかった事に俺は安堵する。

 この霧の地を選んで本当によかった。


 キラークイーンの討伐からアロは【Lv:74/85】から【Lv:77/85】へ、

 ナイトメアは【Lv:64/70】から【Lv:70/70】へ、

 マギアタイト爺は【Lv:65/70】から【Lv:70/70】へ、

 黒蜥蜴は【Lv:45/80】から【Lv:54/80】へ、

 トレントは【Lv:39/85】から【Lv:49/85】にまで上がっていた。


 ナイトメアとマギアタイト爺がついに最大レベルになったのだ。

 俺は補佐に徹していたこととB-では経験値が足りなくなってきたこともあり、【Lv:83/150】から【Lv:85/150】と掛けた時間の割にはやや控えめの結果となった。


 せっかくなので〖アイディアルウェポン〗のスキルLvの上昇を狙っていたが、こちらは数値が上がらなかった。

 しかし、だいたいこのスキルのコツは分かってきた気がする。

 だが、〖次元爪〗をLv4からLv6まで上げることができた。


 マギアタイト爺は無防備なので人前で進化は行い辛いといい、滝の洞窟の奥へと一人で向かっていった。

 ナイトメアは真っ黒な繭を作って洞窟の天井からぶら下がっている。

 トレントが枝先でナイトメアを突こうとするのを、アロが必死に止めていた。

 ……マギアタイト爺みたいに隠れるのは、やっぱり正しいかもしれんな。


 先に戻ってきたのは、マギアタイト爺であった。

 違いはひと目でわかった。

 マギアタイト爺が、黄金色の輝きを帯びていた。

 こ、これ、金属から変わってねぇか!?


【〖ゴルド・マギアタイト・ハート〗:B+ランクモンスター】

【〖マギアタイト・ハート〗の魔力が過度に高まったことで、魔金属〖マギアタイト〗の金属組織が変異を引き起こした姿。】

【あまりに希少なため〖ゴルド・マギアタイト〗は架空の金属とされている。】

【強度が従来の〖マギアタイト〗とは桁外れなことに加え、様々な性質を持つという。】


 い、一応これも〖マギアタイト〗なのか……?

 マギアタイト爺、どんどん希少価値が上がっていくな。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ゴルド・マギアタイト・ハート

状態:普通

Lv :1/92

HP :55/55

MP :41/222

攻撃力:43

防御力:301

魔法力:163

素早さ:224

ランク:B+


特性スキル:

〖マギアタイト:Lv--〗〖帯毒:Lv9〗

〖MP自動回復:Lv8〗〖グリシャ言語:Lv2〗


耐性スキル:

〖物理耐性:LvMAX〗〖魔法耐性:LvMAX〗

〖状態異常無効:Lv--〗〖魔力分解:Lv1〗


通常スキル:

〖魔金属生成:Lv9〗〖リクゥイド:Lv8〗〖コロナ:Lv8〗

〖変形:Lv8〗〖念話:Lv5〗〖ファイアボール:Lv9〗

〖クレイ:Lv7〗〖クレイガン:Lv7〗〖自己再生:Lv7〗

〖メタルブレス:Lv6〗〖衝撃殺し:Lv6〗〖受け流し:Lv5〗

〖毒毒:Lv7〗〖人化の術:Lv3〗〖フレア:Lv2〗

〖メタルバルーン:Lv4〗〖ステルス:Lv2〗


称号スキル:

〖最終進化者:Lv--〗〖鋼の賢人:Lv--〗〖臆病:Lv--〗

〖稀少魔物:Lv--〗〖古を知る者:Lv--〗〖魔王の配下:Lv--〗

〖架空金属:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 レ、レベル1にしては物騒な防御力をしている。

 通常スキルが三つほど増えているが……気になるのは、こっちよりも耐性スキルに増えた〖魔力分解〗だ。

 これはかなりレアな耐性なのではなかろうか。

 少なくとも、似たスキルを見たことがない。


『……少シ、目立ツノ』


 マギアタイト爺は金ぴかぴんがあまり気に入っていないのか、少しがっかりしているようだった。

 ……思えば、最初見かけたときも、全力ダッシュで俺から逃げようとしていたな。

 金属狙いの冒険者にも狙われやすかったみたいだし、やや逃げ癖がついているのかもしれない。

 もうB+まできたら、早々逃げる選択を強いられることもないと思うんだけどな。


「なるほど……うむ、なるほど」


 ヴォルクが嬉しそうにマギアタイト爺を見て、力強く頷いていた。

 ……完全に武器として見てねぇか?

 ま、まあ、マギアタイト爺も満更でもなさそうだからいいんだけどよ。


 そうこうしている間に、洞窟入口にぶら下がる黒い繭に罅が入った。

 繭に枝を伸ばしていたトレントさんが、木霊に変化し、その場から鶏の様な羽搏きで移動した。

 ……そんなビビるなら、最初からやめとけばいいのに。

 とはいえ、恐らくナイトメアはB級上位……ただのB級の可能性も十分にある。

 トレントも別に無暗にナイトメアを恐れるいわれはないのだが、すっかり下に出る習性が身に付いちまってるな。


 繭の裂け目から、例のナイトメアの仮面をつけた人間の上体が顔を伸ばす。

 だらりと垂れた紫の髪に驚き、俺は思わず背後へと身体を大きく逸らす。

 ナイトメアの進化体が、俺の目前へと着地した。


 身体全体が紫色の毛に覆われている。

 体長は前回とほとんど変わらず三メートル程度だが、蜘蛛の上体部分が、人間のものへと変わっていた。

 腕も紫の毛に覆われており、禍々しい爪が手にはついていた。


 ……い、一気に変わったな。

 ナ、ナイトメアだよな?


【〖アトラナート〗:A-ランクモンスター】

【残忍で凶悪な、人間の上体を持つ蜘蛛の魔物。】

【一夜で栄えた都を自身の巣に変えてしまった、という伝承を持つ。】

【吐き出す闇色の糸は衝撃を大きく殺し、また糸伝いに相手の体力と魔力を奪っていく。】


 え、A級下位……!?

 C級上位からすっ飛ばしだと……いや、元々C級上位にしてはかなりレベルが高めだったし、B級下位のマギアタイト爺と同じ最大レベルだった。

 C級上位の中ではトップクラスだったのだろう。

 だが、それにしても、まさか一気にここまで伸びるとは思っていなかった。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:アトラナート

状態:通常

Lv :1/102

HP :224/224

MP :52/218

攻撃力:196

防御力:139

魔法力:214

素早さ:175

ランク:A-


特性スキル:

〖闇属性:Lv--〗〖HP自動回復:Lv6〗〖帯毒:Lv7〗

〖気配感知:Lv7〗〖猫又:Lv--〗〖忍び歩き:Lv7〗

〖魅惑の魔眼:Lv2〗〖吸魔闇粘糸:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv1〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv5〗〖魔法耐性:Lv4〗

〖毒耐性:Lv7〗〖呪い耐性:Lv7〗


通常スキル:

〖毒牙:Lv5〗〖蜘蛛の糸:Lv5〗〖仲間を呼ぶ:Lv1〗

〖糸達磨:Lv5〗〖毒糸:Lv6〗〖首吊り糸:Lv6〗

〖騙し討ち:Lv3〗〖カース:Lv4〗〖人化の術:Lv6〗

〖自己再生:Lv4〗〖ダークスフィア:Lv4〗〖クレイ:Lv4〗

〖死魔凶爪:Lv3〗〖念話:Lv2〗〖病魔の息:LV3〗

〖断糸:Lv3〗〖鉄球振り子:Lv3〗〖パペット:Lv3〗

〖アビスフィールド:Lv3〗〖ドッペルコクーン:Lv1〗


称号スキル:

〖魔王の配下:Lv--〗〖糸の達人:Lv5〗〖意地悪:Lv--〗

〖突然変異:Lv--〗〖執念:Lv5〗〖狡猾:Lv4〗

〖深淵喰らい:Lv2〗〖暗殺者:Lv6〗〖最終進化者:Lv--〗

〖闇に巣食う者:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 め、めっちゃスキル増えてるじゃねぇか。

 これ、まともにレベルが上がったら、シンやアダム以上になるぞ……。


 嬉しいんだが、急に強くなりすぎて正直困惑している。

 マギアタイトがB級下位からB級上位だったので、やはりA級には壁があるのかもしれないな、と考えていたところだったのだ。

 ナ、ナイトメアだよな? 大丈夫だよな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る