第228話

 思いのほか、ワイトのレベルアップは遅かった。

 俺には補助の称号スキルがあったから速かっただけなのだろう。

 まさか、レベルを3つ上げるだけでこれだけ苦労するとは思わなかった。


 ワイトはリトルトレントを六体倒してようやくLvが4になった。

 ステータスは上がっているようで、楽々とリトルトレントを倒せるようにはなってきたが。


 更に追加で三体倒したが、まだLvは最大にならない。

 多分、そろそろ次で上がるはずだが……。


 俺はワイトと一緒に若木を探し、相方に頼んでリトルトレントへと変えてもらった。


【通常スキル〖魂付加(フェイクライフ)〗のLvが3から4へと上がりました。】


 ……これも使いまくってっから、ガツガツLv上がってくな。


 因みに、HPのなくなったリトルトレントに〖魂付加(フェイクライフ)〗を掛けても蘇ることはなかった。

 ワイトなんかモロに骨だから、死体が駄目ってはずはないんだがな。

 魔物化しやすいものに何か、法則性があるのかもしれない。

 からっきし手応えがなかったわけじゃねぇから、〖魂付加(フェイクライフ)〗のスキルLvを上げてけば使えるようになる気もするが。


「ヒギ、ヒギィイイイ!」


 根を引き抜いたリトルトレントが、ワイトへと飛び掛かる。

 ワイトはあっさりとリトルトレントの動きを躱し、背に絡みついて枝をへし折り、本体に齧りつく。


「ヒギィ……」


 リトルトレントは動かなくなり、ぐったりとその場に倒れ込んだ。

 ……これで、ワイトのLvが上がったはずだ。


 もうちょっと人間っぽい姿に進化できればいいんだけど。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ワイト

状態:呪い

Lv :5/5

HP :14/14

MP :1/6

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 よし、上がっている。

 これで進化ができるはずだ。


「グゥォ……」


 俺が声を掛けると、ワイトが俺を見上げる。

 からんと、音を立てて頷く。

 そして進化するのかと思いきや……なかなか姿が変わらない。

 ただじぃーっと俺に眼窩を向けている。


 ひょっとして、俺が何かしなくちゃ駄目なのか?

 アンデッドに対して俺ができることといえば、〖魂付加(フェイクライフ)〗くらいである。


 相方よ、ワイトにもう一発頼む。

 なるべく魔力を強めで。


「グァッ!」


 相方が鳴くと、ワイトを黒い光が包む。

 光が晴れると、中から……ワイトが出てきた。


 骨の色が若干青くなっており、額に十字架のマークが浮き出ている。

 そして目の付近や身体の骨に模様がついているが……それ以外特に変わったところはない。

 人間に近づいたというよりは、むしろ順調に魔物化しているような気さえする。

 ……やっぱし、生前の身体を取り戻させるのは不可能なんだろうか。


 とにかく、何に進化したのかを知っておきたい。

 ステータスを確認してみっか。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:スカル・ローメイジ

状態:呪い

Lv :1/13

HP :15/15

MP :1/10

攻撃力:5

防御力:4

魔法力:6

素早さ:3

ランク:E


特性スキル:

〖グリシャ言語:Lv1〗〖アンデッド:Lv--〗

〖闇属性:Lv--〗


耐性スキル:

〖状態異常無効:Lv--〗〖物理耐性:Lv3〗

〖魔法耐性:Lv1〗


通常スキル:

〖ゲール:Lv2〗〖ポアカース:Lv2〗

〖ライフドレイン:Lv1〗〖クレイ:Lv1〗


称号スキル:

〖邪竜の下僕:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 〖スカル・ローメイジ〗……要するに、程度の低い骨の魔術師ってことか?

 じゃあ次はスカルメイジか?

 こ、これ、肉体手に入んのかな……。

 一生骨なんじゃねぇのか。いや、死んでるんだけども。


 せめて俺みてぇに進化先選べればまだ、希望のある道を選ぶこともできるんだけどな……。

 ま、まぁでも、MPが伸びたってことは、安全に遠距離から攻撃できる回数が増えたってことだ。

 ワイトに……ああ、もう進化したから名前変わったのか。

 スカル・ローメイジに援護してもらって俺が表立って戦えば、簡単にパワーレベリングができるかもしれねぇ。


 危険が少ない分経験値も低いかもしれねぇが、ちまちま同ランク狩るよりはずっと効率がいいはずだ。

 玉兎もそれで一気にDランクまで進化した。

 それに〖魂付加(フェイクライフ)〗をLvアップに利用するのは……あまり、したくない。

 やっぱり殺すために生き物を作るっていうのは気分のいいことじゃあねぇ。


 このままずっと骨だったらどうしようと思いながら、俺はスカル・ローメイジの顔を見る。

 スカル・ローメイジも自分の姿に思うところがあるのか、自分の手を見ながらじっと立っている。

 喜んでる様子じゃあねぇよなぁ……そりゃそうか。

 どれくらい記憶があるのか聞いてみてぇけど、舌もねぇから喋れるわけねぇよな。骨だし。


 そういや生前の名前は表示されねぇんだな。

 種族変わる度に呼び方変えるのもなんか変な感じがするし、なんか名前考えてみっかな。


 でも男なのか女なのかもよくわかんねぇからな。

 骨夫なのか骨子なのか。

 男と女で骨格が違うっつうけど、子供だからなぁ……。


 人間の頃の習性が残ってんのはわかるんだけど、名前すら覚えてねぇかもしれねぇな。

 自分でわかってりゃステータスに表示されてそうな気もする。

 とりあえず名前が決まるまでは、一貫してワイトと呼ぶことにすっかな。

 別に口に出して呼ぶわけじゃねぇんだけどさ。


 今日のところはワイトを休ませてMPを回復させて……明日からまた、狩りに出てみることにするか。

 飯は貢物をもらうことにしよう。

 リトヴェアル族がまた来るのかどうかも気にかかるところだな。

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