第59話
デカイのが飛び込んできたことでこれで状況は2対5へと変わる。
とはいえ毒で一体は行動不能なため、実質2対4か。
さっきまで数の不利は戦闘能力の差で充分に埋めることができていたが、ボスが入ってきたことでどうなるかはわからない。
とりあえず、ボス猩々らしき奴のステータスを確認する。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:大猩々
状態:通常
Lv :27/40
HP :198/198
MP :140/140
攻撃力:123
防御力:82
魔法力:110
素早さ:122
ランク:D+
特性スキル:
〖土属性:Lv--〗〖集団行動:Lv--〗
〖器用:Lv4〗
耐性スキル:
〖落下耐性:Lv3〗〖物理耐性:Lv2〗
通常スキル:
〖噛みつき:Lv4〗〖大爪:Lv4〗〖投石:Lv4〗
〖猿真似:Lv3〗〖クレイウォール:Lv2〗〖猿笛:Lv3〗
〖ワイドレスト:Lv4〗〖クイック:Lv2〗〖パワー:Lv1〗
〖念話:Lv4〗
称号スキル:
〖森の曲芸師:Lv2〗〖連携技:Lv2〗
〖群れのボス:Lv5〗〖サポーター:Lv3〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
HPは高いが、戦闘能力は見かけほど高くない。
普通の猩々と比べればかなり高いが、攻撃も防御も俺が勝っている。
が、しかし、気になるのは称号スキルの〖サポーター〗だ。
〖クイック〗に〖パワー〗など、スキルの名称から察するに手下を強化する魔法だろう。
あの〖ワイドレスト〗も恐らく複数対象の回復魔法だ。
せっかく削った分をごっそり回復されて、おまけに強化とかやってられるかよ!
幸いボス猩々に攻撃特化の危険なスキルがないことはわかったので、余計なことをされる前に攻めさせてもらおう。
「ガァァァァッ!」
俺はボス猩々の目前に飛び出し、〖ベビーブレス〗を吹き付ける。
一か所に固まりやがって、まとめて燃やしてやんよ。
「キシィィッ!」
黒蜥蜴が俺の斜め前に立ち、〖クレイガン〗で掩護してくれた。
幾多もの石礫が猩々へと放たれる。
「……ア、アオ」
ボス猩々がぼそりと言うと、その背後に隠れていた三体の猩々がボス猩々の前に出る。
「アー!」「アー!」
「アァー!」
三体の猩々が両腕を上げると、地面が隆起し、大きな土の壁が現れた。
熱風の息吹と土の弾丸を弾く。
スキル〖クレイウォール〗だろう。三体で重ね合わせ、瞬時に巨大な壁を作りだしやがった。
「……ア、オ」
ボス猩々の声がし、土の壁の裏側から光が漏れてくる。
恐らく、全体回復魔法だ。
ボス潰さねぇとキリがねぇけど、ボス潰そうにも手下が土の壁で守ってくるって戦法か。
強化までされたらたまんねぇ。
さっさとどうにかしねぇと。
回り込むか? いや、ぶっ壊した方が早い!
俺は身体を丸め、〖転がる〗で土の壁へと突進する。
弾かれたが、手応えはあった。
俺は宙で緩やかに回転しながら身体を伸ばし、爪先で着地する。
足が地面についたと同時に、土の壁が崩れ出す。
「アー!」「アアー!」
「アーゥオ!」
壁の向こうには、完全に士気を取り戻した手下猩々三体の姿があった。
明らかに回復魔法だけじゃなくて強化魔法も受けていやがる。
猩々共は、さっと素早く俺と黒蜥蜴を取り囲む。
さっきよりもずっと速い。
「アー!」「アー!」
俺を挟み、左右から猩々が迫ってくる。
片方を回避し、もう片方を腕でガードする。
勢いよく振りかぶられた爪が、俺の鱗を裂いて肉に傷をつける。
「ガァッ!」
俺が怯んで仰け反ると、死角から足で地を蹴る音がした。
三体目の猩々が迫ってくる。
クソ、数の暴力でゴリ押ししてきやがって!
「ア”ッ!」
石の飛ぶ音がして、三体目の猩々が倒れた。
黒蜥蜴の〖クレイガン〗だ。ナイス、危なかった。
「アォオッ!」
俺を引っ掻いた猩々が、そのまま抱き付いてくる。
俺はあえて抵抗せず、がっつり組み付かれたところで肩に思いっ切り噛みついてやった。
「アグッ!」
が、猩々は離れない。
そして縺れあっていて動けない俺へと、ボス猩々が大きく腕を振って殴り掛かってきた。
黒蜥蜴がボス猩々へと〖転がる〗で突撃する。
ボス猩々は胸部に受け、よろめく。
俺はその隙に軽く飛び、猩々を巻き添えに宙で〖転がる〗を使って遠心力で猩々を地に叩き付ける。
「ア”ァ”ッ!」
猩々は悲痛な声を上げ、頭を押さえながらその場に転がる。
へへ、今のは結構効いただろ。
【通常スキル〖転がる〗のLvが5から6へと上がりました。】
俺の一撃を褒めるようにスキルレベルが上がった。
前方にはボス猩々と黒蜥蜴の姿しかない。
手下はどこにいったと思い振り返ると、二体の猩々が俺目掛けて石を投げてくるところだった。
「ウガッ!」
額と左目に一発ずつくらった。
俺が顔を押さえた瞬間、ボス猩々が黒蜥蜴を突き飛ばして俺へと走ってきやがった。
クソ、敵の位置を把握するだけで精いっぱいで防戦一方だ。
ボス猩々にぶん殴られた瞬間に翼を広げ、相手の力を利用して俺は後ろに大きく飛んで距離を取った。
〖転がる〗で逃げてきた黒蜥蜴が俺の横に並ぶ。
黒蜥蜴も数発攻撃を受けていたようで、傷だらけになっている。
HPを確認すると、半分近くにまで擦り減っている。
黒蜥蜴は素早さ以外のステータスはかなり低い。
距離を置いたところから援護射撃し、隙を突いて不意打ちの作戦が一番合っている。
ただ向こうが数で押してきている現状、その作戦では肉弾戦係の俺に余裕がなさすぎる。
いや、黒蜥蜴に接近戦を手伝ってもらった今でも、完全にこっちが力負けしている。
ボスから潰すのは難しい。
となれば、確実に手下を一体一体潰していくしかない……か。
また猩々共がボスの元へと集まっていく。
まさか、また回復する気か?
妨害しようと慌てて飛び出した俺を目掛け、猩々が三体掛かりで石を投げてくる。
ある程度は避け、一部は速さを優先して受けることにした。
「ガァッ!」
〖ベビーブレス〗を吹こうとした瞬間、また猩々三体が前に出る。
「アー!」「アオ!」「アァー!」
猩々と俺を隔てる土の壁が現れる。
俺は勢いを殺さず身体を丸め、〖転がる〗で壁に突進を仕掛ける。
先ほど同様弾かれ、着地する。
崩れた壁からは、傷のすっかり癒えた猩々共がいた。
こ、これ……無理じゃね?
完全にこっちだけ消耗して振り出しに戻っちまったよ。
俺は黒蜥蜴を振り返る。
これ以上、アイツに接近戦をさせるわけにはいかない。
俺一人で四体と肉弾戦で渡り合う? いや、無理だ。
何か、何か手を考えなくてはいけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます