第477話

 地面が爆ぜ、土飛沫が舞った。

 大地の上に、醜い根の塊の、化け物が姿を現した。


 根に、喰い破られた跡の様な、歪な形の大口が開いている。

 その少し上には、ぎょろぎょろとした眼球が、不均一な大きさで三つ蠢いていた。


 醜い巨体の下から、黄土色をした、顔に黒丸の模様が三つついた、人間大の芋虫が大量に蠢いていた。


「ブルワァァァアアアアアアアアアッ!」


 根の塊の化け物が大声を上げた。

 大きな口の中から芋虫が飛び交う。


 な、なんだこいつ……。

 次から次へと、けったいな奴が出て来やがって。


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種族:ハデス・マンドラゴラ

状態:憤怒

Lv :81/85

HP :786/786

MP :267/267

攻撃力:584

防御力:372

魔法力:491

素早さ:348

ランク:B+


特性スキル:

〖土属性:Lv--〗〖HP自動回復:Lv8〗〖MP自動回復:Lv5〗

〖光合成:Lv--〗〖忍び足:Lv7〗〖超再生:Lv7〗

〖過回復:Lv7〗〖暴れ花:Lv--〗〖毒花粉:Lv4〗


耐性スキル:

〖石化耐性:Lv9〗〖麻痺耐性:Lv9〗〖混乱耐性:Lv8〗

〖睡魔耐性:Lv8〗〖即死耐性:Lv8〗〖毒耐性:Lv8〗


通常スキル:

〖噛みつく:Lv7〗〖穴を掘る:Lv7〗〖自己再生:Lv6〗

〖地響き:Lv7〗〖ウィーク:Lv6〗〖クレイ:Lv5〗

〖クレイウォール:Lv5〗〖麻痺噛み:Lv7〗〖酸の唾液:Lv6〗

〖グラビドン:Lv5〗〖忌み噛み:Lv6〗〖猛臭の息:Lv5〗〖ハイジャンプ:Lv1〗


称号スキル:

〖稀少魔物:Lv--〗〖大珍味:Lv--〗〖長寿の秘薬:Lv--〗

〖巣喰われる者:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 こ、こいつ、普通に強いぞ!

 他のマンドラゴラとは比べ物にならない。

 いや、フェンリルよりも強い。

 バランス型だからか、アタッカー型のフェンリルよりも素早さでは劣っているが、レベルの高さもあって他のステータスでは圧倒している。


 アロや、ましてやトレントさんが近くにいる状況で戦っていい敵ではない。

 そして何より……あの芋虫共も危険だ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:マリス・キャタピラ

状態:呪い

Lv :52/65

HP :388/388

MP :98/98

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【〖マリス・キャタピラ〗:C+ランクモンスター】

【芋虫であるが、これ以上成長することはない。】

【悪意の吹き溜まりより生まれた魔物であり、それそのものが呪いの塊。】

【喰らいついたものを魔物へと変異させ、その魔物を巣にして数を増やすことがある。】


 あの芋虫……HP、攻撃力、素早さに恵まれた、アタッカータイプのステータスだ。

 それがハデス・マンドラゴラから次々に吹き出て来る。

 つうか……この辺りがマンドラゴラ畑になってたのは、この虫共の仕業か。

 ……高価なマンドラゴラを量産してくれることを考えたら益虫といえないこともないかもしれないが、B以上を発生させる種になると考えると、人間にとってはこの上なく悪夢かもしれない。

 悪意の吹き溜まりより生まれた……という部分をどう解釈するのか次第だが、コイツ自体、何らかのスキルによって作り出された魔物の様な気もする。


 C+が大量に湧いてくるのはありがたいが……気を抜いていれば、誰か窮地に陥ってもおかしくない。

 安全を優先するならば、ここは一度撤退するべきだろう。

 後で俺がハデス・マンドラゴラだけ倒して、皆を呼び込んでもいい。


「多少は斬り甲斐のありそうなデカブツではないか」


 ヴォルクがマギアタイト爺の剣を手に構える。

 り、臨戦態勢!?


『いや、あれはちょっとまずくねぇか』


「安心しろ、補助に徹してやる。我も協調性がないわけではない」


 そ、そうじゃなくて……。


「竜神さま……ここは、行くべきだと思う」


 アロが俺を見上げ、口にする。

 そ、そうか? レベリングを焦りすぎていないか?


「……イルシア、お前はあれが、リリクシーラよりも恐ろしいのか? あんな力だけの怪物より、我にはあの女の方が遥かに恐ろしい。遠目に見た奴の目は、これまで見て来たどの魔物よりも冷酷であったぞ」


 ……それは、そうだ。

 目前の敵を安全マージンを取って回避すれば、後に続くリリクシーラ戦に響くことになる。


「お前がその力を手にして安心しているつもりなら、考え方を改めた方がいい。あいつは、追い詰められれば何を仕出かすか、わからぬ類の奴だ。いや、何かの枠に当て嵌めて考えること自体が危険であろう。目前の幸運を脅えて逃す者に勝利はないぞ」


 ヴォルクには経験に裏打ちされた勘がある。

 多くの強者を見て来たであろうヴォルクが言うのならば、それはきっと事実なのだろう。

 俺もリリクシーラにはステータス以上の不気味なものを感じる。


『……すまねぇ、俺がビビっちまっていた』


 ここは願ったりな流れのはずだ。脅えて下がってる場合じゃねぇ。

 もうひとレベル上げ、させてもらおうじゃねぇか!


『さっきと同じ組で頼む! ヴォルクは進化したての黒蜥蜴を守ってくれ! アロとナイトメアはお互いのカバー、そんで、トレントさんは俺が連れて行く!』


 俺はトレントさんを前足で掴み上げ、頭へと乗せた。


『あの三つ目マンドラゴラは、俺とトレントでやる!』


 俺は前足を振るう。

 スキル〖次元爪〗である。

 離れた地面に大きな傷跡が生じ、芋虫共が宙に弾け飛ぶ。

 直撃を受けた芋虫は身体が左右に引き千切れ、捻じれていた。


【経験値を510得ました。】

【称号スキル〖歩く卵Lv:--〗の効果により、更に経験値を510得ました。】

【〖オネイロス〗のLvが64から65へと上がりました。】


 よし、C+からの経験値獲得を確認……。

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