第28話 乙女
やや寒い三月のある日。風呂上がりの羽島華奈は、近況についてベットに座って考えていた。
❀
最近、上峯君と話せるようになった。
前までは全然接点もなかったし、上峯君にも彼女がいたんだけど、最近上峯君と彼女の美咲ちゃんが別れた。
それを聞きつけた何人かの友達が、私と上峯君が接するきっかけを作ってくれた。
ちょっと強引だったし、私からはなにも頼んでなかったんだけど、その友達が協力してくれたおかげで、上峯君と少し話せる程度の仲になれた。
まだ上峯君は私のことを全く意識してない思うけど、きっかけができたのは大きなステップかもしれない。
ものすごくうまくいったら、上峯君と付き合うことになったりするのかな……。
私は未知の想像に胸を悩ませる。
その時――、
“ピロン”
ラインがきた。私はそれを確認する。
『突然ごめん!
テスト明けの三月九日の卒業式の日、話があるので卒業式が終わったら教室に来てもらえませんか?』
福島君からのラインだ。
話ってなんだろう……?
ふと、フルートのケースにつけていた、修学旅行の時福島君にもらった亀のキーホルダーが目に入る。
あの時の福島君、優しくてかっこよかったな……。私のためにあんなに優しくしてくれて、本当に優しい人なんだな……。
私の恋愛相談にも乗ってくれて、たくさんアドバイスもくれた。
去年の終業式の日に上峯君と美咲ちゃんがキスをしてるのを見ちゃった時も、優しく慰めてくれたなぁ……。あの時、一人で抱え込んでいたらきっとものすごく辛かったと思う。あの時の福島君の言葉に救われたかも……。
あ、そういえば終業式の前に一緒にどこか遊びに行こうって話になってたっけ……。
福島君、最近肌もキレイになったし、髪も伸ばしていい感じだって女の子の間で話題にもなってた。確かに、福島君かっこよくなってるかも……。
最近は福島君と全然話してないなぁ。なんでだろう……。
私は気づいたら福島君に貰ったキーホルダーを両手でぎゅっと握っていた。
頭の中に福島君の笑顔が浮かぶ。あれ、なんだか胸がドキドキしてきたかも……。
“テテテテン、テテテテン”
今度は電話が鳴る。
相手は上峯君のことで協力してくれた友達の一人だ。
「もしもし〜、ゆいな〜」
『もしもし〜、はなぁ〜! 聞いて〜! この前のさぁ〜、』
そこから十五分くらい雑談をした後、あの話になる。
『あ、そういえばさあ、うちらで話してたんだけど、はな春休みあお君とデートしたりしないのぉ? そろそろいい時期なんじゃなぁい?』
デート……、かぁ。
確かに、上峯君とは少し話せるようになったんだし、なしではないのかな……。春休み会えなくなったらまた関係が変わってきちゃうかもしれないし……。
でも、デートに誘うってことはもろで好意がバレちゃうよね……。どうしよう……。
私は胸を悩ませる。
ふと、あの亀のキーホルダーが目に入る。すると、なぜか福島君のことが頭に浮かぶ。
……卒業式の日まで考えることにしようかな。福島君の話も気になるし……。
「ごめん! もうちょっと考えさせて!」
私は一旦返事を保留にして、自分でも分からない胸の奥の気持ちについて考えていた。
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