第340話
早速、アロ達のレベルアップの具合を確認することにした。
ふと顔を上げたとき、プチナイトメアがキメラリッチの首元にしがみつき、赤い糸を張って居座っているのが見えた。
俺の視線に気が付いていないわけではないだろうが、無視してキメラリッチの体液を啜ることに集中している。
それ、腐ってんじゃねぇのかな。
……こいつ、進化とかあんまり興味なさそうだな。
まぁ、とにかく、プチナイトメアから見ていくとしますか。
がっついている背中に向けて、〖ステータス閲覧〗を使う。
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種族:プチナイトメア
状態:通常
Lv :45/45(MAX)
HP :163/190
MP :18/177
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う、うっしゃ!
一気にレベル8アップ!
ひょっとしたら、進化の準備として栄養でも蓄えてんのかもしれねぇな。
次の進化は、順当に行ったらナイトメアか?
……デカくなって、手に負えなくなったら嫌だな……放流するわけには絶対いかんし。
よくよく考えたら、こいつのレベル上げてよかったんだろうか。色々悪さしかねんぞ。
目ェ離したら、普通に旅人とか襲撃しかねなさそうだ。
さて、お次はアロのレベルを……と、考えていたのだが、トレントさんが『見て見て!』と言わんばかりに、そわそわしながら俺の許へとやってきた。
プチナイトメアがあんなにクールに構えてんのに、同じモンスターでもこの違いよ。
トレントさん天使かよ。
……つーかマジで〖念話〗もうちょっと使ってくれねぇかな。
せっかくこう、使えるようになったんだからよう……。
なんか、逃した身としては悔しいんだけど。
別に攻撃魔法は〖鎌鼬〗で間に合ってるからいらんかったが、〖念話〗さえあったらアロ達にもっと的確に意思を伝えることができるようになるし、魔物相手でも場合によっては戦闘を回避したり、協力してもらったりすることだってできる。
人間相手に意思疎通するのにも便利だ。
それに〖グラビティ〗も、色々と応用が利きそうだからなぁ……。
魔力特化の俺が放てば、それだけで周囲の魔物の動きを一気に封じられるはずだし。
まぁ、過ぎたことはどうしようもねぇし、仕方ねぇんだけどさ。
そもそも相方が喰うの、止めたの俺だし。
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種族:レッサートレント
状態:呪い
Lv :25/25(MAX)
HP :86/141
MP :3/92
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11アップ! よっしゃああ!
元々レベル低かったから、上がりやすかったんだな。
よかったぁ……トレントさん、よかったなぁ……。
これでもう、無進化のトレントさんなんて馬鹿にされずに済むぞ。
長かった……まさか、たった24のレベル上げが、ここまでしんどいとは思わなかった。
知恵の果実に感謝だな。よかった、トレントさんが食べて本当によかった。
俺が食べなくてよかったじゃないか。
一生レッサートレントなんじゃなかろうかと、俺、ずっと心配していたんだ。
『…………』
なぜかトレントは、複雑そうな目で俺を見る。
ど、どうした? もっと素直に喜べよ。
さて、アロは……あれだけ表立って頑張ってたんだから、MAX余裕だろうな。
Bランク相手にあれだけ善戦したんだもん。なんなら、レベル最大が近かったせいで、ちょっと経験値もったいなかったかもしれんな。
「竜神さま! 竜神さま!」
アロが手を揺らしながら俺の許まで駆けてきて、顔に抱き着いて来る。
こらこら、そんなに近いと、レベルがチェックし辛…………ん?
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名前:アロ
種族:レヴァナ・ローリッチ
状態:呪い
Lv :63/65
HP :362/378
MP :88/397
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……よ、四つしか上がってねぇ……。
あ、あれ? こんなもんだっけ? あれ?
アロに全体の半分は入っただろと思ってたんだけど……あれ?
俺……経験値倍化スキルがあるから、ちょっと甘く見てたかもしれねぇな。
確かに、50超えたあたりから、がくんとレベル上がりにくくなってたような……。
「…………?」
アロがじいっと、不思議そうな顔で俺を見つめる。
俺は思わず、さっと目を逸らした。
アロが首を傾げながら、俺の顔の先へと付いてきた。
こ、心が痛い……。
悪い、アロ……悪い……。
ちょ、ちょっとだけ足りなかったみたいだ……。
まぁ、これくらい、次の魔物狩ったら、すぐに挽回できるし……な? だから……な?
アロは俺の表情を見て、察したらしく、がっくりと首を下げた。
アロ……。
アロの肩を、とんとんとトレントの枝が叩いた。
アロが何とも言えない顔でトレントを振り返る。
……励ましてるつもりかもしれねぇけど、それ今のトレントがやっても逆効果だからな。
糸でぶら下がって移動してきたプチナイトメアが、空気読めよと言わんばかりに体当たりをかました。
トレントがその場でひっくり返り、大きな音が鳴った。
き、気持ちはわかるが、プチナイトメアとトレントじゃ、結構ステータスに差があるから、致命傷になりかねんぞ‥‥…。
アロはプチナイトメアとトレントのじゃれ合いには興味がない様子で、三角座りして落ち込んでいる。
も、もう完全に人型なんだし、そんな焦んなくたっていいんじゃねぇのか?
それに、よくよく考えてみりゃ、下手に進化して魔物っぽい姿になること考えたら、別にそのままでも……。
「……やっと、竜神さまの役に立てるくらい、強くなれると思ったのに」
ぽつりと、小声でアロが呟いた。
ざ、罪悪感が……。
い、いけるいけるって! たったの2レベルくらいすぐだって!
よっしゃ、次行こうぜ! 次!
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