第37話
ついにマイホームのリフォームが完成した。
壁や床を削って整え、砂を運び出した。
それから壁にはクレイベアの煉瓦を積み重ね、床にはグレーウルフの毛皮を敷き詰めたのだ。
部屋の隅には俺の作った鍋や壺が並んでいる。
ついでに玄関には左右に石像が二体並んでいる。
当初の原始的な雰囲気はほとんど残っていないはずだ。
これを完成させるのに三日かかった。
その間で〖陶芸職人〗がLv4にまで上がった。
俺もう、この道で生きて行くしかねぇな。
これでいつ人間が遊びに来ても大丈夫だ。
そろそろ誰か通りかかったりしねぇかな。
この完璧な住居を見たら、俺を粗暴なドラゴンだとは思わんだろう。
しかし、また食糧を集めねばならぬ。
溜めていた大量の干し肉をすべて食べてしまった。
まだ完全に乾燥していない干し掛けの肉まで食べてしまった。
後一日作業が長引けば、猩々に喰わせるために用意していた毒干し肉まで食べるところだった。
またアイツらが来ていたのをちらっと見つけたけど、何も刺さっていない貧相な木を眺めながらすっげーがっかりした顔してたな。
悪いな、干し肉は引き籠るって決めてから速攻で全部回収しちまったよ。
毒干し肉だけ残しとけばよかったな。
干してる間に変色したせいでパッと見でわかんねぇから、まとめて一緒に回収しちまった。
間違えて喰わなくて本当に良かった。
マイホームを出て、食糧補給のための狩りへと向かう。
三日ぶりか。
ちっと最近、戦闘面に関しては怠けすぎてたかもしれねぇな。
マイホーム改築に熱を入れ過ぎてたな。どうにも俺、凝り性気質なとこがあるから困る。
別に今そこまで無理してまで欲しいもんもないし、適当にグレーウルフ辺りを狩りたい。
また干し肉作りてぇしな。
今Lv33でそろそろ進化も近いわけだけど、全然善行も積んでねぇし、進化前になんかやっときたい。さすがに麻薬キノコ灰にしたくらいじゃ弱いよな。
そういう意味でも、今同格以上相手と闘って無理にLvを引き上げる必要はない。
〖コックさん〗と〖陶芸職人〗があるから、邪竜ルートよりそっち方向の進化が解放されている気がしないでもないけど。
これはもう、人化して芸術家として一生を終えるしかねぇな。
めっちゃ〖神の声〗が怒りそうだけど。
割とクールなイメージがあるから、激昂して顔真っ赤でメッセージ飛ばしまくってくるところも見たいっちゃ見たい。
その後何されるかわからんが。
塩とかピペリスもそこまで頑張って収集する意味ねぇんだよな。
すでに壺一杯分あるし、一年分以上は余裕である。
とりあえずLv40になって進化条件満たせるまでは、一日一善を目指して称号スキルを上げて、食べる分だけのモンスターでも狩るかな。
次の進化間違えたら本当に後戻りできなくなりそうだし、慎重に行こう。
〖神の声〗が性格悪いのは充分にわかった。
次はもう甘い言葉には騙されんぞ。
植物を〖ステータス閲覧〗で確認しつつ、森の中を歩く。
価値がFのものばかりで、あまりパッとするものが見当たらない。
なんか変わったもんねぇかな。ポーションチックなものとか作ってみてぇんだけど。
真っ赤で綺麗な花が視界に入った。
これ、根っこごと引っこ抜いて洞窟の周りに植えよっかな。
次の目標はガーデニングか、うむ、悪くないかもしれない。
とにかく詳細を調べるかと手を伸ばした瞬間、草の中から黒い塊が飛び出してきた。
その口先にある鋭利な牙は、無防備な俺の腕を狙っている。
反射的に叩き落とし、間合いを取って戦闘体勢に入る。
襲いかかってきたのは、80cm程度の大きさの黒い蜥蜴だった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:ベネム・プリンセスレチェルタ
状態:通常
Lv :19/35
HP :86/108
MP :117/127
攻撃力:52
防御力:58
魔法力:75
素早さ:128
ランク:D-
特性スキル:
〖特殊毒:Lv--〗〖帯毒:Lv6〗〖鱗:Lv1〗
〖隠密:Lv2〗〖闇属性:Lv--〗
耐性スキル:
〖毒無効:Lv--〗〖麻痺無効:Lv--〗
通常スキル:
〖毒牙:Lv3〗〖毒爪:Lv2〗〖麻痺舌:Lv3〗
〖毒毒:Lv2〗〖転がる:Lv3〗〖クレイガン:Lv4〗
〖解毒:Lv1〗〖不意打ち:Lv2〗
称号スキル:
〖悪食:Lv5〗〖ポイズンマスター:Lv4〗
〖狡猾:Lv3〗〖チキンランナー:Lv4〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
なんだコイツ、滅茶苦茶速いぞ!
所持スキルが俺にも勝る畜生の山なんだけど!
いや、どっこいどっこいか。厳選されてる分、強調されて見えるけど。
ステ自体は低いけど、スキルの数がかなり多いな。
それも器用貧乏じゃなく、割と一点特化されてやがる。
俺の反撃を躱した黒蜥蜴は、サッと草むらの中へと潜り込んで行き姿を消す。
逃げたか? いや、そう考えるのは早計だ。
耳を澄ませ、意識を研ぎ澄ませ。
まだ奴がどこかに潜んでいる可能性もある。
がさり。
死角から草が不自然に揺れる音。
何かが飛び出したのを察知し、俺は音が向かった先へと意識を向ける。
あれは、石の塊か?
〖クレイガン〗のスキルを思い出し、アイツの囮だったのではないかと思い素早く発射地点へと首を向ける。
その瞬間、肩の辺りに嫌な熱を感じた。
俺は思いっ切り、横の木に肩をぶつける。
「アギィッ!」
俺の肩に喰らい付いていた黒蜥蜴が、悲鳴を上げながら地面に落ちる。
追撃しようとしたが、肩の熱さに気を取られ、その機会を失った。
「キシ、キシシ、キシシシシィッ!」
笑いながら、物凄い速さで逃げて行く。
なんだアイツ、戦闘放棄か? またどこかに隠れるつもりか?
にしても……〖毒耐性:Lv3〗があるのに、滅茶苦茶肩が痛い。
何かが俺の身体に広がってくる感覚がある。
【耐性スキル〖毒耐性〗のLvが3から4へと上がりました。】
お、上がった上がった。
……つかこれ、結構ヤバいんじゃないのか。
〖特殊毒〗だか、妙な特性スキルを所持してやがったし。
なんか肩が上手く動かないんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます