第26話 決断
薄暗い雲で覆われた空の下、俺は学校から少し離れた河川敷を一人歩いていた。
学校には体調不良ということで休みの連絡をしている。高校で学校を休むのは今日が初めてだった。
それでも、今日は学校に居られる気がしなかった。
「はぁ……」
このため息は今日で何回目だろうか。
……なによりも辛かった。
羽島さんは恋をしていた。
照れた赤い顔に、恥ずかしそうな笑顔。あれは
本当に、ずるいくらいかわいかった。
しかし、あの顔が俺に向けられることはない。
顔の奥から涙がこみ上がりそうになる。
羽島さんは、上峯に恋をしていた。
あんな恋の顔を見たくなかった。耐えられなかった。
もしかしたら羽島さんが上峯と奥山さんのキスを目撃した時も、こんな気持ちだったのかもしれないな……。
恋が一方通行だったら、誰もこんな想いしなくていいのに……。
俺はそんな無理なことを思う。
第一、俺が悪かった。羽島さんに対してなにもアピールできず、ずっとチキってた。それなのに、俺のことを好きになってください、とか無理がある。
『取られちゃう』『手遅れ』。柊斗の言葉が
頭の中で思い返される。
柊斗は俺に忠告するためにあえてあんなことを言ってくれていたんだ。このままじゃ羽島さんは上峯に取られるぞ、って教えてくれていたんだ。
その通りになっちゃうかもな……。
もしかしたら、その方が羽島さんにとっても上峯にとっても幸せかもしれない。
このまま羽島さんと上峯が付き合った方が、綺麗で美しい物語かもしれない。
でも――。
でも、そんなの
俺は羽島さんのことが大好きなんだ。
あのかわいい笑顔、明るい声、仕草、性格、駄目な所だって、全部大好きなんだ。
羽島さんが他の男に取られるなんて、絶対に嫌だ。
羽島さんの恋の応援なんて、できるわけがなかった。
俺がいい。羽島さんの隣りは、俺がいい。
でも、きっと羽島さんは俺のことなんてなにも思ってない。このままだったら、きっとそのまま上峯と付き合ってしまう。
嫌だ。
自分勝手で幼児みたいな理由だけど、そんなの俺が嫌だ。
……まだ手遅れなんかじゃない。手遅れになんかさせない……!
白い雲から垣間見える、流れる川のように輝く空が顔をのぞかせる。
俺はこの時、決断した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます