第479話
残ったマリス・キャタピラの群れを片付けるのに手間は掛からなかった。
芋虫共はハデス・マンドラゴラが敗北したのを見るなり、地面に穴を掘ってあっという間に逃げて行ってしまったからだ。
逃げるために地中に逃れた最後の一体を、アロが肥大化させた左腕で勢いよく地表ごと吹き飛ばした。
抉れた地中の中から、身体が大きく抉られた芋虫が跳び出してくる。
アロは最後の一体が力尽きたのを見届けると、俺へと向かって走ってきた。
「竜神さ……ま?」
途中で足を止め、目を大きく開いて俺の顔を見上げる。
『どうしたアロ?』
「トレント、何をやっているの……?」
アロが無表情な顔で、声を怒りに振るわせながら、俺の頭上へと手を向けた。
必死にトレントが幹を捩って無罪を訴える。
『ち、違うっ! 戦闘のために必要だっただけだから! 別に、頭乗っ取られたわけじゃねぇから!』
俺はトレントさんを降ろす。
ヴォルク達も集まってきたので、とりあえず全員のレベルの上昇具合を確認することにした。
アロは【Lv:55/85】から【Lv:67/85】へ、
ナイトメアは【Lv:48/70】から【Lv:53/70】へ、
マギアタイト爺は【Lv:57/70】から【Lv:61/70】へ、
黒蜥蜴は【Lv:1/80】から【Lv:28/80】にまで上がっていた。
あ、上がり幅がやべぇ……。
結構な数がいたからな。
マリス・キャタピラ狩りは、マンドラゴラ狩りよりも効率がよかったかもしれない。
特にアロの上がり幅が凄まじい。
アロは元々、魔法力がずば抜けて高く、広範囲型魔法スキルにも優れている。
格下を一掃する能力に長けているのだ。
『さ、トレント、早速お前の進化を見せてやってくれ』
『はっ! 主殿!』
トレントが嬉しそうに幹を張る。
『ああ、黒蜥蜴と同じく石の後ろに移動するか。だが、お前は〖フェイクライフ〗との都合で、完全に一体っていうのは難しいんだよな。まぁ俺も嫌なら、極力見ないようには……』
『いえ、お気遣いなく』
ばっさりと断られた……。
なんだこいつ、見せたがりなのか?
それって変態なんじゃ……いや、別に魔物によって進化への意識は微妙に異なるんだろう。
まぁ、本人もとい本木が了承しているのならば、俺が口を挟む意味もないだろう。
俺は早速、〖フェイクライフ〗をトレントへと放った。
いつもアロやトレントを進化させるのは相方の役目だったので、なんだか妙な気分だ。
黒い光がトレントを包み込み――次の瞬間、光を突き抜けて一気にトレントが巨大化した。
両脇から伸びていた腕の様な細長い枝が、どんどん太くなっていく。
俺は最初は呆然とトレントを眺めていたが、自然と目線が上がっていき、最後には完全に見上げる形になった。
トレントがでかすぎるのだ。
いや、マジで軽く七メートルくらいある。
そりゃあ俺の方が全長では勝っているが、高さではボロ負けである。
おい、これどうやって運べっていうんだ。
【〖タイラント・ガーディアン〗:B+ランクモンスター】
【巨大なトレント。その威容は守護者と称するに相応しい。】
【恐ろしく打たれ強く、防御も硬い。】
【多彩な近接スキルを用いて殴り合いを熟しつつ、その圧倒的な耐久性を活かして粘り勝ちを狙う。】
【だが、真に恐ろしいのは、〖タイラント・ガーディアン〗が怒りに狂い、守りを捨てて暴れ始めたときである。】
お、おお……そうか、トレントさんも、ついにB+級になっちまったか。
いや、これ普通に強い奴だろ。
前回の〖マジカルツリー〗のときの、ちょっと惜しいけど外しているような感じがしない。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐種族:タイラント・ガーディアン
状態:呪い
Lv :1/85
HP :223/273
MP :11/114
攻撃力:120
防御力:186
魔法力:147
素早さ:83
ランク:B+
特性スキル:
〖闇属性:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv3〗〖硬化:Lv5〗
〖HP自動回復:Lv4〗〖MP自動回復:Lv4〗〖飛行:Lv1〗
〖癒しの雫:Lv2〗〖不屈の守護者:Lv--〗〖重力圧縮:Lv3〗
〖忍び歩き:Lv4〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv6〗〖落下耐性:LV5〗
通常スキル:
〖根を張る:Lv4〗〖クレイ:Lv4〗〖レスト:Lv6〗
〖ファイアスフィア:Lv6〗〖アクアスフィア:Lv3〗〖クレイスフィア:Lv6〗
〖ウィンドスフィア:Lv3〗〖念話:Lv3〗〖グラビティ:Lv4〗
〖ポイズンクラウド:Lv2〗〖フィジカルバリア:Lv4〗〖アンチパワー:Lv5〗
〖デコイ:Lv2〗〖スタチュー:Lv4〗〖メテオスタンプ:Lv4〗
〖木霊化:Lv4〗〖バーサーク:Lv4〗〖ウッドストライク:Lv4〗
〖ウッドカウンター:Lv3〗〖鎧破り:Lv3〗〖ガードロスト:Lv3〗
〖クレイウォール:Lv4〗〖地響き:Lv3〗〖熱光線:Lv2〗
称号スキル:
〖魔王の配下:Lv--〗〖知恵の実を喰らう者:Lv--〗〖白魔導師:Lv6〗
〖黒魔導師:Lv6〗〖竜の落とし物:Lv--〗〖暴れ巨大樹:Lv--〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
お、おお……〖熱光線〗があるのか。
つうか〖飛行〗……? いや、飛べる要素が見つからないぞ。
持って運べないから、飛んでくれると凄くありがたいんだけれども。
気になったスキルをいくつか調べてみることにした。
【特性スキル〖不屈の守護者〗】
【守護者は決して同じ攻撃の前に二度倒れることはない。】
【一度受けた攻撃に対する耐性を持つ。】
お、おお……。
もっと早めに持っておいて欲しかったと思わなくもないが、普通に強いスキルだ。
耐性スキルの少ないトレントにとっては特に意味のあるスキルとなる。
【特性スキル〖重力圧縮〗】
【物質に強力な重力を付与し、密度を引き上げることができる。】
【自身に使うことで攻撃力・防御力を大きく向上させることができるが、反動としてHPが減少する。】
グラビティの応用版ってところか?
これ……ダメージ軽減や近接攻撃は無論のこと、トレントの操る〖クレイ〗に使えば、色々と応用が利くんじゃなかろうか。
【通常スキル〖ガードロスト〗】
【補助魔法スキル。対象防御力を減少させる代わりに、攻撃力を大幅に向上させる。】
【敵にも味方にも使えるタイミングがあって使える機会が多い代わりに、使い熟すことは難しい。】
お、おお……! なるほどこれは面白いスキルだ。
攻撃力を上げて味方を支援したり、敵の防御力を引き下げて攻撃を通りやすくするわけか。
……問題なのは、トレントさんに使いこなせるかどうか、だな。
後、中身が気になるスキルは……これだな。
というより、これに賭けている部分がある。
トレントさんをどうやって連れ帰るか悩んでいたが、このスキルによっては問題にならないかもしれない。
【通常スキル〖木霊化〗】
【木の精霊へと姿を変えることができる。】
【なお、精霊へと姿を変えている間は、HP・攻撃力・防御力などの身体能力が半減する。】
お、おお……!
もしかしたら、これを使えばトレントが運搬可能なサイズになるかもしれない。
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