第389話
俺は壁に隠れながら顔を出し、サッとミリアの姿を再度確認する。
間違いねぇ、他人の空似じゃない。間違いなく本人だ。
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〖ミリア・ミレアニア〗
種族:アース・ヒューマ
状態:通常
Lv :17/70
HP :64/64
MP :76/76
攻撃力:36+8
防御力:47+12
魔法力:69+15
素早さ:58
装備:
手:〖癒し手の錫杖:D̟+〗
体:〖白魔導士のローブ:C-〗
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv5〗
〖魔術師の才:Lv4〗
耐性スキル:
〖毒耐性:Lv4〗〖魔法耐性:Lv2〗〖混乱耐性:Lv1〗
通常スキル:
〖レスト:Lv4〗〖ファイアボール:Lv4〗〖ウォーターボール:Lv2〗
〖ワイドレスト:Lv2〗〖ケア:Lv2〗〖ファイアスフィア:Lv1〗
〖クレイ:Lv2〗〖クレイシールド:Lv1〗
称号スキル:
〖白魔導士:Lv4〗〖魔物使い:Lv2〗
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お、おおおおっ!?
ひっさびさに見たら、結構がっつり成長してる!?
昔見たときはちょっと魔法が使える村人くらいだったが、随分とあれからレベル上げを行っていたようだ。
メッチャ魔法も覚えてるじゃねぇか。
ミリアが唐突に俺を振り返ったので、慌てて首を引っ込める。
俺はミリアの村で、グレゴリーを殺した後、村人を威嚇している。
ミリアからしてみれば、俺はただの、進化に伴って心身共に化け物になっていったドラゴンとしか見えていないだろう。
もう二度と、会わねぇ方がいい。そうに決まっている。
しっかし……あ、危ねぇ。今、見つかるところだった。
いや、もっと堂々としてた方がいいのか?
下手にこそこそしてたら、不審者みたいに見られるだけなんじゃねぇのか?
こっちは人化してるんだから、どうせわかりっこねぇんだ。
「……何をやっておる」
挙動不審にパタパタと動き、遠巻きにミリアを観察する俺へと、ヴォルクが不審げな眼差しを向ける。
アロは頬を膨らませ、上目遣いで俺を睨んでいた。
「ち、違う……これは、私情っつうか……ほら、あ、あっちの金髪の女剣士が王女のパーティーについて話しているのが聞こえたから……その情報が欲しくて……」
俺はミリアと会話している、金髪の女剣士を指で示す。
「それじゃあメルティアさん、私は買い出しに向かってきますね」
「うむ、私は一足先に戻っている」
ミリアが小さく女剣士へと頭を下げて、全く別の通りへと向かって歩いていく。
女剣士はその背を見送った後に、大きな欠伸と背伸びをして、ミリアとは別の方向に歩き始めた。
俺はそうっとミリアの後ろをついていこうとしたが、足を不意に何かに引っ掛けられ、バランスを崩してその場にひっくり返った。
足に巻き付いているのは、蜘蛛の糸であった。
「ありがとう、ナイトメア」
アロがナイトメアの頭を撫でようとして、押し退けられていた。
どうやら、アロに頼まれてナイトメアが放ったものらしかった。
お、俺の言うことは聞かないのに、アロの言うことは聞くのかよアイツ……。
「ま、街中であんまし、そういう正体明かしかねねぇスキルは使わないでくれ……」
「パ、パーティーの詳細が知りたいなら、あっちのお姉さんの人から聞くべきです」
アロが女剣士へと指を向ける。
「え……あ、いや、やっぱあの人は、ほら……別に、いいかな」
あの女剣士も、王女にパーティ―に招かれていたりと、ちっとは気になるが……俺としては、ミリアと比べれば天と地ほどに優先順位の差がある。
「竜神さまっ!」
違う、違うんだ。
私情だけど、なんつうか、俺にとっては一大事なんだ。
いや、本当に。
まぁ……でも、後を追い掛けても仕方ねぇよな。
話しかけたところで、ミリアからしてみれば、俺はただの見たことのねぇ奴だ。
よしんば正体が通じたとしても、そこからいいふうに話が動く気がしねぇ。
「どうする? 顔見知りだというのならば、我がこの二人を連れて、別行動を取ってやってもよいが」
ヴォルクが言うと、アロがヴォルクへと向き直る。
やめとけアロ、そいつ、普通に強いからな。
「つーかヴォルク……気とか、遣えたのか……」
「お前、実はちょっと我を馬鹿にしておるであろう」
「い、いや……悪い」
どうしても初対面のときのイメージが強くなっちまうんだよな。
「それと……気遣いは嬉しいが、そういうのは大丈夫だ。あの子と俺は……もう、会わねぇ方がいいだろうしな。大丈夫だアロ、私情は挟まねぇよ」
俺はふくれっ面を浮かべながらつかつかと歩み寄ってきたアロの頭を撫でる。
アロは俺の顔をじいっと見ていたが、やがて眼を瞑って俺の腰へと抱き着いた。
「……ちょっと誤解して、焼きもち焼いちゃいました、ごめんなさい……」
しっかし、皮肉なもんだな。
やっと悠々と会話できるくらいには〖人化の術〗も身に着いたっていうのに、もう顔を合わせることさえ敵わねぇとはよ。
でも、顔を見れてよかった。
なんでここにいたのかは、まったくわかんねぇけど……。
ちらりと、俺は遠くを歩くミリアを見る。
これで、彼女を見るのは最後になるかもしれねぇ。
ありがとうな、ミリア。そんで、ごめんな。
まだ、俺のことを恨んでるだろうか。
「ごめんなさい……あの、急いでいますので、道を開けてもらえませんか?」
「いいじゃん、何が不満なのかな? このオレがさぁ、サーマルさんが、誘ってあげてるわけじゃない、なぁ? これってすっごく光栄なことだよ? オメデトウ!」
目を向けたミリアは、変な奴に荒絡みされていた。つーか、質の悪いナンパだった。
髪は男にしてはやや長めで、肩に掛かる程度にまで伸ばされてた。
エメラルドとグレーのツートーンカラーが渦を巻いている。
鼻は高く、目は睫毛が長くぱっちりと開いており、そのせいか顔つきがやや幼く見える。
童顔寄りではあるが、とんでもなくイケメンだった。
なんだろう。
見ていると、とてつもなくムシャクシャする。
「ごめんなさい、メルティアさんに怒られますから!」
男は、横を抜けて走ろうとしたミリアの手首をがっちりと掴む。
ミリアがもがくが、手はびくともしていない。
「はい、捕まえたぁ」
あ、あれはやりすぎだろ……。
止めるべきか、しかし俺はもうミリアに関わるべきではないのではと考えていると、急にミリアの身体が大きく跳ね、それきり動かなくなった。
ミ、ミリア……?
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〖ミリア・ミレアニア〗
種族:アース・ヒューマ
状態:毒(大)、麻痺、昏睡
Lv :17/70
HP :35/64
MP :76/76
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あっ、あいつ、毒盛りやがった!?
い、いつだ? 全く見えなかった。何を考えてやがるんだアイツ。
「あれ、どうしたの? 大丈夫? ひょっとして、病気か呪い? ちょっと、オレが休めるところに連れて行ってあげるね?」
俺は地面を蹴り、二人の許へと向かった。
あのクソヤロー、一線越えやがったな。遠慮なく顔面ぶっ飛ばさせてもらうぞ。
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