第220話
化け物と対峙したまま、俺は固まる。
何か刺激を与えれば、化け物はあのまま咥えている子供を噛み殺しかねねぇ。
それに俺が動けば、奴も動く。
互いに牽制している状態のまま、ステータスの確認を済ましておきてぇ。
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種族:マンティコア
状態:通常
Lv :73/80
HP :453/453
MP :142/142
攻撃力:413
防御力:228
魔法力:194
素早さ:534
ランク:B
特性スキル:
〖猫又:Lv--〗〖隠密:Lv4〗〖気配感知:Lv6〗
〖グリシャ言語:Lv1〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv4〗〖魔法耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv3〗
〖毒耐性:Lv2〗〖麻痺耐性:Lv4〗
通常スキル:
〖痺れ麻痺爪:Lv7〗〖麻痺噛み:Lv8〗〖人化の術:Lv8〗
〖砂嵐:Lv6〗〖針千本:Lv9〗〖不意打ち:Lv7〗
称号スキル:
〖狡猾:Lv6〗〖執念:Lv6〗〖チェイサー:Lv9〗
〖猫科の意地:Lv3〗〖疾風の走り屋:Lv7〗〖最終進化者:Lv--〗
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マンティコア……か。
ここまで正に化け物ですと言わんがばかりの化け物は初めて見たかもしれねぇ。
人頭のライオンって、そりゃねぇだろ。
完全に物理特化型だなぁ……。
ランク下だし、全体的にステは勝ってんだけど……素早さ負けてんのがいただけねぇ。
素早さ上か下かで大分変わるからな。
初めて遭った魔物が強化大ムカデって、さすがにここまでヤバイところだとは思ってなかったわ。
こりゃ再引っ越しも視野だな。転勤族みたいになりそう。
……ん?
こ、こいつ、ちゃっかり〖人化の術〗持ってんじゃねぇか。
しかも俺よりスキルLv一個上じゃん。
嫉妬がヤベェんだけど。お前絶対いらねぇだろ。
……ま、まぁ、んなことはどうでもいいか。
戦闘ではまず関係ねぇスキルだし。
相方よ。
とりあえず、あの咥えられてる子供の回復頼む。
あのままだと死んじまう。
俺が心中で呼びかけると、相方がこくりと頷く。
「ガァァッ!」
マンティコアの口許を、〖ハイレスト〗の光が覆う。
子供の手が、ぴくりと動いた。
生きては、いる。
なんとか上手く引き離さねぇと。
「ゲバゲバゲバァッ!」
マンティコアが口を動かすと、子供の背を牙が抉る。
あいつの行動一つで子供が死にかねねぇ。
すぐに助けねぇと。
マンティコアは俺の〖ハイレスト〗を挑発とでも受け取ったようで、一気に飛び掛かってきた。
素早さ以外のステータスなら俺が大幅に勝っている。
攻撃を防ぎつつ、隙を見て思いっ切りカウンターを叩き込んでやるか。
あのステータスなら二回も殴ればそれだけで倒せるはずだ。
上位モンスターには珍しく、回復スキルを一切持っていない。
確実に攻撃を当ててやればいい。
「ゲバハァッ!」
マンティコアは俺の前にまで出ると、大きく跳んで前足を振り上げる。
引っ掻き攻撃か。
俺は翼を身体の前に回し、攻撃の妨げに使った。
マンティコアは俺の翼に爪を引っ掻けてくるりと回転し、俺の上を通過した。
背を引っ掻かれたらしく、激痛が走った。
位置に当たりをつけて尾でマンティコアを狙ってみるが、空振った。
大きく前に出ながら身体を翻し、再びマンティコアと対峙する。
くそっ、半端に防御に出るより思いっ切り正面から攻撃受けてやればよかったか。
どうせHPなら腐るほどある。
「ゲバハハハァッ!」
攻撃成功に気を良くしてか、マンティコアが再度突撃して来る。
おう、掛かってきやがれ。今度こそ思いっ切りぶっ飛ばしてやる。
あんまし余裕綽々って感じだと警戒されちまいそうだな。
走るマンティコアに向け、三発ほど〖鎌鼬〗を撃ち込んでやる。
「ゲバゲバゲバァッ!」
マンティコアは左右に動いて回避する。
そんな攻撃当たるものかとでも言うかのように鳴いた。
油断してもらってた方がありがたいからな。
今は存分調子に乗っておいてほしい。
マンティコアが地を蹴って飛び上がる。
先ほどとまったく同じ姿勢だった。
躱せるものなら躱してみろと、そういった余裕、傲りが見える。
これなら向かい撃てるんじゃ……いや、余計なことはしないでおこう。
安全策だ安全策。
俺が下手に動けば、またさっきみたいに予想外の動きを取られる可能性が高い。
がっちり受けて、そん後に重めの一撃を叩き込んでやる。確実にな。
俺は半歩退き、首を前に倒す。
俺の肩に、マンティコアの爪が喰い込んだ。
その瞬間を狙い、俺はマンティコアの腹を噛みついてやった。
「ゲバァッ!?」
〖毒牙〗のスキルだ。
たっぷり毒を流し込んでやる。
俺はその後、もがくマンティコアを前足で蹴り飛ばした。
マンティコアの身体が、木を巻き込んで転がって行った。
マンティコアは呆気なく、腹を上にして地に倒れた。
俺が噛んでやった腹からはどくどくと血が流れ出ていた。
散々調子乗ってくれてたわりにはあっさりだったな。
まぁ、こんなもんか。
HPと防御力はそんなに高くなかったからな。
その上、回復スキルもなしときた。
タフさが足りんよタフさが。
サバイバル生活するなら、俺みたいに頑丈極振りじゃねぇと。
俺はマンティコアの半開きの口に向けて、〖鎌鼬〗を軽く放つ。
「ゲバァ……」
人頭が、頬を叩かれたように逆側を向く。
咥えられていた血塗れの子供が、口から落ちた。
よし、第一目標達成。
後は子供に意識を向けさせないよう配慮しつつ、マンティコアをこんがりと焼いて今日のディナーにしてやるだけだ。
マンティコアが、息を荒くしながら立ち上がる。
「ゲバゲバ……ゲバ……」
あと一撃叩き込んでやれば、それで勝てそうだな。
おらおら掛かって来いよ。
さっきと同じ軌道で飛び掛かって来るか? おおう?
とと、油断大敵だ。
手負いの獣って言葉もあるんだし、追い詰めたからこそ確実に行かねぇと。
つっても別にそこまでヤバいスキルはなさそうだし……カウンター作戦でいいか?
一応、何が起こっても大丈夫なように警戒だけはしとかねぇとな。
「…………ゲバ」
マンティコアは俺に背を向け、一目散に駆け出した。
おい、逃げんのかよ……。
ま、まぁ、冷静に考えりゃ誰でもそうするわな。
自分の攻撃効いてないし、殴られたら超痛いし。俺でも逆の立場なら全力で逃げるわ。
速さだけは負けてっから、ああも思い切りよく逃げに転じられたらどうしようもねぇ。
〖転がる〗で追いかけれるかもしれねぇが……その必要もねぇか。
普段ならともかく、今は怪我をした子供が優先だ。
それに毒は入ってたし、流血も酷かったし、HPもそんななかった。
ひょっとしたら後で死体が見つかるかもしれねぇから、捜してみるかな。
数日分の食事になるはずだ。
でもマンティコア、微妙に人間っぽい顔してるんだよなぁ……。
あれ喰っちまったら、なんか今まで保ってきてた一線越えちゃいそうな気が。
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