第33話
〖自己再生〗による回復を終えたクレイベアが襲いかかってくる。
とりあえずMPの減少量を知るため、再度〖ステータス閲覧〗を行う。
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種族:クレイベア
状態:憤怒
Lv :25/40
HP :159/178
MP :82/100
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〖HP:57〗だったのが一気に〖HP:159〗まで回復している。
だいたい100ちょっと回復するのか。
MPの減少具合を見るに、後四回は使ってきそうだな。
まともに殴り合いしてたらこっちが先にバテちまう。
一気に片付けたいところだが、〖転がる〗三連打で仕留められないもんな。
高防御力には最大威力をぶっ放してやりたいところだけど、俺の最大威力っつったら〖星落とし〗だからな。
自分より一回り大きいクレイベア担いで飛べる自信はねぇな。
オオツボガメのときみたく死ぬ気でブレス吐いてれば持ち上げられるかもしれんけど、アイツ担いで真下にブレス吐きながら空飛んでたら、空中で殴られて終わりそうだな。
おまけに接近戦では多分向こうに分がある。
ステ上ではこちらの方が素早さも攻撃力も優っているが、アイツの防御力を考えれば、初撃を取れてもどうしたって殴り合いになる。
さっき三発連続で攻撃を取れたのは、あれが不意打ちだったからに他ならない。
あの防御力と体格、粘土の身体を考えれば、正面からちょっと殴った程度では仰け反ってなどくれないだろう。
泥仕合になれば、〖自己再生〗のあるクレイベアに太刀打ちできない。
かといって〖ベビーブレス〗で距離を取って攻撃しても、あれでは威力に欠ける。
それにクレイベアの身体が焼けて固まってしまえば、そもそもクレイベアを襲撃した意味も半減してしまう。
クレイベアとの睨み合いが続く。
作り物の頭ではなく、大きく開いている腹の口と。
とにかく、相手のスキルを見て戦略を立て直すとするか。
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通常スキル:
〖噛みつき:Lv6〗〖変形:Lv2〗〖自己再生:Lv4〗
〖クレイ:Lv4〗〖砂嵐:Lv1〗
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〖噛みつき〗のLv6はエグいなぁ……絶対噛まれたくねぇ。
胴体以外にダメージ判定あるのか微妙に見えるんだけど、腹には迂闊に近づけねぇ。
〖変形〗というのも気掛かりだ。
殴られた勢いを殺したり、手の数を増やしたり、熊から姿を変えたりできるかもしれない。
名前にベアって付けるのやめろよコイツ。絶対熊じゃねぇよ。
〖クレイ〗も〖砂嵐〗も、中身がわからんから対処に困る。
とりあえず、この辺を使わせてから本格的に戦略を練り直した方がいいか?
いや、それはちっとビビリ過ぎるか?
俺はなまじステータスが見える分、非公開情報を必要以上に恐れすぎている気がする。
実際危険なことには変わりねぇし、アドバンテージを最大限に活かすように動くのは間違いじゃねぇと思うけど、それに囚われすぎるっていうのもまた危険な話だ。
……とりあえず俺の方針としては、あの馬鹿デカイ口に喰われないよう注意しながら、正面に立たないように立ち回って様子見だな。
そのままHPを削りきれたらベストなんだけど。
ほら、RPGとかよくある『ギリギリまで回復魔法温存してたらそのまま死んでた』現象。
あれを誘発できねぇかな。できねぇな。
自分の命懸かってる状況でそんなケチな賭けに出る奴いないわな。
そもそも〖自己再生〗を出し渋ってる間に一撃で倒せるような便利な技がないから困ってるわけであって。
ぐるぐると考えていると、先にクレイベアが動きだしてきた。
無表情の熊の頭を携えて、腹部に開いた大きな口からいくつもの牙を覗かせながら。
ヤベェ。歯の本数多すぎるだろ。
とりあえず、俺の方針は固まっている。
狙うは本体臭い胴体だ。
ただし、正面からじゃねぇ。真後ろからな!
俺は〖転がる〗でクレイベアの突進を躱し、そのままクレイベアの周囲を回る。
元々スピードで優っている俺が〖転がる〗で加速すれば、俺の動きを追えなくなってくるだろう。
狼狽えるクレイベア。
その隙を突き、背中に勢いよくタックルを決める。
「ベァァッ!」
僅かに前屈みになるものの、クレイベアは素早く俺に腕を振り上げてくる。
素早く回避し、またクレイベアの周囲を回る。
ほれほれ、ほれほれ。
Lv4の〖転がる〗のスピードに追いつけるもんなら追いついて来やがれ。
とりあえず勝算のある突破策が浮かぶまでは、後ろから小突き回させてもらうぞ。
クク、身体を回して困惑してやがる。
その上に乗っけてる熊の首でもキョロキョロさせとけよ。
どこに目があるんだよコイツ本当に。
お、隙ありィッ!
更にもう一発、背中のど真ん中を〖転がる〗で小突く。
そして素早く退避!
ヒット、アンド、アウェイ!
おお、危ない危ない。
さっきより反応がいいじゃねぇか。
ふふ、色々考えてたけど、大したことねぇな。
こんなにあっさり後ろを取り続けられるとは思わなかったわ。
相手の弱点を探る場繋ぎのつもりだったけど、このまま押しきれちまいそうだな。
腕伸ばしてきてるけど、別にあれくらってもそこまで痛くねぇしな。
あの馬鹿デカイ口の〖噛みつく〗さえ確実に回避できるんなら、ぜんっぜん問題ない。
さてと、また周囲回っちまうぞ。
ほーれほれほれ。ほーれほれほれ。
そろそろ〖自己再生〗使った方がいいんじゃねぇのか? ん?
「ベェァァァァッ!」
クレイベアが叫びながら、両手を地に着ける。
諦めたのかと思いきや、急に辺りに砂煙が舞い始めた。
〖砂嵐〗のスキルか。
うげぇ。ま、さすがにこのままじゃ終わんねぇよな。
ここは素直に距離を取っとくか。
土煙の中で嗅覚で追ってきてガブゥとかあり得るもんな。
土煙が晴れるまでは下手に近づかねぇぞ。超安全思考で仕留めてやる。
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