第22話 決心

 羽島さんが泣き止み、帰りがけ。俺はこんなことを聞いてみた。

「羽島さん、今は上峯のことどう思ってるの……?」

 羽島さんは、元気になったいつもの笑顔で言う。

「んー……。まだわたしの中で整理できてないしわかんないや」

 羽島さんは少し恥ずかしそうな笑顔で言う。

 羽島さんは、きっとまだ俺の事が好きじゃない。羽島さんにとって俺はまだ、ただのモブキャラだと思う。

 でも、それじゃあ絶対に我慢できない。

 俺が、この物語の主人公になりたいんだ。

 これは、俺のラブコメだ。俺が主人公で、ただ真っ直ぐ進む物語だ。

 かっこよくなる、俺が羽島さんの好きな人になる、俺が羽島さんを惚れされる。上峯になんて負けてられない。

「そっか」

 俺は挑戦的に笑った。



 家に着き、鏡を見る。

 顔にあるニキビ、中途半端に伸びた坊主頭、垢抜けない顔。

「これじゃあ……だめだな」

 羽島さんは、あのかっこいい上峯が好きだったんだ。

 今の俺じゃあ、羽島さんに相応しくない。

 俺のかっこよくなる決意の瞬間だった。



 物語の結末は唐突にやってくる。でも、それと同時にまた新しいストーリーが始まるんだ。

 そして、この物語も新たなステージへと進む。

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