第272話

 子蜘蛛達が、グラファントを傷口から喰い荒らしていく。

 あまり深くは入り込めていないようだが、流血の量がどんどんと増していく。

 グラファントは最初は潰れた足を気力で持ち上げ、身体を振るって抵抗していたが、それも段々と緩やかになっていく。

 やがてはただ痙攣しているだけとなった。


 身体中のあらゆる傷口から血が垂れ流され、グラファントのHPは減少していった。

 やがてゼロとなり、グラファンの眼球がぐるりと上を向き、生気を失う。

 身体中の力が抜けたのがわかった。


【経験値を173得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を173得ました。】

【〖ウロボロス〗のLvが71から72へと上がりました。】


 取得経験値が告げられ、グラファントがついに息絶えたことを知る。

 じゃあなグラファント、いい奴だったよ、多分。

 いや、知らねぇけど。


 さて、これでグラファントの経験値がアロ達にも入った……ってことでいいのかな。

 Lv上がってくれたら、安定した狩りもできるようになると思うんだが。

 ウロボロスのMP量のお蔭で無限回復もできるし、一撃でも耐えられるようになればかなり違う。


 まず手始めに、グラファントの血肉に塗れている八体のベビーアレイニーの内の一体へと視線を移す。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ベビーアレイニー

状態:通常

Lv :5/12

HP :8/17

MP :5/9

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 Lv1からLv5か。

 グラファント齧ってただけでこれだけ上がったと考えれば、悪くはねぇな。

 追い打ちにはなったかもしれねぇが、トドメ刺したのは〖流血〗の状態異常だし。


 次の進化も十分に見えてきた。

 Eランクのベビーアレイニーは、元々進化まで持っていきやすい。


 さて、お次は問題のレッサートレントとアロだな。

 レッサートレントへと目を向ける。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:レッサートレント

状態:呪い

Lv :9/25

HP :38/75

MP :9/29

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 Lv4からLv9か。

 俺が経験値倍チートあるからかじれったれい気はするが、まぁ順調だな。

 基本的にさっきの戦いではアロの足役になってただけで、直接グラファントと戦ってたわけではねぇし……。

 何かと結構優秀なんだけど、攻撃系統のスキルがねぇんだよな。


 次に、レッサートレントの枝の上でぐったりとしているアロへと視線を移す。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名前:アロ

種族:レヴァナ・メイジ

状態:呪い

Lv :14/30

HP :60/78

MP :4/87

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 おっ、Lv6からLv14まで上がってんじゃねぇか!

 ついに折り返し地点の近くまで来た。

 ここを乗り切れば、アロは晴れてCクラスモンスターだ。

 容姿も、次できっと大きく人間に近づくことだろう。


 しかしアロは魔力がないのが苦しいのか、随分と弱っていた。

 アロは魔力で身体を維持している節があるのかもしれない。

 実際、肌の質感もかなり悪くなっている。

 MP不足は、俺以上に深刻なのだろう。


 魔法攻撃特化であるアロは、MPの限りしか行動することができない。

 経験値上げにも、そこが最大の障害となる。

 MPさえどうにかできりゃ無限に攻撃してられるし、Lvもあっという間に上げられんだろうに。

 まぁ、そんな甘い話はねぇよな。

 日を改めるしか…………ん?


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名前:アロ

種族:レヴァナ・メイジ

状態:呪い

Lv :14/30

HP :60/78

MP :4/87

攻撃力:43

防御力:37

魔法力:79

素早さ:32

ランク:D


特性スキル:

〖グリシャ言語:Lv2〗〖アンデッド:Lv--〗

〖闇属性:Lv--〗〖肉体変形:Lv4〗


耐性スキル:

〖状態異常無効:Lv--〗〖物理耐性:Lv3〗

〖魔法耐性:Lv2〗


通常スキル:

〖ゲール:Lv5〗〖ポアカース:Lv3〗〖ライフドレイン:Lv2〗

〖クレイ:Lv5〗〖自己再生:Lv2〗〖土人形:Lv4〗

〖マナドレイン:Lv1〗


称号スキル:

〖邪竜の下僕:Lv--〗〖虚ろの魔導師:Lv3〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 称号増えてる……?

 い、いや、そんな場合じゃねぇ、通常スキルが増えてやがる。

 Lvアップで習得したのか。


 〖マナドレイン〗、このスキルは薄っすらとだが、見た覚えがある。

 〖ステータス閲覧〗が上手く通らなかったためはっきりと見ることはできなかったので確信は持てないが、スライムが〖ライフドレイン〗と〖マナドレイン〗らしきスキルを持っていたのは覚えている。

 名前も似ているし、セットで覚えることが多いのかしれない。

 アロは〖ライフドレイン〗は持ってたし、習得しても不思議じゃなかったか。


 〖マナドレイン〗の名前から察するに、MPを吸い上げて自分のものにするスキルだろう。

 ならば、俺のMPを吸い上げさせれば万事解決である。

 何せ俺のMPは無尽蔵、クソスキル〖人化の術〗でさえも強引に長時間扱うことができるほどだ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

〖イルシア〗

種族:ウロボロス

状態:通常

Lv :72/125

HP :1808/1808

MP :1926/1926

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 単純計算、アロを22回フルチャージすることができる。

 おまけに〖MP自動回復〗の効果で、俺のMPはあっという間に回復する。

 実際、さっき〖鎌鼬〗を放ったときに減ったMPはすべて回復済みである。


 俺から〖マナドレイン〗し続けることで、最大火力で土魔法の〖クレイ〗や風魔法の〖ゲール〗をぶっぱなし続けることができるはずだ。

 アロはステータスの中では魔法力がずば抜けているし、Lv14になった今なら、Cランクモンスターにだってダメージを通せるかもしれない。


 アロよりランクが上で、防御もさして高くなく、おまけにその辺にゴロゴロしているモンスタ―ならば知っている。

 そう、アビスである。

 今のアロならば、俺が攻撃に手を貸さずともアビスを狩れるかもしれない。

 アビスを狩ることができれば、最大Lvまであっという間に成長できるはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る